テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#和風ファンタジー
#ダークファンタジー
重い扉が閉まる。
円卓の上に地図が広げられていた。
グラディウス周辺の地形、路地、廃屋、地下道――細かく書き込まれている。
室内は静まり返っていた。
「現状を整理する」
カイルが口を開く。
指先が地図の一点を叩く。
「敵はこの周辺に分散している可能性が高い」
「だが――」
リシアが言葉を継ぐ。
「統率が取れている以上、必ず“中枢”がある」
ユナが軽く手を上げる。
「はい!それ、今私が探ってるよ」
机の端に置かれた小型の通信魔具。
淡い光が明滅している。
「隊のみんなが今、裏路地から地下に潜ってるはず」
セラが小さく息を吐く。
「無理はさせていないでしょうね」
「大丈夫大丈夫」
ユナは軽く笑う。
「うちの子たち、優秀だから」
アルドは壁にもたれ、腕を組んでいる。
視線だけが静かに魔具へ向けられていた。
カイルが口を開きかけた、その時。
ピッ――
短い音。
魔具の光が一瞬、強く弾ける。
「……来た」
ユナが身を乗り出す。
光が揺れる。
音声が走る。
『……こちら、五番――』
ノイズ。
ザザッ――
「感度が悪いな」
リシアが眉を寄せる。
『……地下……反応、多数……』
声はかすれている。
だが緊張が滲んでいた。
『……拠点……恐らく――』
ブツッ。
沈黙。
「5番隊!?」
ユナの声が低くなる。
魔具の光が、不規則に明滅する。
ザ……ザザッ……
『――……』
何かが擦れる音。
息。
誰かの荒い呼吸。
『……待て……これは……』
一瞬。
空気が凍る。
『――人じゃな――』
途切れる。
完全な沈黙。
光が、消えた。
「どうしたの!?、ねぇみんな!?」
ユナの声が、わずかに震える。
リシアが即座に魔具へ手を伸ばす。
「再接続――」
反応なし。
カイルの視線が鋭くなる。
「位置は」
「……最後の発信は、南西区画の地下水路」
ユナの声が変わっている。
軽さが消えていた。
ドランが静かに立ち上がる。
「行くか」
ガルドは既に剣を肩に担いでいた。
「決まりだろ」
その時。
アルドが、ぽつりと呟く。
「……遅いな」
全員の視線が一瞬、彼に向く。
アルドは魔具を見ていた。
その目だけが、わずかに細められる。
「“見つかった”んじゃない」
静かな声。
「“待たれてた”な」
空気が一段、重くなる。
カイルが短く息を吐く。
「出るぞ」
全員が動き出す。
椅子が引かれ、足音が重なる。
扉が開かれる。
その直前――
ユナが一瞬だけ振り返る。
魔具。
沈黙したままのそれ。
「……絶対、生きてる。無事でいて」
誰に言うでもなく、呟く。
扉が閉まる。
部屋に、静寂が落ちた。
――その頃。
湿った地下水路。
水滴が、ぽたり、ぽたりと落ちる。
薄暗い通路。
そこに――
転がっている。
五番隊の隊員たち。
壁に叩きつけられた跡。
床に広がる血。
だが。
“全員、まだ息がある”。
殺されてはいない。
ただ、徹底的に“潰されている”。
足音。
コツ……コツ……
ゆっくりと近づく影。
倒れた隊員の一人の前で、止まる。
しゃがむ。
顔を覗き込む。
「……惜しいねぇ」
軽い声。
だが、温度がない。
指先で、隊員の顎を持ち上げる。
「あと一歩だったのに」
その男は、笑っていた。
楽しむように。
観察するように。
紫の瞳が、わずかに細められる。
「でも――」
すっと立ち上がる。
背を向ける。
「ここまで来れたのは、褒めてあげるよ」
歩き出す。
影が伸びる。
その名を、誰も呼ばない。
だが――
誰よりも、この場に相応しい存在。
ロビンフット。
闇の中で、口元だけが歪む。
「さて」
足音が遠ざかる。
「“客”が来るね」
完全な静寂。
水音だけが、残る。
――狩りが、始まる。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!