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#読み切り
僕には愛する女がいた。庶民なのだが、たしかに僕の支えだった。
「ねぇ、本当にいいの?」
「だって、だって!このままじゃ名家の女と結婚るしかないんだ!…」
そもそも、こいつ以外の女なんて…
不安そうにこちらを見ながら。
「…でも、でも、怖い」
「俺じゃあ、ダメか?」
「そんなこと!そんなことない。」
屋敷の前に着いた。
「親父に認めてもらう。認めてもらえさえすれば、お前と…」
戸惑いを隠せない女には、たしかに嬉しさが混ざっていた。しかしそう上手くいかないのが。恋愛というものか、人生というものか、
「認められるわけがないだろう!この家を継ぐ男が庶民などと結婚!?ふざけるのも大概にしろ!お前は!名家の女と結婚し!名家の女と子供をこさえ!しっかりとだな!」
「しかし!」
ギュッと服を掴み、頭を横に振った。
「もう、いいのです、」
「ッ………」
「すまない、すまない。」
「いえ、」
2人の頭には同じ思いが、あったのだ
((もしも、2人とも、同じように生まれていたら、もしも、2人とも、名家の(庶民の)生まれだったなら、))
男だって、別に親と言い合いをしたい訳じゃない。
どうすれば…
「もう、今日は帰りますね、頭を、冷やしたいので」
「お、送っていくぞ!」
「大丈夫です」
ニコリと微笑みそのまま背を向け帰っていった。
「俺も、帰るべきか」
一方その頃。
「と、いうわけなのだ。すまない、いずれ結婚は必ず。」
「いいのです、19年も片思いしていたのですよ?もちろん、結婚は必ず致します。そこは諦めるつもりはありませんが、綺麗に別れさせるというのも未来の嫁の使命。しっかり別れられるように、待ちます、」
それに、私あの女気に食わないもの、
帰るのが夜遅くなる度に思うのだけれど。私くらいの年頃の女の子は、名家に産まれていれば、門限とかがあったのかしら、私のようなのは、門限をすぎたから、と言って怒ってくれる、そんな親はいない。余計名家のお坊ちゃんとの結婚なんて認められないわよね。
「こーんな庶民と結婚するって言ってる馬鹿野郎についてどう思う?」
「は、はい!?」
急に路地から男の声がした。
「お前だろう!?お前が、あのお嬢様との結婚を!邪魔して!」
「そんな!」
ニヤリと笑いながら、銃を突きつける。
「やめて、!やめてよ!」
あの方と、まだ。
「わたし、わたし、」
「安心しな?あのお坊ちゃんとは、会わせてやるよ、?」
「ヒッ、」
顔をぐるりとこちらに向けさせ
「なんだ、案外いい顔してんじゃねぇか、あの男が惚れ込むわけだ。」
「やめて、やめてください!」
「俺は、今、猛烈に悩んでいる。お前が俺に惚れ込んで、ウヘッ、そんな姿をあのバカに見せて絶望させるのもいいなぁ、でも、お前を殺して、その死体をあのバカに送り付けて、あぁ!それがいい!おまえを抱くよりも、純愛を味わうほうが、いいだろう!?」
静かに、女は倒れ込んだ。
「叶わない恋を、夢見続けるのは、辞めるんだな?そっちの方が、楽だぜ?どーうせあの男はいい家柄の女と結ばれるんだよ、愛の力でハッピーだなんて、そんなのは物語の中だけだ。これが物語の中って言うなら別だが、いい家と結ばれる方がいいに決まっているだろう!」
聞いちゃいねぇか、と呟いた。
「綺麗にしとかねぇとな、坊ちゃんの前に出すんだから、」
「は、?やだ、やだよ、なぁ!嘘だろ!」
「旦那様?」
「お前は!お前は!俺の、違う!違う違う違う」
死体を持ってきた男はニヤリと笑いながら。
「この方は、とある方に惚れ込んでおりまして、その方と……」
「騙されていた。ということですわね?」
「…嘘だ、」
「男に騙され、まんまと、殺され、」
快楽殺人というやつです、とはっきりと言われてしまった男は、女にかけられた言葉は全て、嘘のように感じてしまった。
「あの日、急いで帰ったのって……」
「私は、裏切りません」
「……?」
「私は19年もあなたを一途に思っておりました。もう一度言います。私は、あなたを裏切りません。私を、選んでください!」
男はもうどうでもよかった。あの女と結ばれないのだったら、誰だって同じことだ。いくら待ったって、もう、戻ることは無い位はわかっているのだ。騙されたっていいとまで思っていたのに、なのに、
「分かりました、俺の、嫁に来てくれませんか?」
「はい!」
やっと、やっと結ばれた!きっとこれからも、幸せに決まっているわ!
「ねぇ、式の時間ですよ!」
「綺麗だな」
「ほ、ほんとに!…そんなに直球に言われたら、照れちゃいます。」
「なんでだよ、もう俺のものだろう?」
「あなたも、かっこいいです」
「嬉しいよ、」
耳元で名前を囁かれた。あの、女の名前だった。
「………………」
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