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第三章 はぐれ者編
第十一話「最後の言葉」
荒れた路地。
剣を下ろしたザッドは、静かに空を見上げた。
「……全部じゃない。」
「だが、思い出した。」
ユーマは黙って話を聞く。
ザッドは懐かしそうに笑った。
「古流斬と過ごした日々を。」
「まだあいつがマフィアだった頃だ。」
「よく俺を気にかけていた。」
「『無理するな。』『一人で抱え込むな。』」
「そんな言葉を何度もかけてくれた。」
ザッドは小さく息を吐く。
「俺は口にはしなかった。」
「だが、心の中では尊敬していた。」
「……あいつのことを。」
少しだけ寂しそうに笑う。
「だが、マフィア社会にそんな感情は要らない。」
「仲間を信じれば、裏切られる。」
「情を持てば、命を落とす。」
「だから最後まで言えなかった。」
ユーマは静かに尋ねる。
「父さんは……最後、どうなったの?」
ザッドはゆっくりとユーマを見る。
「古流斬は?」
ユーマは少し俯いた。
「……寿命で。」
「十二年後に。」
ザッドは目を閉じ、小さく笑う。
「……そうか。」
「残念だ。」
「一度くらい、もう一度会いたかったな。」
しばらく沈黙が流れる。
やがてザッドはユーマへ歩み寄る。
「最後の言葉まで、一緒になるなんてな。」
ユーマは首を傾げる。
「え?」
ザッドは優しく笑った。
「古流斬も、俺を生かした時に言った。」
「『生きろ』ってな。」
ザッドはユーマの肩に手を置く。
「だから今度は、俺がお前に言う。」
「生きろ。」
その瞬間。
ザッドの体にひびが入る。
「……時間か。」
借り物の肉体が崩れ始める。
腕が砂のように溶けていく。
ユーマは思わず手を伸ばした。
「待って!」
ザッドは首を横に振る。
「この体は借り物だ。」
「もう長くはもたない。」
少しだけ笑う。
「ユーマ。」
「お前の父親は、本当に立派な男だった。」
「その息子なら……きっと大丈夫だ。」
ザッドの体は光となって崩れていく。
最後に穏やかな表情を浮かべながら、静かに言った。
「ありがとう……古流斬。」
その言葉を残し、ザッドの肉体は完全に消滅した。
ユーマはその場で拳を強く握る。
「父さん……。」
「俺、絶対に守るから。」
静かな風だけが、戦場を吹き抜けた。
――第十二話へ続く。
コメント
1件
おつかれさまです、古流斬さん…🥀 「生きろ」っていう言葉、ザッドが父ちゃんから受け継いで、今度はユーマに託す感じがもう…胸がぎゅっとなる。 借り物の肉体が崩れていく描写、静かなのにすごく重くて。 最後に「ありがとう…古流斬」って言えたのが、本当によかったなって思います。 ユーマが「絶対守る」って誓うラスト、続きも見届けたいです。
麗太
628
古流斬
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