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眠狂四郎
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Lulu
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ruruha
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朝、目が覚めるとなんだかスッキリした気分になっていた。だけど記憶が曖昧だ。寝落ちしたのだろうか。
少しずつ昨日あったことを思い出していく。鶴に自分の過去を話したこと、耐えなくていいと言ってもらえたこと。そして、鶴にすがりついて泣いたこと。
今思うと少し幼稚だった。鶴に迷惑をかけてしまったと思う。
「あ、海良ちゃんおはよう」
「おはよ。鶴は?」
「鶴くんはリビングにいるよ。朝ごはん食べてるから海良ちゃんも食べな」
「うん。ありがとう」
絵里はきっと、昨日私に何があったか知っている。でも無理に聞かないでいてくれる優しさに、私は胸を撫で下ろした。
リビングに行くと、鶴はご飯を食べていて、他の子達は各々好きなように過ごしているようだった。
「鶴、おはよう」
「おはよ。目腫れてんね笑」
「昨日たくさん泣いたから…その、ごめ」
「待って」
謝ろうとしたら遮られてびっくりした。鶴を見やると、鋭いけれども優しい目で私を見つめていた。
「海良は悪いことをしていない。泣くことは悪いことじゃない」
「…うん、そうだね」
この人の優しさに、どれだけ救われただろう。どれだけ恩返しをしても対等にはなれない気がする。
「海良も朝ごはん食べるんでしょ。今残りが」
「いや、私お腹すいてないから」
いらない、と言おうとしてやめた。鶴に真っ直ぐとみつめらたから。
「食べることは、生きること。海良、ここに来てちゃんと朝ごはん食べたところ見たことない」
「そ、それは…朝はお腹が空かないから」
事実、お母さんたちが生きていた時も私はあまり食べなかった。というか、食べる意味が全然理解できなかった。
「生きるって決めたんだろ。なら食べなきゃダメだ」
「…食べれる気がしないし」
「食べようと挑戦したこともないのに?」
「ゼリーぐらいなら食べたことあるし…」
「それは朝ごはんって言えるの?」
「もし吐いちゃってムダにしたら」
「海良」
名前を呼ばれた。真っ直ぐと、力強く。
「少しだけ、なら…」
「準備してくる。待ってて」
その日、私は朝ごはんを食べた。
「ゔっ、やっぱりちょっと気持ち悪い」
「それはもう慣れてくしかない」
食器を片付けて、リビングを後にしようとする。それを鶴に止められた。
「海良、俺海良の世話係になったから」
ん?え?なに?
セワガカリ?
「中島さんから任命された。これからはご飯ちゃんと食べて、つらいことあったらちゃんと言って」
「待って待って待って。私中2だし、人に世話されなくても生きていけるよ!?」
「ご飯を食べようとしないのに?」
「ん‘’っ!?それはぁ〜…えぇっと」
鶴が深いため息をつく。失望されただろうか。呆れられたか。顔を覗き込もうとしても少し怖い。
どうしようか悩んでいると、鶴はそのまま何も言わず、リビングを出ていった。
「…お、怒らせた?」
その日、私は朝ごはん以外何も口にしなかった。胃が痛くて食べようにも食べられなかったからだ。お腹は空くけど別に耐えられないほどじゃない。
ベッドの上で色々と考えていると、視界に誰かの手が入ってきた。
「海良ちゃん大丈夫?」
「絵里…」
「お風呂の時間だよ。行こ」
「うん」
お風呂はとっても温かくて、一時的ではあれ、ごちゃごちゃした思考回路をほぐしてくれた。
「海良ちゃん細いねぇ」
「そんなことないよ。太ももとかヤバいし」
「いやいや、私の太もも見てみ?」
たしかに、絵里と私の太ももはふた周りほど違った。でも、絵里が太ってるというわけじゃない。
「聞いたよ、鶴くんが海良ちゃんの世話係になったんでしょ?」
「不本意だけどね。私はいらないっていったよ?」
「いやいや、鶴くんいないと海良ちゃん餓死するよ!?」
「えぇ!?」
まさかそんな風に思われていたとは知らず、驚愕の声が出た。
「私ってそんな、生きるの下手?」
「うん。だいぶ」
ド直球に言われるとさすがに心に来る。これからはもう少し頑張らないと、と意気込んだ。
「だって、海良ちゃんって言われないとご飯とか食べないタイプでしょ?一人暮らししたらゼリーの買い置きが沢山してありそう」
「そんなこと…あるかもしれないけど」
「前に、海良ちゃんが生きるって言ってくれて私嬉しかった。だから、ちゃんと生きるための行動をして?」
そう言われても、私はそんなの分からない。生きるためには何をしたらいいのか、挙げたらキリがない。
「できる気がしない…」
「そのための鶴くんじゃん!」
「そのための鶴なの!?」
世話係ってもっとこう、身近なことを手伝う人だと思っていたのに。そんな当たり前なことから頼っていいのだろうか。
そんなことを考えていると、絵里はそれ以上何も言わなかった。私に考える時間をくれているように思えた。
私は生きるのが下手。そう自覚できたのは大きい。だけど、生きるための行動をするとはなんだろう。今まで考えたことがなかった。生きるためには呼吸が必要だ。脳を回すため、血を回す為にも必要不可欠と言えるだろう。あとは、なんだろう。もう呼吸さえしていれば人は生きていけるのだから、鶴がいなくてもいいのではないだろうか。
「あ、プロフィール書いてんの?」
「うん。結局書きたいことは思い浮かばなかったから、絵を書いてよろしくーみたいな…」
中2にしては幼稚だっただろうか、と思い消そうと消しゴムを手に取る。私が消すより先に鶴が紙を奪い取った。
「なんで消そうとすんの?めっちゃ上手いじゃん」
「いや…なんか、やっぱりやめようかなって」
鶴から紙を奪おうと手を伸ばす、だけど鶴は腕をあげて届かない高さにしてしまう。
「返して!」
「消さないって言って」
「…消さないから、返して」
「よろしい」
こんなことまで世話係はするのだろうか。だとしたら少しウザイ。というかめんどうだ。中島さんに話して、鶴は解任してもらおう。
「明日、学校に行く」
「えっ、行けんの?」
「行けって言ったのは鶴の方じゃん」
「いや、それはそうなんだけど、あんな話聞いたら別に行かなくてもいいと思い始めたというか」
「私は行こうって思ったの。保健室登校でもいいから行く」
「成長してんじゃん」
鶴がニヤッとして笑う。少年のような顔に少しびっくりする。
「ねぇ、生きるための行動って、何をしたらいいの?」
コメント
1件
うわあ、今回も良かった…。鶴くんの「食べることは生きること」って台詞、すごく響きました。優しさだけじゃなくて、ちゃんと向き合ってくれてる感じが伝わってくる。海良ちゃんが「生きるのが下手」って自覚するところも、すごくリアルで胸が締め付けられました。絵里ちゃんのストレートな言葉も効いてるし、鶴くんが絵を奪い取るシーンでちょっと笑えました。この距離感、すごく好きです。次が気になります🌷