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3 - 第1話:最適な未来

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2025年04月20日

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第1話:最適な未来



朝六時、電子の光が静かにまぶたを叩いた。

天井に浮かぶスクリーンが、ミナトの今日の“行動予定”を表示している。


「本日:感情値安定。体温36.3。平均評価スコア 42点。優良安定枠につき、通常登校可能。」


ミナト・フジモト、17歳。黒髪はやや長めで、くしゃくしゃと寝癖のまま。

グレーの制服には管理IDカードが付いており、胸ポケットには

**“第4管理区域・市民学校Aブロック 第7学級”**の紋章が刻まれている。


顔立ちは整っているが表情は乏しい。

“表情筋は誤解のもと”と教えられて育った世代だ。


ベッドから起き上がると、自動でシャワーが起動し、歯磨き液が口内に注がれる。

朝食はサブスコアにより内容が最適化され、今日は「プロテイン・ユニット/塩分制御タイプE」。


窓の外には、高層ビルが整列した灰色の都市が広がっていた。

空には人工雲が制御されたリズムで流れ、ドローンが時間通りのルートで飛び交う。


すべてが、無駄なく、均質で、静かすぎる。





登校途中、ミナトは交差点で立ち止まる。

赤信号の隣にはAIスコアボードが設置されており、通行人それぞれの“スコア”が点滅している。


「スコア65:優良市民」

「スコア52:協調性評価中」

「スコア39:行動傾向注意」


通行人の多くが、その数字を一瞥もせずに進む。

見慣れているのではない。見る意味がないと思っているのだ。


「……42か」

ミナトは自分の胸元のスコアを確認する。低くも高くもない、“問題にされない数字”。





学校の校門を通るとき、顔認証ゲートが彼を無言で受け入れた。

廊下では制服の少年少女たちが、無言で整列し、それぞれの座席に向かう。


クラスメイトのレンは、髪を短く刈り込んだスポーツタイプ。

無駄な発言をしない彼はスコア72で、将来は保護官として期待されている。


「おはようございます」

教室に響くのは、AI教師の合成音声だった。


「今日の授業は、“感情と効率の相関”についてです。昨日、過剰な発言をした生徒が3名、感情評価が再審査されました」


モニターに映るのは、AIによって切り取られた“問題発言”の記録。


「好きなことを、やってみたかっただけなんです」

「なんとなく、胸がざわつくって言うか……」


クラス全員が、無言で画面を見つめる。

誰も笑わないし、驚かない。ただ、正解の顔で“理解”するだけ。





放課後、ミナトは一人、校舎の裏手に回る。

ポケットから、折りたたんだ紙を取り出す。


――そこには手書きの詩。


インクで書かれた文字は、スコア化も最適化もされていない。


「風は、命令されずに吹いている。

花は、誰にも褒められずに咲いている。」


ふと、空を見上げた。

制御された人工雲の向こうに、ほんの一瞬だけ**“不規則に揺れる光”**が見えた気がした。


それは、誰にもスコアで測れない、小さな“違和感”だった。

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