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陸さん、たぶん華子さんが心配で 自分の家に連れて来たのかな⁉️ 今後の二人の関係がどうなっていくのか気になります💓
いくらリフォーム中とはいえオーナーの部屋に住まわすのは監視も含めて⁉️それにしても華子は舞い上がって出ていけなくなるんでは?それに恋愛感情も…ドキドキ💓
二人が乗った車は、先ほど通って来た道を戻り始めた。
「すぐに着くから」
陸はハンドルを握りながら言う。
(さっきの道を戻っているという事は、今夜泊まる場所はカフェからは割と近いのかしら?)
そう思いながら華子は少しホッとしていた。
通勤に時間を取られるのは嫌だったからだ。
ビジネスホテルなら駅の近くだろうと予想していたが、
車はさっきも通った街路樹のある閑静な住宅街を走っている。
「今日泊まるのは普通のマンションなの?」
「そうだ」
華子は一体どんなマンションなのか興味津々だった。
しばらく進むと右手に低層階の素敵なマンションが見えてきた。
五階建てくらいだろうか?
広い敷地内にゆとりを持って建てられたマンションには、樹木が生い茂る庭園もあった。
庭園はきちんと手入れされしっかりと管理されているようだ。
(うわ、庶民が住むマンションとは全然違う…)
華子は驚いていた。
建物と周りの雰囲気を見ただけで、ここが富裕層向けのマンションだとすぐにわかった。
坂道の斜面に沿うように建つマンションは、二階以上の部屋には全てルーフバルコニーがついていた。
階段状の造りになっているので、プライベートスペースもしっかり守られている。
てっきりワンルームの部屋に泊まると思っていた華子の予想は見事に外れた。
「ここ?」
「そうだ」
陸はそう返事をすると地下駐車場に車を停めた。
(海外赴任している人とかの部屋なのかなぁ?)
華子がそう思っていると陸が言った。
「着いたぞ」
その声を合図に二人は車から降りた。
陸は買い物袋を後部座席から取り出すと、エレベーターへ歩き始める。
「ここの何階?」
「五階だ」
「最上階ね」
「そうだ」
陸はエレベーターへ乗り五階のボタンを押す。
五階に到着すると二人はエレベーターを降りて廊下を歩き始めた。
陸は一番端の部屋まで行くと華子に言った。
「501だから覚えておけ」
陸はカードキーを差し込んでドアを開けた。
(うわぁラッキー! 高級マンションに住めるなんて最高!)
華子のテンションは上がる。
陸がドアを押さえていてくれたので、華子は先に中へ入った。
玄関へ入ると、目の前には白い大理石の廊下が見える。
(すっご!)
華子のテンションはさらに上がる。
内装をチェックすると部屋のグレードはかなり高そうだ。
陸がスリッパを出してくれたので、華子はそれを履いて廊下を進んだ。
「突き当りがリビングだ」
華子は突き当りまで行くとドアを開ける。
そこは20畳以上はある広いリビングルームだった。
リビングの一角には、ダイニングスペースとカウンターキッチンがある。
リビングの床も白い大理石で、ルーフバルコニーに面した窓は天井までガラス張りだ。
この辺りは条例で高い建物を建てられないので、五階のこの部屋からでも街の様子が一望出来た。
窓辺にはオフホワイトのアメリカンサイズのソファーセットが置いてある。
広いので座り心地が良さそうだ。
ダイニングスペースには、六人掛けの白いダイニングテーブルがあった。
家具はホワイト系が多いので、圧迫感がなく室内は明るい雰囲気だ。
物がほとんどなくシンプルですっきりしているので、まるでホテルのようだ。
キッチンも白を基調としたシンプルな造りでとても使いやすそうだ。
しかしキッチンはほとんど使われた形跡がないので、
おそらくこの家の住人はあまり料理をしないのだろう。
「素敵な部屋ね、気に入ったわ」
「それは良かった。実はここは俺の家なんだ」
「えっ?」
華子は驚いて声を出したがすぐ陸に聞く。
「どういう事?」
「だから俺はここに住んでいるんだよ。社宅のマンションのリフォームが終わるまで、君は空いている部屋を使うといい」
「そういう事じゃなくって、どうして私があなたの家に住まなくちゃいけないの?」
「だから言ったろう? まだ社宅はリフォーム中なんだ」
「それは分かってるわよっ! だからってなんでここなのよ!」
「仕方ないだろう。あっちはまだ住めないんだ。4~5日の辛抱だから我慢してくれ」
陸はそう言った後、手に持っていた紙袋を一旦床へ置く。
「玄関を入って左側の二部屋は空いているから、どちらでも好きな方を使うといい」
そう言った陸を見て、華子はこれ以上抗議しても無駄だと悟る。
そして諦めたように言った。
「わかったわ……」
華子は早速部屋を見に行った。
そしてすぐに戻って来た。
「玄関に近い方の部屋にするわ。ちゃんとベッドもあるのね」
「来客用に一通りは揃えているからな。じゃあ買った物を部屋へ運んでおくよ。今風呂を入れたから、先にゆっくり入るとい
い」
陸は大量の買い物袋を全て部屋へ運んでくれた。
陸がリビングからいなくなると、華子は改めて室内をゆっくり見回す。
(これがあの男の家ですって? 信じられない!)
照明や家具、カーテンから飾ってある絵や小物に至るまで全て洗練されていてセンスが良い。
窓際に置かれた大きな観葉植物も、日当たりの良い場所で生き生きとしていた。
部屋の隅の壁際には、ロボット掃除機が置かれている。
重森の部屋にあった物と同じメーカーだが、それよりもグレードが高そうだ。
華子は感嘆のため息をつくと、窓辺へ移動する。
窓の外に広がるルーフバルコニーには、テーブルセットが置かれているだけでスッキリとしていた。
このマンションは少し高台に建っているので、バルコニーの先には美しい夜景が広がっている。
華子が重森と付き合っていた頃、重森は親が所有するタワマンに住んでいたので華子はそこへ頻繁に出入りしていた。
タワマンから見える夜景は煌びやかでとても刺激的だったが、
このマンションから見える夜景は、なぜかホッと和むような気持ちになる。
華子はその美しい夜景を、しばらくの間じっと見つめ続けていた。