「甲子園へ行こう!」
ガチで言ってんのか
無理に決まってるだろ
俺らが、この俺たちが
御子柴、お前は夢見すぎだ
行けるわけが無い。
「俺たちなら行けるって。な、頑張ろう!」
だから無理だって
無駄な夢見てどうするんだよ
「無駄な努力なんてないんだぞ。夢見て何が悪い」
な、なんで川藤が出てくんだよ!
やめろ。俺はもう野球はしない。
全てが無駄だったんだ。
「安仁屋みたいに上手くはないけど、やっとつまらない毎日から抜け出せたんだよ」
うるせぇ、黙れ
「やりたいならやりたいっていよ!」
誰が。誰が「やりたい」なんて言うか。
ざけんな
「だったらもう部室来んなよ!」
てめー、誰に向かって…
「俺たちに期待させんなよ!!!」
!?…フッ
「俺だって、野球しかねーよ」
そうだ。俺には野球しかない。
けれど、けれどもう嫌なんだ
あの頃みたいになりたくねーんだ。
若菜は喧嘩に巻き込まれて死亡
御子柴はストレスと疲労、結局は顔面デッドボールで死亡
川藤は国松に刺されて死亡
新庄は…
みんなみんな、死んでいったんだ。
俺だけ生きのびた。取り残された。
なんならいっそ俺も死にたかった。
でも。川藤、御子柴。お前ら2人は言ったよな
「安仁屋…。夢を貫け。自分を信じろ。努力は必ず報われる」
「絶対に、俺らがいなくなるからって…死ぬなよ。お前しか、いないんだから」
何が「必ず報われる」だ。何が「お前しかいない」だ。
ざけんなよ…。死ぬなよ…。けど
“生きる”
約束したから。
“夢を貫く”
約束したから。
「おせーぞ!オラ!!」
やっと行動に移した。俺なりの自信と勇気。
この日から、また輝き出す。
ある日。言葉がもれた。
「御子柴、川藤…てゆーかお前ら…生きろよ」
「??」
『当たり前だろ!もう、てめー1人にさせねーよ』
ドキッとした。
勝手に湧き出た水が頬をつたる。
そうだ。寂しくて、寂しくて、ひとりが嫌だったんだな。
野球が好きなのは、団体競技だから。
なんでだろう。新庄じゃあるまいし。
ただ、みんなが。あのことを覚えてるなんて。
けれど、暖かかった。
川藤の笑顔や御子柴の声掛け、わかなの野次飛ばしや湯舟のにゃ〜。
全てが全て、前まで感じたことのなかったあたたかみ。
ただただ
“愛しく想う”
「よーし、練習いくぞー!!」
御子柴が声を出す。
『おー!!』
気付いた時には言っていた。
「ちゃんと生きたぞ。ちゃんと夢、貫いたぞ。…約束、守ったよ」
コメント
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すごい