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「スキル――」
ゼルヴァンの全身から、紫黒の魔力が噴き出す。
「“エンドレスサーガ”」
ドクン――
心臓のような音。
その瞬間。
ゼルヴァンの身体に刻まれていた傷跡が、一斉に紫色へ発光した。
ガルドが与えた斬撃。
カイルの剣傷。
爆炎の焼け跡。
全て。
傷そのものが、“魔力”へ変換されている。
グォォォォォォォォッ!!!!
咆哮。
空気が震える。
瓦礫が浮き上がる。
ガルドが歯を剥く。
「……上等だァ!!」
地面を踏み砕き、突撃。
ドゴォンッ!!
一直線。
大剣を振り上げる。
だが。
目の前のゼルヴァンは、さっきまでとは別物だった。
表情。
満面の笑み。
狂気そのもの。
ガルドの大剣が唸る。
ゼルヴァンは鉤爪を振り上げ迎撃。
ギィィィィンッ!!!
衝突。
火花が散る。
しかし。
前回とは違う。
ゼルヴァンが――押している。
「ッ!?」
ガルドの顔が歪む。
鉤爪だけで、大剣ごと押し返された。
ズザァァァッ!!
ガルドの巨体が地面を滑る。
一瞬。
体勢が崩れる。
ゼルヴァンは、その“一瞬”を逃さなかった。
「ギャガァァァァッ!!!」
もはや言葉ではない。
獣の咆哮。
超加速。
紫黒の残光を引きながら、ガルドの懐へ潜り込む。
「しまっ――」
鉤爪が振り抜かれる。
ズガァァァンッ!!!
だが。
直前。
地面から巨大な盾がせり上がった。
「通させんッ!!」
重厚な防壁。
超硬度の防御術式。
しかし。
ゼルヴァンの鉤爪は止まらない。
バギィィィンッ!!!
盾が砕け散る。
破片が吹き飛ぶ。
だが。
その一瞬だけ、軌道が逸れた。
ガルドへの致命傷を防ぐ。
ガルドが後方へ跳び退く。
「……っ、すまん!!」
肩で息をしながら叫ぶ。
「少し出過ぎた!」
ドランは壊れた盾の破片を払いながら、低く答えた。
「いや、逆だ」
目を細める。
「ヤツの速度が、前より遥かに速い……!」
その時。
ギュルルルルル……
ゼルヴァンの喉から、奇妙な音が漏れる。
笑っている。
獣みたいに。
口元から血を垂らしながら。
「おいおい、どうしたァ?」
鉤爪を広げる。
「止まってるぞ?」
紫黒の魔力が爆ぜる。
「早く来いよォ!!」
狂った笑み。
「俺が食い殺してやるからよォォォッ!!!!」
ドォンッ!!
地面が陥没。
ゼルヴァンが再び突撃する。
狂気を撒き散らしながら、一直線にガルドとドランへ迫る。
だが。
ヒュッ――
銀色の閃光。
ザシュッ!!
ゼルヴァンの脇腹が切り裂かれた。
「なぁッ!?」
振り返る。
そこには、
リシア・エルフェルト。
副団長が到着していた。
「間に合ったようね」
レイピアを振り抜きながら静かに告げる。
だが。
ゼルヴァンは傷を見ようともしない。
傷口は紫色に発光し続けている。
「増えたかァ!!」
笑う。
そして即座に鉤爪をリシアへ向けた。
超高速の突き。
だが――
「前だけ見るな」
後方から声。
ゼルヴァンが振り向く。
そこには。
杖を掲げたセラ・ルミナ。
魔法部隊隊長。
魔法陣が既に完成していた。
「フレアボンバー!!」
静かな詠唱。
次の瞬間。
ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!
街区一帯が吹き飛んだ。
巨大な爆炎。
熱波。
衝撃波。
建物が崩れる。
石畳がめくれ上がる。
ゼルヴァン。
リシア。
ガルド。
ドラン。
全員まとめて爆発へ飲み込まれた。
もちろん。
魔法を放ったセラ自身も。
爆炎の中へ消える。
遠く。
建物の上。
その様子を見下ろしていたカイルが小さく呟く。
「……援軍到来か」
しかし。
その瞬間。
「よそ見はいけませんよ」
声。
ヒュンッ!!
矢。
一本。
二本。
三本。
四本。
右往左往から飛来する。
キィン!!
キィン!!
キィィン!!
カイルが全て叩き落とす。
視線を向ける。
遠方の屋根。
ロビンフット。
弓を構えている。
「まだ続けるか」
カイルが剣を構える。
その瞬間。
ヒュンッ!!
最後の一本。
今度は真っ直ぐ顔面へ。
速い。
避けるには遅い。
だが。
ガシッ。
カイルの左手が矢を掴んだ。
矢尻は鼻先数センチ。
完全停止。
「……もう十分だろ」
矢を握り潰す。
「狩人は策あっての攻撃かと思ったが」
冷たい視線。
「ロビンフットという名にしてもたいしたことないな。」
沈黙。
そして。
ロビンフットは苦笑した。
「ふふ……」
弓を下ろす。
「なるほど」
片目が細まる。
「では」
静かに手を広げる。
「ご覧に入れましょう」
その言葉が合図だった。
カイルの表情が変わる。
足元。
先程切り落とした矢。
砕いた矢。
掴んだ矢。
その全てに。
光の魔法陣が浮かび上がる。
「……何?」
左。
右。
前。
後ろ。
上。
下。
次々と展開される術式。
カイルを中心に包囲網が形成される。
そして。
真下。
足元にも巨大な魔法陣。
カイルが目を見開く。
「さっきの矢が……!」
理解する。
「マーカー代わりか!!」
即座に前方へ飛ぶ。
脱出。
間に合う。
そう思った。
だが。
ロビンフットは微笑んでいた。
「遅いですよ」
静かな声。
「あなたは一回」
夜風が吹く。
「百年休みです」
直後。
ロビンフットが指を鳴らした。
「光陣」
魔法陣が共鳴する。
「護符人柱」
ゴォォォォォォッ!!
全ての魔法陣が一斉に収束。
光が中央へ流れ込む。
何十。
何百。
何千もの術式が重なり合う。
「くっ……!!」
光が爆発する。
ズォォォォォォォォォォンッ!!!!
巨大な光柱。
天へ伸びる。
雲を突き抜ける。
夜空を染める。
その中心。
カイル・レオンハルトの姿が飲み込まれる。
光柱の中。
カイルは最後まで剣を構えていた。
そして。
完全に封印される。
光が収束する。
そこにはもう誰もいない。
ただ。
巨大な白い封印柱だけが、
戦場の中央に突き立っていた。
コメント
1件
今回めっちゃ熱かった!!🔥 ゼルヴァンの「エンドレスサーガ」で傷を魔力に変換する能力、やばすぎる…! でも個人的に一番グッときたのは、ロビンフットの罠でカイルを封印するところ! 「あなたは一回、百年休みです」って決め台詞がカッコよすぎて鳥肌立ったよ😭✨ リシアとセラの援軍も熱いし、もう次の話が待ちきれないよ〜!!
#サイコホラー
れい