テラーノベル
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丸太橋を大きく揺らしながら、
二人は何度も打ち合った。
ぶおんっ!
がんっ!
ジョンの六尺棒が唸りを上げ、
ロビンの剣が火花を散らす。
「うおっ!?」
ロビンは必死に踏みとどまる。
だが橋は細い。
足場も悪い。
対するジョンは、
まるで薪割りでもしているような顔だった。
「おおー」
「お前、速いなあ」
のんびり感心している。
ロビンは悔しそうに歯を食いしばった。
「そっちこそ!」
次の瞬間。
ジョンの六尺棒が、
大きく横薙ぎに振るわれた。
ぶんっ!!
ロビンは避けようと身をひねる。
だが。
「うわっ!?」
ぐらり、と丸太橋が揺れた。
足を踏み外し、
そのまま川へ真っ逆さまに落ちる。
ざばぁんっ!!
冷たい水しぶきが上がった。
ジョンは橋の上で、
ぽかんと川を見下ろす。
「ん?」
しばらく考え込み、
のんびり頷いた。
「落ちたのかあ」
「俺の勝ちだな」
そう言って、
六尺棒を肩へ担ぎ、
そのまま去っていこうとする。
すると。
「おーい!」
川の中から声が響いた。
ずぶ濡れのロビンが、
水をばしゃばしゃ掻き分けながら顔を出している。
「お前、強いなあ!」
ジョンが振り向いた。
「んー?」
ロビンはにやりと笑った。
「俺の仲間になれよ!」
ジョンは首をかしげる。
「ん?」
「なかまあ……?」
しばらく考え込み、
やがて嬉しそうに笑った。
「いいよお」
「名前は」
「リトル・ジョン」
「こんな大男に“リトル”とは皮肉が効いてるな!」
その様子を、
少し離れた木の上から眺めていたサイラスは、
くすりと笑った。
「森の大軍師に許可なく採用するのは困るなあ」
ユンナは呆れた顔になる。
「いつそんな役職できたんですか……」
その頃。
シャーウッドの森の入口では、
ガイが腕を組みながら待っていた。
「遅いな……」
夕日が森を赤く染め始めている。
本来なら、
とっくにロビンを捕らえ、
引きずって戻ってきている頃だった。
だが。
「た、隊長ぉーっ!!」
森の奥から、
ぼろぼろになった兵士たちが飛び出してきた。
泥だらけ。
葉っぱまみれ。
中にはまだ縄が足へ絡まっている者までいる。
ガイの顔が引きつった。
「な……なにをしている貴様らぁっ!!」
怒鳴り声が森へ響く。
「相手は子供だろうが!」
「なぜそんなことになる!?」
兵士たちは口々に叫ぶ。
「森が変なんです!」
「どこから矢が飛んでくるかわからなくて!」
「ロビンが何人もいました!」
「意味がわからん!!」
ガイは頭を抱えた。
その時。
ざわり――
夕風が森を揺らした。
暗くなり始めたシャーウッドは、
まるで巨大な生き物のように見える。
ガイはごくりと唾を飲み込み、
森を睨みつけた。
「……覚えてろよ」
そう吐き捨てると、
彼は逃げるように撤退の準備を始めた。
その日の夜――。
シャーウッドの森の奥。
焚き火の赤い光が、粗末な小屋の壁を揺らしていた。
外では風が木々を鳴らし、時折、遠くで梟が鳴く。
その小屋の中央で、サイラスは古びた地図を広げていた。
片袖の空いた外套。
細い指先が、地図の一点を静かに叩く。
「次のターゲットは、この修道院だ」
焚き火を囲んでいた男たちが顔を上げた。
ロビン。
リトル・ジョン。
ウィル。
ウィルはロビンのいとこで三人兄弟の長男のしっかり者。
ロビンが森に入ったときから一緒にずっといる
そして数人の森の男たち。
地図に描かれているのは、
ノッテンガム北西の丘に建つ大修道院だった。
「ノッテンガムは税の払えない者に、この修道院を斡旋している」
サイラスは淡々と続ける。
「修道院は民へ金を貸す」
「当然、返済期限付きで」
リトル・ジョンが顔をしかめた。
「ただの金貸しか」
「金貸しならまだいい」
サイラスは静かに言った。
「法外な利息だ」
「払えなければ土地を失う」
「家畜を失う」
「最後には家族ごと修道院の農地へ組み込まれる」
焚き火がぱちりと爆ぜる。
空気が重くなった。
ロビンは腕を組んだまま、地図を見下ろしている。
サイラスは続けた。
「仮にも聖職者だが、ぜいたくな暮らしをしているらしい」
「銀食器、ワイン、毛皮」
「蓄財も相当なものだろう」
ウィルが低く吐き捨てた。
「神の僕ってのは、ずいぶん羽振りがいいんだな」
誰かが小さく笑った。
だがロビンだけは笑わなかった。
焚き火の向こうで、その目だけが静かに燃えている。
サイラスは視線を向ける。
「で、ロビンの考えは?」
小屋の中が静まり返った。
しばらく沈黙した後、ロビンはゆっくり口を開き
サイラスに尋ねる
「修道院は本当に土地まで取るのか」
「ああ」
「子供も?」
「働かされるだろうな」
ロビンは拳を握る。
かつて自分たちが追われた日のことを思い出していた。
家を失う恐怖。
行き場を失う恐怖。
母と暮らした小さな家。
二人で耕した畑。
(母さんどうして……)
(仕方ないんだよ)
(仕方ないってなんだよ)
「……それは違う」
「そんなの、絶対に違う」
「俺が全部取り返してくる」
その瞬間――
森の男たちの空気が変わった。
怒り。
期待。
そして高揚。
リトル・ジョンが豪快に笑う。
「いいなあ、おれもいぐ!」
「修道士どもが腰を抜かすぞ!」
だがサイラスだけは、焚き火を見つめたままだった。
炎が彼の横顔を赤く照らす。
――義賊。
民はそう呼ぶだろう。
だが一度始めれば、もう後戻りはできない。
王国も。
修道院も。
そしてノッテンガムも。
必ずロビン・フッドを敵とみなす。
サイラスは静かに目を閉じた。
森の小さな反抗は、もう止まらないところまで来ていた
エスカリオ王宮――。
重厚な石壁に囲まれた執務室には、
昼下がりの淡い光が差し込んでいた。
カルド王は机に肘をつき、
書類から顔を上げる。
向かいでは、
ジョンがいつもの穏やかな調子で報告を続けていた。
「例の新税の件ですが、先日ノッテンガム卿のもとへ説明に参りました」
「ほう」
「なんといってもノッテンダムの徴税率の高さはとても優秀ですし」
「ぜひ、ご意見をと」
「ノッテンガム卿はこちらの趣旨を即座に理解してくださいました」
ジョンはどこか嬉しそうだった。
「あのような方が国に満ち溢れれば、我が国は安泰だと思います」
カルドは無言のまま息子を見る。
――お前は人を信じすぎる。
心の中でそう呟いた。
――もう少し、人を見抜く目を持たねばならぬ。
ノッテンガム卿が理解したのではない。
理解した“ふり”をしただけだ。
だがジョンは、その違いに気づいていない。
カルドは小さく息を吐いた。
「……で、母さんの件だが」
「ああ、それでしたら」
ジョンは思い出したように顔を上げた。
「その時、母上も同行したいと仰られまして」
カルドの眉がわずかに動く。
「あっでも」
「交渉には参加しておりませんよ」
ジョンは慌てたように手を振った。
「道中、ただ周囲をご覧になっていただけです」
「周囲を?」
「ええ。市場や街道沿いの村を」
ジョンは首を傾げる。
「何やら、“慈悲なくして国はなし”とか仰っておられました」
「私にはさっぱり意味がわかりませんでしたが」
カルドは目を閉じた。
――わかれよ。
思わずそう言いたくなる。
だが同時に、確信もしていた。
――気づいているんだ。
この税はあやうい
取り扱いを間違えれば……
ジョンはまだ知らない。
国は理屈だけでは動かぬ。
人は恐怖だけでも従わぬ。
カルドはゆっくりと椅子にもたれた。
窓の外では、遠く王都の鐘が鳴っている。
その音が、どこか不吉に聞こえた。
コメント
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うわあああ!第4話も熱すぎる!!🔥🔥 まずロビンvsリトル・ジョンの橋の決闘、ジョンの「落ちたのかあ」ってマイペースすぎて好き😭笑 でも仲間になる流れ、めっちゃ胸熱でしたね!!サイラスの軍師っぷりもかっこよすぎるし…「義賊」になる覚悟の重さ、じわじわ来た… で、最後のカルド王!「内乱罪でしょっぴいてやる」って言いながら笑ってるの、怒ってるのに楽しそうで笑った🤣 でも王妃様の不気味な微笑みが気になりすぎる…次回が待ち遠しすぎるよー!!✨