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夏休みに入ってすぐに、美花と雪は、紹介状を持って立川緑病院の産婦人科を訪れた。
彼女の担当の医師は、大らかな表情の女性医師。
内診を始め、MRIや腹部エコーなど、様々な検査を受けた結果、美花は子宮と膣が全て欠損している事が分かった。
『…………』
改めて医師から検査結果を聞いた彼女は、愕然として、言葉を失う。
治療方法は、造膣の手術をする事だが、手術するのもしないのも、美花の考え次第との事。
また、造膣の手術は、性行為を行うための手段のひとつ、とも説明を受けた。
『焦らずに、ご自身でよくお考え下さい。手術をしたい、と、美花さんが思う時が最良のタイミングだと、私は考えています。手術をしない、という選択肢もあります。お母様とよく相談して、一週間後に、また来院して下さい』
その日、美花と雪は、医師からロキタンスキー症候群に関する資料を受け取り、帰宅した。
『美花…………』
どこか憔悴している母が、彼女の名前をポツリと零す。
『本当に……ごめんな……さ……い……』
『お母さん…………。大丈夫だから……謝らないで……』
頬を濡らしながら俯き、謝る雪に、美花は腕を回して抱きしめた。
『手術の事だけど…………美花の意思に沿いたいって、私は思ってる。美花も、自分がどうしたいか、どう生きたいのか、よく…………考えてね……』
『うん。分かった……』
美花はリビングを出ると自室に引きこもり、ベッドに倒れ込んだ。
ベッドに寝転びながら、彼女は病院でもらった資料に目を通す。
『自分がどうしたいか、どう生きたいか、かぁ……』
雪の言葉を反芻しながら、書類の文字を追い掛けていく。
自分の病気を、まだ受け止め切れていない十代の彼女にとって、重過ぎる現実であり、生き方について考える余裕すらなかった。
彼氏と呼べる存在の男子はいないけれど、年頃になった美花にも、いずれ恋人ができ、愛を育む行為をする事になるのかもしれない。
(次の診察まで、一週間あるから、しっかり考えよう……)
手元の資料を傍らに置いた美花は、軽く昼寝をするはずが、そのまま深い眠りに堕ちていった。
保谷東