優羽が店の外へ出ると正面にドイツの高級SUV車が停まっていた。
誰の車だろうと思いつつ優羽そのまま自分の車へ向かう。そして後部座席からおしぼりの入った袋を取り出すと再び店の入口へ向かって歩き始める。その時誰かが優羽に声を掛けた。
「あの、すみません。こちらは『peak hunt5』の出店予定地ですよね?」
「そうです。オープンはまだ先ですが…….」
優羽はそう言いながら声を掛けて来た相手の顔を見る。その顔はどこかで見覚えのある顔だった。
(誰だったかな?)
そう思った瞬間優羽はハッと思い出す。
優羽に声を掛けたのは以前テレビで見た人気俳優の大和翔真だった。
優羽は驚いたまま聞いてみる。
「あの、失礼ですが、もしかしたら大和さんですか?」
「はい、そうです」
翔真はニッコリ笑って答えた。
「ビックリしました、テレビでお見掛けした方がここにいらっしゃるから」
そう言ってからある事を思い出して慌てて言った。
「私スタッフの森村と申します。先日は『peak hunt5』の事をテレビでご紹介いただきありがとうございました。とても反響が凄くて社長の佐伯もとても喜んでおります。新サイトの方にも早速ご登録いただきありがとうございました」
優羽はそう言ってぺこりとお辞儀をした。
「いえ、元々『peak hunt5』をずっと愛用していましたから。あ、それから、井上さんだったかな? 新作のウェアを事務所へ送っていただきこちらこそありがとうございました。佐伯さんからも直筆のお礼状をいただき嬉しかったです」
翔真も優羽に向かってお辞儀をする。
優羽はその時思った。今人気の芸能人なのに気取ったところが全くなくとても礼儀正しい人なのだなと感心した。
きっときちんとした環境で大切に育てられてきたのだろう。翔真からはそんな育ちの良さを感じた。
「今、佐伯も井上もここに来ているんですよ。よろしかったら中へどうぞ。今テレビの撮影中なのですが、もう少ししたら休憩に入りますので」
優羽はそう言った後すぐに「しまった!」と思う。今売れっ子の超人気俳優の翔真にそんな時間などないだろう。
すると翔真は目をキラキラとさせて言った。
「今佐伯さんがこちらにいらっしゃるのですか? 俺、子供の頃佐伯さんのK2アタックのドキュメント番組を見て以来の大ファンなんです。登山を始めたきっかけも佐伯さんの影響なんです! 是非お会いしたいです!」
翔真は心から嬉しそうに笑った。
「では、どうぞこちらへ」
優羽はそう言うと翔真を先導して店内へ案内した。
店内に戻ると井上が奥で撮影の様子を見ていた。
優羽が戻って来た気配を感じこちらを振り返ったがまたすぐに視線を前に戻した。しかし慌ててもう一度こちらを振り返ると驚愕の表情を浮かべ「えっ?」と声を出すとこちらへ歩いて来た。
「大和翔真さん?」
「はい。どうも、初めまして!」
「今ね、外にいらっしゃったからお連れしたの。あ、こちらが井上です」
「ああ、井上さんですか? この前は新作のウェアをありがとうございました。早速愛用させていただいてます」
翔真はそう言うとニッコリと笑った。
「いえいえ、ほんのお礼の気持ちですから。それにしてもびっくりしました。 えっ? 今日はお近くまでいらしていたのですか?」
「今日は急にオフになったのでちょっとドライブついでに寄ってみました。送って下さったウェアと一緒に新店舗の案内が入っていたので」
翔真は工事途中の店内を見回してから言った。
「ここが実店舗第一号店なんですねー」
「はい。そうそう新サイトへのご登録もありがとうございました。佐伯も喜んでいましたよ。あ、もう少ししたら佐伯も戻って来ますので是非会ってやって下さい」
井上はそう言うと優羽に頷いてから岳大がいる奥へと向かった。
優羽は椅子を持って来ると翔真に座るように言い、紙コップに温かいコーヒーを注いで翔真に渡した。
翔真はありがとうございますと言って椅子に座るとコーヒーを飲み始めた。
しばらくすると撮影を終えたスタッフ達がぞろぞろと戻って来た。そこへ優羽が声をかける。
「お茶のご用意をしてありますので、どうぞ」
スタッフは一斉に「ありがとうございまーす」と言い、機材を壁際に置いてカウンターの傍まで来る。そして傍に座っていた翔真を見ると、
「「「えっ、えーーーーっ?」」」
と驚きの声を上げた。それに対し翔真は笑顔で、
「どーもどーも!」
と言いながらぺこぺことお辞儀をしていた。
コメント
3件
西村のおかげで岳大さんと翔馬君タック組むのかな?
さすがの保坂さん達もびっくりだよね😆 これから翔真も撮影に参加しちゃうのかな?😁
いきなり有名芸能人「大和翔真」がいたら誰でも驚くよね🤯‼️ それにしても優羽ちゃんの対応が神😇✨ 当然ミーハーな感じもないし、スタッフとして挨拶ができてとても好感持てる〜😊👍🎉 さすがです、優羽ちゃん💕