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るるくらげ
いと
#和風ファンタジー
第2章 第17話
「絶境試練」
「それにしても、あなたも属性がわかってないなんて……驚きですね」
「いやいや……おれのほうがびっくりだぜ。おれは剣術だけやってたからさ」
アクラとエペは、クラグレアの指示で校舎外のとある場所へ移動していた。 それも――ふたりが無属性だと判明した、その直後。クラグレアは突然、命令を出したのだ。
「剣術……? たとえば?」
「刀ってのがあってさ。おれの出身国が東幻なんだけど、刀で修行してたんだ!」
「カタナ……? 聞いたことがないです」
「そういえばエペはどこ出身なんだ?」
「いきなりですね。いやらしい」
「いやっ……べ、別に気になっただけだろ!」 「ふん。男はいつもそうやって……」
少し溜めて、エペは淡々と告げる。
「まぁ教えてあげます。我は“バリエ帝国”生まれで、物心がついた頃には別の国に転々としてました」
「バリエ帝国……?? ……ってどこ??」
「あぁぁらぁ〜〜? アクラくんったら勉強不足ですねぇ〜〜?」
先頭でスキップしていたクラグレアが急に接近し、顔をぐいっと近づけてくる。
「名前だけは聞いたことあります! でも、どんな国かまでは……」
「……東幻の義務教育の敗北ですね」
「そんなこともありませぇんよぉ? ほら、東幻はいま外交と情報統制で厳しいですかぁらねぇ〜〜」
「なんか気分悪くなるな、それ……」
アクラは苦笑いを浮かべた。
「とにかく、バリエ帝国はここ……ゾラン王国のすぐ西にありますよ」
エペは一拍置き、冷たく言い切る。
「……権力と差別の渦巻く、最低な独裁国家です」
「いいのかよ……お前の出身国だろ?」
比較的愛国心のあるアクラには、エペの自虐的な言葉の意味がよくわからなかった。
「バリエ帝国といぇばぁ〜、クレイくんもですねぇぇぇ〜〜〜♡」
「クレイ!? あ、ああそうか。親戚だもんな」
「な、なんでその情報を……! そ、そうですね。あの人を見たら分かるでしょ? サイテーなクズですよ、ほんとに」
仲がいいのか悪いのか、正直わからない。
「さてぇ、他の皆さんは今頃課題が終わった頃ですかねぇぇ〜〜〜」
「先生。普通なら、属性は何歳くらいで発現するんですか?」
エペが尋ねる。
「んんんん〜〜? 普通、普通ねぇぇ〜。嫌いな言葉ですがぁ……」
クラグレアは楽しそうに笑い、続けた。
「普通なら12歳前後じゃないですかぁぁぁ〜〜?」
「そ、そんな……」
エペが明らかに動揺する。
「それって、可能なんですか……? おれらみたいな15とか16歳は」
「それはねぇぇぇ」
心臓が激しく鼓動する。 ここで無属性なら――何者にもなれな――
「できますよぉっ!♡」
クラグレアは明るく言い放った。
「というより年齢に制限はないんですぅ。おいらは四属性操れますがぁ、最初の属性の“水”を見つけたのは19歳のときでしたかぁらねぇぇ〜〜」
「……よ、よかった…………!!」
アクラが安堵する。
しかし、ここで疑問が残る。 このひと、自己紹介のときに20代と言っていたはずだ。 だとしたら、四属性を極めるにはペースが早すぎないか……?
「……先生。四つ目の属性を見つけた時は?」 「38くらいのときでしたかぁねぇ〜〜?」 「で、でも20代だって……」
しまった。好奇心が先走って言ってしまった。 エペも「言ってしまいましたね。ざまあ見てください男子め」という表情でこちらを見る。
「す、すいません! クラグレア先生!!」
クラグレアから笑みが消えた。 歯だけをむき出しにして、笑っている。
次の瞬間――!
「ウガぁぁぁぁぁ!!!!」 思いきり指に噛みついてきた。
「うわぁぁーーッ!!!」
しかしすぐに歯を離し、アクラをじっと見つめる。
「……あらぁ? この匂い。アナタって……」
耳元に唇が近づく。
「双呪――ですねぇ?」
背筋が凍る。 ――ばれた? 双呪であることが。
「な……いや、どうして……!?」
「おいらは鼻がききますから。――ゼグレくんと同じ匂いがしましたよぉ」
同じ……だって……??
「安心してくださいねぇ。おいらはアナタ達の味方……ですから♡」
ここでアクラは思い出す。
ゾラン王国で目を覚ました、あの朝。 そしてセラフィナの言葉(第2話)――
“きみたちは、孤誓隊に推薦された。 会議は荒れたよ。猛反対もあった。だけど、決まった”
――推薦。猛反対があったにもかかわらず入隊できた理由。 もしかしたら――セラフィナだけではなく、この変人の先生、クラグレアも推薦していたのかもしれない。
「ちょっと、何話してるんですか」 エペが水を差す。
よかった。聞こえてなかったようだ。
「あっ、ご、ごめん……!」
……あれ、いまの返し方。 いつものおれっぽくないかも……。
――いつもの? いつものって、それ……誰かの真似してるだけじゃないのか? たとえば……詩――――
「さぁて! そろそろつきますよぉ〜〜♡」
「うわぁ……!!」
アクラたちはいつのまにか山の崖へ移動していた。歩いて一時間半ほどだったろうか。 新入りのアクラにとっては、この間の任務以外で校舎の周りを歩くのは初めてのことだった。
崖からはすぐ近くに校舎が見える。 本当に雄大で美しい建物。 さらに校舎の下には城下街が広がっており、常に活気がある。 そしてさらに向こうには大きな城がそびえ立っている。おそらく、あそこがゾラン国王の住まう場所なのだろう。
崖から北――数キロ先には巨大な湖が広がっていて、まるで海のようだ。
――美しい。 それにつきる。
うってかわって、アクラたちが立つ崖の背後は森と絶壁。 まさに天然の要塞だ。
「クラグレア先生、我たちはこれから何をすれば……」
「簡単でぇぇすよぉ♡」
クラグレアは笑って告げた。
「――校舎の力を借りず、城下街で生き延びてください♡」
――え?
「それってどういう――……」
「そのまんまですよぉ〜〜。アナタたちは様々な刺激を受け、新たな可能性を見つけるでしょうから♡」
「ちょ、ちょっと待ってください! いくらなんでもめちゃくちゃですよ!」
「あぁ〜? ありがとうございますぅ♡」
クラグレアは嬉しそうに言う。
「それはおいらにとって褒め言葉ですよぉ♡」
「1週間後、ここに集合してください。 その時点で、おいらが属性を判断しちゃいまぁす♡」
「ま、待って――」
そう言う間もなく、クラグレアは宙に浮き、校舎へ向かって――空を飛んだ。
「も、もうよくわかんねぇ……」
朝、窓から突っ込んできたのは、あの能力のせいだったのだろう。
「…………アクラさん。所持金いくらですか」 「……え? あぁ、27ゾラだよ」
「27って……安宿に1泊できるかできないかくらいじゃないですか!!」
「そ、そーいうお前はいくらなんだよ!」 「……ゾラ」
「……はえ?」
「6ゾラ!!」
「6……!? おれより低いじゃないか……。えーと……6ゾラなら……ランチくらいか?」
「……野宿は嫌ですよ」
「お、おれもだ……」