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ありんす
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ねこなさま🐈⬛💘
7
す㍄
9
◇
その頃、監禁されたセレーネは外が騒がしいことに気づく。恐らく民が城に押し寄せているようだが、一体何が起きているのか。
不意に窓にコツンと何かがぶつかった音がする。
驚いて窓に近づくと、そこにいたのは空飛ぶ箒によって飛行しているラウルである。
彼は箒に乗るというより、ほぼぶら下がっており箒の柄を脚で挟んで頭は地上方向を向いている。
「王子!?」
「いやーママ上に空飛ぶ箒貰ったんだけど、どうにも俺と相性悪いみたい」
「そんなことより、どうしてここに!?」
「その話は中でしよう」
彼はそう言って、窓枠に粘土状の何かを貼り付ける。
「下がって、ギデオン製の粘土爆弾だから」
セレーネが慌ててさがると、彼も少し離れてからマッチを擦って放り投げる。
小さな火が粘土爆弾に着火し、轟音とともに格子窓は粉々に砕け散る。それと同時に冷たい夜風が監禁部屋に流れ込んだ。
ラウルは割れた窓から中に入ると、彼女の姿を見て唸った。
「ひどい格好だな」
彼の目の前に立つセレーネの姿は、捕らえられてからの拷問の跡を生々しく物語っていた。肌には痣が浮かび、華奢な手首には縄の食い込んだ痕が残っている。
いつもの白いドレスは引き裂かれており、破れた部分を無理やりつなぎ合わせて服にしている。
「……襲われたのか?」
彼の目がスっと鋭くなる。もし仮に強制的な性交があったのなら、もはや容赦はしないと物語っている。
「い、いえ服を破られただけです」
「そうか……」
「それより王子……どうして」
「こんなものを余に渡すからだ」
彼は青い宝石のついたペンダントを取り出す。
「それは貴方に差し上げたものです! どうかそれを持ってお逃げ下さい!」
◇
ズタボロにされたセレーネは、大きく首を振る。
「わたくしは、ここで朽ち果てても構わないのです」
「セレーネよ、それは本当に民の為になるのか?」
「…………」
「そなたが民を思う気持ちはよくわかった。だがそなたが民を思っているのと同じくらい、民はそなたのことを気にかけている。見よ」
俺は外の景色を指すと、松明をつけたゴンドラが次々に城へとやってきている。
城門前は人でごった返しており、口々に「セレーネ様はどこだ!」と、彼女の安否を気遣っている。
「余がそなたを誘拐すると言って回ったら、皆驚いて駆けつけてきたのだ。そなたは愛されておるぞ」
「またそのような……ご自身を敵にして団結を誘うようなことを……」
「民あっての王、王あっての国」
『『セレーネ様! セレーネ様お姿をお見せ下さい!』』
「民は、あんなハゲタコ騎士よりそなたのことを信じている」
「…………」
「民に全てを告発するのだ。苦しいであろうが、そなたの父が殺されたこと、オクタスによって議会が占拠されていること。全て奴が画策したクーデーターであったことを伝え、民に助けてもらうのだ。王は民を守ることが義務だ。しかし民もまた王を守らなければならない。今までそなたの父が統治してきた国民を信じ、この国を取り戻すのだ」
「父ではない私にできるのでしょうか、そんなことが……」
「一度は死を覚悟したのなら、なんだってできるはずだ。そなたが戦うのであれば、余がこの手を貸してやろう」
セレーネへクリームパンみたいな手をのばすと、彼女はその手を握り返そうとする。
しかし、バンと扉を開けオクタスが姿を現す。
「やはり貴様の仕業か」
静かに、だが確かな怒りを滲ませた声が響いた。
鋭い瞳が俺を射抜き、禿頭の騎士はカチャカチャとプレートメイルの音を響かせながら、ゆっくりと歩みを進める。
「もう言葉を取り繕う余裕もなくなったか? タコタス」
「黙れ、貴様はここで終わりだ」
オクタスが腰の剣を抜いて立ちはだかる。俺もすぐに聖剣を抜き、対峙する。
「剣で私に勝てると思うなよ? これでもアクアレム千人隊長を務めた男だぞ」
「余も剣技で勝てるなどとは思っておらん。だが、お前に勝つ方法などいくらでもある。ナハトわんわん!」
俺が叫ぶと、聖剣の中から巨大な黒犬が飛び出し、オクタスに飛びかかる。
「バウバウバウ! グルルルル!」
「ぐわっ! なんだこいつは!?」
「余の剣ならぬ犬だ」
「卑怯だぞ、魔獣を使うとは!」
「ギャハハハ、余は悪王子だ。正々堂々を期待している貴様がバカなのだ!」
俺はこの場をナハトにまかせてセレーネと逃げようとする。
だが、いつの間に現れたのか、マント姿の暗殺者風の男が彼女を腕で引き寄せ、短剣を彼女の喉元に突きつけていた。
「動けばこの女を殺す。犬をどけろ」
「誰だお前は、城の騎士じゃないな」
「犬をどけろ、次はない」
短剣がセレーネの首に僅かに食い込む。
「……ナハト、戻って」
大犬のナハトは、噛んでいたオクタスの腕を離すとゆっくりと引き下がる。
「随分となめた真似をしてくれたな」
形成逆移転したオクタスは、つかつかと俺の前に立つと、その拳が腹部に叩き込まれる。俺は苦痛に顔を歪め膝をついた。続けざまに蹴りが飛び、その場にうずくまる。
「ガルルルルルルル!!」
「ナハト、動いちゃダメだよ」
今にも飛びかかりそうなナハトを止める。
オクタスはそれでいいと頷くと、うずくまる俺に蹴りを浴びせ続ける。
「我が野望を、貴様なんぞに打ち砕かれてたまるものか! さぁ王家の秘宝を出せ!」
「断る。これは貴様のような盗人が持つものではない!」
「誰が盗人だ! この私こそがアクアレムの騎士王! 貴様らリガルドのような、大国の言いなりにならない国にしてみせる!」
「暗殺で成り上がった逆賊なんぞに民はついていかぬ! 権力欲にとりつかれただけの、王の資格なきものに民は導けぬ!」
「わかったような口を叩くな!」
「セレーネ、優しき王よ、民のためを思うなら勇気をもつのだ!」
「黙れ!」
オクタスは荒々しい拳で俺を打ちのめす。俺はぐらりと意識が切れて、その場に倒れ込んだ。
◇
セレーネは、目の前で血を流し倒れたラウルを見て、胸が締め付けられるような感情に襲われた。
これまでの彼女なら、ただ恐怖に震えるだけだったかもしれない。しかし——。
「おやめなさい!!」
彼女の心の奥底から、強烈な怒りが湧き上がる。優しさしか知らなかった彼女が、初めて強い怒りを抱いた瞬間だった。
すると——。
ラウルのポケットから青の光が漏れた。ポケットから飛び出し中空に浮かんだペンダントは、元の所持者に戻るようにセレーネの手へ吸い込まれていく。
ペンダントは輝きを増し、魔力光が彼女を掴んでいる暗殺者を吹き飛ばす。
「なにが起きている!?」
困惑するオクタス。
セレーネはペンダントを包むように両手で握りしめる。すると淡い青の輝きが彼女の身体を包み込み、その中心から、神秘的な槍が顕現した。
アクアレムの秘宝——聖槍ポセイドンランス。
三叉に分かれた蒼の槍は、思わず見入ってしまうほどの神々しき光を放つ。水の魔力を帯び、槍全体から水泡が漏れ出ている。
オクタスは目を見開き、驚愕に身を強ばらせた。
「それがアクアレムの秘宝……なんて、美しい」
「海神鎧装降臨」
セレーネの術式に反応した槍から、水泡がボコボコと舞い上がる。まるでベールのように彼女の全身を包むと、次の瞬間セレーネの体は青銀の鎧に身を包んでいた。
「まずい、槍が継承者を選んだ!」
暗殺者の男は、聖槍の能力発露に怯む。
青鎧の各部は精緻に鍛え上げられており、流れるような曲線と鋭い稜線が絶妙に調和し、力強さと優雅さを兼ね備えている。
肩当ては大きく広がり、海の戦士の威厳を強調する一方で、胸部は無駄のない鋼鉄のハーフカップブラの形状。
腕部には細かな装飾が施され、まるで古代文字のような神秘的な模様が浮かび上がる。
お腹は白い肌とへそが露出し、古代スパルタスを彷彿とさせる。腰から下がる装甲は軽やかでありながらも防御力を失わず、戦場での敏捷さを約束していた。
オクタスは光に引かれる蛾のように、手を伸ばしてふらふらと近づいていく。
「そいつを寄越せ! その槍も鎧も私のものだ!」
勢いよくセレーネに飛びかかると、槍が青白い光を放ちオクタスの体を弾き飛ばす。
「がはっ!」
石壁に叩きつけられたオクタスは、苦悶の声を上げ「なぜだ!?」と叫ぶ。
「槍は資格なきものには使えません。わたくしは我が友ラウル・グランツを傷つけた貴方を決して許しません」
コメント
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うわあ……セレーネ、覚醒しちゃったね……! ずっと優しくて守られるだけの王女だったのに、ラウルが倒された瞬間の怒りで聖槍が反応したの、めっちゃ熱い展開だった😭✨ ペンダントが継承者を選んだってところも美しいし、「我が友を傷つけた貴方を許さない」って台詞、震えたよ。ラウルの悪王子スタイルも相変わらずかっこよかった! 続きすごく気になる……!