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半月ほど掛けて、関東圏の観光地を巡った二人は、まだ猛暑が続く首都圏から外に出たい、という優子の希望で、軽井沢へ向かった。
拓人は、闇バイトのアジトがある別荘地に近いせいか、あまりいい顔をしなかったけど、自分の希望を汲み取ってくれた事に、感謝する彼女。
多くの観光客で賑わっていたけど、涼しい気候と、お洒落な雰囲気の街並み、ショッピングを楽しむ二人。
居心地が良かった事もあり、軽井沢には一週間ほど滞在していた。
ある意味、怖いものなしの二人は、勢いで関西まで足を延ばす。
サービスエリアに立ち寄り、休憩をしながらロングドライブを続け、最初に立ち寄ったのは京都。
多くの神社仏閣を巡り、二人は、中学校の修学旅行以来の京都に、懐かしい、と声を上げる。
「今なら俺、ここの寺の舞台からダイブできそうな気がするなぁ」
「アンタさぁ、まだ勇者気取りでいんの? 少しは京都の雰囲気を楽しんだらどうなのよ……」
紅葉が綺麗で有名な寺の大舞台の上で、景色を見下ろしながら、優子と拓人は、十代の頃に戻ったように、他愛もない会話を繰り広げている。
「いや、充分楽しんでるよ。修学旅行で京都に来た時と違って、目に映るもの全てが、すげぇ新鮮に見えるのは何でだろうな……?」
感慨深げに言葉を零す男が、不意に思いついたように、彼女と向き合う。
「ってか、京都に来たら、次は、やっぱり奈良だよな? 行こうぜ」
拓人が彼女の手を引き、踵を返して歩き出す。
「え? ちょっ…………本気!?」
「当たり前だろ?」
冷たさと色香を織りなす男の表情から、人懐っこい笑みを見せたれた優子は、ドキッとしながら、拓人の後を付いていった。
奈良では、鹿で有名な公園、大仏が有名な寺と、五重の塔がシンボルの寺を巡る。
たくさんの鹿に驚きながら、おずおずとエサをあげたり、五重の塔を見上げながら、荘厳な佇まいに圧倒されたり、優子は逃避行中とはいえ、非日常的な出来事が新鮮に感じていた。
広大な境内を散策し、まさか、この歳になって奈良と京都を訪れるなんて思いもしなかった彼女は、拓人の背中を見つめながら、この男は、何かにせき立てられているのではないか、と考えてしまう。
およそ一ヶ月近く、拓人と色々な場所を放浪しているが、それは、男のフットワークの軽さだと思っていた。
だけど、ここ最近は、軽井沢で一週間ほど滞在した以外は、思い立ったら即移動という状態が続いている。
優子は拓人に、何か焦ってないか、と聞いてみたかったけど、返事を聞くのが躊躇われて、心のポケットに思いを忍ばせるしかなかった。
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