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#魔道具職人
こはる
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はる
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自転車和尚
212
45
第26話: 【ランキング】異世界で最も貢献したUP主は誰だ?
朝、村の広場に大きな板が現れた。
誰も置いていない。
誰も作っていない。
板には、文字が浮かんでいた。
転生ランキング
救った人数
ナギは息を止めた。
ロッカが一歩前へ出る。
「消せ」
サヨが端末を構えた。
「コメント欄が反応しています」
文字が流れる。
誰が一位?
ナギ?
レンヤ?
ロッカもすごい。
まかなの料理も救ってる。
こよりも魔物を止めた。
ランキング気になる。
でも荒れそう。
拡散ハルが腕輪を押さえた。
「数字は伸びます。伸びると、止めにくいです」
レンヤが静かに言った。
「人を数字に乗せると、見えなくなるものがあります」
ミレナは帳面を開いたまま、書けずにいた。
「でも、救った記録は大事。けれど、順位にした瞬間、何かが違う」
桶が言った。
「迷えてえらい!」
小桶も言った。
「すぐ決めなくてえらい!」
その時、受付場に人が落ちてきた。
灰色の上着。
首から小さな集計板。
短い茶色の髪。
その人は板を見て、顔をしかめた。
「もう出てる……」
ナギが近づく。
「あなたが?」
その人は頭を下げた。
「順位ミナトです。救助数、達成数、貢献度をまとめる動画を投稿していました。でも、今回はまずいです」
ロッカが言う。
「分かっているなら止めろ」
ミナトは集計板を握った。
「止めたい。でも、数字が勝手に集まっています」
ナギのスマホが震えた。
能力名
救助ランキング集計
効果
誰がどれだけ人を救ったかを数字化する。
補正
見ている人の関心。
比較したい気持ち。
感謝の量。
記録の多さ。
注意
救った人数だけでは、救いの重さを測れません。
広場の板に名前が浮かび始めた。
飯野まかな
食事支援人数
猫撫こより
魔物沈静数
画面ヨミト
危険回避数
久瀬ナギ
大喜利介入数
ロッカ
直接停止数
ミレナが小さく言った。
「細かい……」
ハクトが眉を寄せる。
「命に大小はありません」
リョウも銛を下ろした。
「でかい魚を逃がしたのも救いに入るのか?」
ミナトは苦しそうに言った。
「入ります。でも、入れた途端に比べられる」
コメント欄が速くなる。
まかな一位?
ナギ多いでしょ。
ロッカ毎回止めてる。
こよりは魔物も救ってる。
誰が一番?
数字で見たい。
比べたくない。
板の文字が揺れた。
順位が出ようとしている。
サヨが強く言った。
「拾いません」
でも、関心そのものが大きい。
順位は形になりかける。
ナギはスマホを握った。
お題。
救った人を順位にしたくなる気持ちが止まった理由とは。
ナギは叫んだ。
「お題! 転生ランキングが順位を出す前に、急に迷った理由とは!」
板が光る。
ナギは答えた。
「救われた人の顔が、数字より先に出てきた!」
板の文字が止まった。
数字のかわりに、小さな場面が浮かんだ。
水くみが楽になった村人。
笑顔予約券を握って眠る子ども。
料理を食べて落ち着いた魔物。
門番になったゴブすけ。
安全に避難できた海外投稿者。
川へ戻った巨大魚。
巣箱で眠るモルモット。
広場が静かになった。
ミナトの集計板が震える。
ランキング
表示保留。
サヨが息を吐いた。
「止まりました」
ロッカが板を見上げる。
「これでいい」
ミナトは首を横に振った。
「でも、完全に消すだけではだめです。感謝まで消えてしまう」
レンヤがうなずいた。
「数字ではなく、記録に変えましょう」
ミレナが顔を上げた。
「順位ではなく、救いの記録」
ナギは板を見た。
「お題! 誰が一番かを決められないランキングが、新しく選んだ形とは!」
答える。
「順位表ではなく、ありがとう掲示板!」
大きな板の文字が変わった。
転生ランキング
ではなく
ありがとう掲示板
数字は小さくなった。
名前の横に、救った場面が並ぶ。
まかな
温かい食事で村を落ち着かせた。
こより
怖がる魔物と人の間に距離を作った。
ロッカ
危ない一歩を何度も止めた。
ナギ
変な答えで、危険の向きを変えた。
ミレナ
忘れられそうな出来事を記録した。
桶
褒めた。
小桶
一緒に褒めた。
桶と小桶が同時に言った。
「載ってえらい!」
「掲示されてえらい!」
皆が少し笑った。
コメント欄も変わる。
ありがとう掲示板いい。
一位じゃなくていい。
みんな違う救い方。
数字だけじゃない。
桶も救ってる。
小桶も救ってる。
拡散ハルの腕輪が静かになる。
「荒れにくくなった」
サヨもうなずく。
「感謝は流れても、競争にはなっていません」
ミナトは深く頭を下げた。
「ありがとうございます。僕、数字を出すのが得意だったけど、数字に苦しめることもありました」
ロッカが言う。
「なら、使い方を変えろ」
ミナトは顔を上げた。
「はい」
夕方まで、ありがとう掲示板は増えていった。
小さな救いも載った。
ハヤテ
走らず案内した。
ミチル
必要な道具を分けた。
ツクル
注意を絵で伝えた。
サヨ
拾う言葉を選んだ。
ハル
今日は休むを押した。
レンヤ
大きな期待を小さくした。
ゴブすけ
確認した。
教官車
止めた。
モルモット達
眠ってくれた。
ミレナはその全部を書いた。
「これは、記録していて苦しくない」
ミナトは小さく笑った。
「順位じゃないからですね」
ハクトが静かに言う。
「救いは、あとから気づくこともあります」
まかなが鍋をかき混ぜながら言った。
「食べた後に元気になるみたいにね」
ナギは掲示板を見た。
誰が最も多く救ったのか。
その問いは、まだ残っている。
でも、答えは一つではなかった。
多く救った人。
深く救った人。
見えないところで支えた人。
止めた人。
待った人。
記録した人。
褒めた桶。
全部、違う。
夜。
転生タイムラインが開いた。
第26話
転生ランキング
映像には、順位表が現れる場面。
数字が人を比べようとする場面。
ナギの大喜利で救われた人の顔が出る場面。
ありがとう掲示板へ変わる場面が映っていた。
コメント欄は、ゆっくり流れていた。
ありがとう。
順位じゃなくてよかった。
見えない救いもある。
ロッカありがとう。
ナギありがとう。
まかなありがとう。
ゴブすけもありがとう。
桶と小桶もありがとう。
ナギは画面を見て、少しだけ笑った。
ロッカが隣に立つ。
「数字と戦うと言ったな」
「うん」
「数字ではなく、見方と戦った」
ナギはうなずいた。
「難しかった」
桶が言った。
「難しくてもえらい!」
小桶も言った。
「比べなくてもえらい!」
スマホが震えた。
次の転生者を準備中。
投稿傾向
最初の転生者
異世界最古の転生者
長い滞在
ナギは画面を見つめた。
「最初の転生者……」
レンヤの声が少し低くなる。
「この流れの始まりを知っている人かもしれません」
サヨがコメント欄を見る。
「現実世界も静かになっています。期待より、不安が強い」
ミナトはありがとう掲示板を見た。
「その人も、どこかで誰かを救ったんでしょうか」
ロッカは森の方を見た。
「会えば分かる」
ナギはスマホをしまった。
ありがとう掲示板の文字が、夜風に揺れていた。
順位ではない。
でも、消えない記録。
転生タイムラインは、いよいよ最初の人物を呼ぼうとしていた。
コメント
1件
いやー、今回の「ランキング」の話、めっちゃ良かった……「ありがとう掲示板」に変わった瞬間、なんかこっちまでホッとしたわ。ナギが「救われた人の顔が出てきた」って答えたところ、胸にきた。数字で測れないものを大事にするって、簡単そうで難しいもんな。桶と小桶が載ってるところも含めて、優しさに溢れてる回だった。次の「最初の転生者」も気になるー!