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我俺僕 私俺(ガエンボク シオレ)
僕は結局、期待に応えれない癖に、身勝手に暴走して、誰も楽しませることもできなかった。
とあるサーカス団に所属していた。もともとは有名ではなかったが、そのサーカス団はどんどん名を馳せていった。団長は、僕のおかげだと褒めてくれた。このサーカス団は自信がなかった僕の唯一の居場所だと思えた。そして遂に、母親がサーカスを見に来てくれることになった。活動してから3年とちょっと。ネグレクト気味だった母親が初めて関心をみせてくれて、舞い上がっていたのかもしれない。今日の観客席にはお母さんがいる。いつも仕事で大変なお母さん。ちょっと手でも振ってやろうかな。見ててね!僕の空中ブランコ。
ドシャッ!!
あ、ち、違うの。これはジョーク。赤いペンキも派手な演出だよ。ほら、腕なんか変な方向に曲がっちゃって。凄くない?ねぇ、お母さん。やめて。そんな目で僕をみないでよ…。血が地面に落ちていく音が、拍手みたいに聞こえたのを覚えてる。
その舞台で事故を起こしてしまい、僕は両腕を失ってしまった。これから僕はどうすればいいの…?その舞台を見た母親は、それ以来僕の元から姿を消した。本当にショックだったよ。なんであんなミスしちゃったんだろ。もっと練習していれば良かったのかな。後悔したところで、どうしようもなかった。腕と母親を失い、生きる気力がなくなっていた。そして僕は、自分の所属していたサーカス団のテントに火を放って、団員全員を焼き殺した。唯一の居場所。もういらないから燃やしたんだ。僕の全てを奪った場所。いらない。いらない。全部いらない。優しい団長も、
笑ってくれてた観客も、
中途半端だったブランコのベルトも。
燃え上がるテントやサイレンの音を背に、僕は走り去った。夜に光ったそのテントは、どんな日よりも目立ち、最低最悪だっただろう。
僕の罪は、身勝手な放火。自分が少し失くしたからって、周りの全てを奪ったピエロ。
こんな舞台は、もう閉幕だ。
観客の皆様、ごめんなさい。
団員の皆様、ごめんなさい。
お母さん、ごめんなさい。