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貸倉庫街は、人の気配がなかった。
同じ形のシャッターが並び、街灯だけがアスファルトを照らしている。
俺はスマホの画像と見比べる。
「……あった」
赤いシャッター。
白いプレート。
**17**
間違いない。
Rが送ってきた場所だ。
「警察より先に着いたみたい」
美咲が周囲を見回す。
静かすぎる。
虫の鳴き声すら聞こえない。
「開ける?」
俺は小さくうなずいた。
南京錠は掛かっていない。
ゆっくりシャッターを持ち上げる。
ギギギ……
鈍い音が夜に響く。
中は真っ暗だった。
スマホのライトをつける。
そこにあったのは、段ボール箱が三つ。
古い机が一つ。
そして壁一面に貼られた写真。
「……何だ、これ」
近づく。
全部、人の写真だった。
若い男。
女子高生。
会社員。
主婦。
年齢もバラバラ。
その一枚一枚に番号が書かれている。
12。
31。
42。
17。
俺の写真もあった。
思わず足が止まる。
「撮られてたのか……」
写真の下には赤い線。
線は別の写真へとつながっている。
家族。
友人。
勤務先。
学校。
関係者が地図みたいに整理されていた。
「人間関係……」
美咲が小さくつぶやく。
「組織は参加者だけじゃなく、その周りまで調べてる」
だから母さんの病院も知っていた。
だから海斗も消えた。
全部つながる。
その時だった。
段ボールの中から電子音が鳴る。
ピッ……
ピッ……
俺はフタを開けた。
中には古いノートパソコン。
電源が入っている。
画面には動画ファイルが一つだけ。
タイトルは――
**『神谷悠真へ』**
「俺宛……?」
再生する。
画面に映ったのはRだった。
顔はやっぱり見えない。
フードを深くかぶっている。
「ここまで来たなら聞いてください」
声は落ち着いていた。
でも少しだけ苦しそうだ。
「この倉庫は、組織が捨てた資料を集めた場所です」
「全部は持ち出せませんでした」
画面が少し揺れる。
誰かが近づいているような物音。
Rは振り返らない。
「あなたは、自分が偶然選ばれたと思っていますね」
俺は画面を見つめる。
「違います」
Rははっきりと言った。
「あなたは選ばれたんじゃない」
一拍置く。
そして、静かに続けた。
「あなたが、応募した広告」
「……あれは」
「あなた専用に表示された広告です」
頭の中が真っ白になる。
「そんな……」
ありえない。
偶然じゃなかったのか。
Rは続ける。
「組織は、不特定多数を狙っていません」
「狙う相手を選んでいます」
生活。
借金。
検索履歴。
SNS。
悩み。
孤立。
「全部調べた上で」
「一番落ちる可能性が高い人間だけに近づく」
俺は何も言えなかった。
スマホで見た、あの広告。
あれは偶然流れてきたんじゃない。
俺に向かって。
俺だけに向かって。
仕掛けられた罠だった。
その瞬間。
バン!!
倉庫の外で大きな音がした。
美咲が振り返る。
「誰か来た!」
ライトがいくつも倉庫の入口を照らす。
男の声が響く。
「中にいるのは分かってる!」
「出てきなさい!」
組織か。
それとも警察か。
まだ分からない。
俺はノートパソコンを抱えた。
Rが命がけで残した証拠。
これだけは渡せない。
美咲が俺を見る。
「悠真」
「走るよ」
俺はうなずいた。
そして倉庫の奥を見る。
そこには、入ってきた時には気づかなかった、小さな鉄の扉があった。
「出口だ!」
俺たちは迷わず駆け出した
(第三十一話へ続く)
コメント
1件
ああーっ、30話で一気に加速したなこれ!冒頭の倉庫の雰囲気からして「やばい展開来るぞ」って予感させといて、まさか悠真の写真まで貼られてるとは……一番衝撃だったのは「応募した広告は悠真だけに表示された」ってとこ。偶然じゃなかった、狙われてたんだなって真相に背筋冷えたわ。Rが必死に残した動画も、苦しそうな声もキツかった。最後の鉄の扉ダッシュ、続きが気になりすぎる!次話まだ?🔥