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榊夜 梟(サカヤ フクロウ)
あぁ、僕はあなたを好きだった。きっとこれは真実の愛。勝手で、自由奔放な澄がどうしようもなく好きだった。
高校3年、晩夏の頃。まだ、結ばれる前のはなし。僕は進学のために、図書室でひとり参考書を開いていた。そこに、やってきた。
曲鎖澄。
彼女は僕に甘い視線で手招きした。席を立ち、その姿の後についていった。
「あなたが好きなの。付き合って!」
そう言われて、僕の鼓動は早くなった気がした。彼女は頭が飛び抜けて良かった。受験勉強なんか、当然していなそうな彼女の無垢な瞳。そんな可憐な告白に対して、
「…今は、勉強に集中してて。ごめん。」
僕の口は拒絶を応えた。今でも、この時なぜ断ってしまったのか分からない。僕は席に戻り、参考書に手をつける。
それから数日たったある日、体が異常を訴えた。曲鎖澄。彼女の儚く美しいあの顔、目、口。全て忘れられない物になった。まるで他に集中できなかった。彼女のことで、頭がパンクしそうだった。気がつけば彼女のいるもとへ走っていた。教室にひとり残って、本を読む彼女のもとへ。
それから、僕ら2人は付き合い始めた。お互い手を握り、校舎を背に帰る日常。その一瞬が、最高の思い出。
学校の紙切れなんかに、興味を抱くことも無くなった。確実に低くなった点数の書かれた、紙切れなんかに。だって彼女は言ったんだ。
「大丈夫だよ。あなたがどんなに暗い底にいても、私はついていく。テストも受験も、気にしなくていいんだよ。」
僕はただ、彼女だけをみつめていた。
テストの点を見た母は僕をこっぴどく叱った。そしてその晩、 家を追い出されてしまった。もう、うちの子ではないんだそうだ。僕は、彼女の家へ向かった。彼女の部屋で、彼女のベッドに座り、言ったんだ。
「さすがに勉強をしないとまずい。だからもう、別れよう。」
その口を、彼女はそっと塞いだ。ファーストキスだろうか。彼女の粘液が、僕に混入する。僕はもう、完全に虜だった。
結果、受けた大学はすべて落ちた。彼女は別の県にある、名門校と言われる大学へ行くことになった。学校で彼女と最後に喋ったのは、卒業式、理科室。僕が言った。
「僕、就職するよ。君を養う。同じ屋根の下、一緒に暮らしたい。」
彼女が言った。
「…ごめん。」
彼女はそっと部屋を後にした。残されたのは、僕ひとり。
なんだったんだ。あの思い出は。あのキスは。僕は嗚咽し泣きながら、棚にあった柄付き針で頬を裂いた。
ここで彼女に出会えたのは奇跡だった。だから彼女を深夜、部屋に呼び出し聞いたんだ。
今はどこに住んでいるの?友達はいるの?大学は楽しい?
聞いてみたが、何も言わず。そのまま彼女は部屋を出ようとした。だから僕は急いで押し倒したんだ。彼女は僕にキスしたんだ。今更何したって変わらないだろう。あぁそうだ。大人なことをしよう。
彼女は青ざめ、必死に抵抗していた。嫌よ嫌よも好きの内なんだ。それとも、もっと激しい事がしたい?彼女の体を片手で押さえつけ、もう片手で強く殴ってみた。彼女は泣きながら喘いだ。だから、もっと激しくしたんだ。両手でぐっと細い首を締め付けた。彼女の口から声が漏れる。「や」の1文字だけだった。
彼女はやがて動かなくなっていた。そこからは、淡々な作業だ。服を脱がして回収して、斧で彼女の頭を回収して、体は捨てた。いつでもコンパクトに、君を感じたいから。
僕の愛がいきすぎたものだって、わかってる。この感情は、罪だ。しかし、今でも彼女への愛は、まるで呪いのように強い。
どこまでも、ついてきてよ。地獄の果てまで、ついてきて。