このシェルターにある本も、もうすぐ全て読み終わりそうで、僕は寂しさを感じていた。今日は雨が降っているようで、シェルターのガラス張りの天井には黒い雨粒が落ちてきており、雲の間からの若干の月明かりに照らされて黒く光っている。
雨の音は落ち着く。こういう日は本を読むにはぴったりだが、この本棚の本をまだ読み終えたくないということもあり、なんだか複雑な気分だ。
なぜ僕には記憶がないんだろう。これまでは理由なんてあまり考えてなかったのに、最近すごく気になり始めた。イシダさんと話しているからだろう。
きっと彼と話しているうちに、相手のことをだけではなく自分のことにも興味が湧き始めているのだ。どうすれば記憶を取り戻すことができるのか。
何か以前の僕に関する手がかりがあれば良いのだが。少なくともこの狭いシェルターの中にはなさそうだ。イシダさんと話をしても、彼は以前の僕のことは知らないだろうから望みは薄い。
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