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蒼乃 月
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コメント
1件
うわああ…もう、この回、心臓がぎゅっとなりました。強気で完璧なCEOの宗一郎が、真紀さんに看病されて無防備な姿を晒すところから、麗華ちゃんのキス攻撃、そして三人で食卓を囲む自然さ…全部が尊いです。特に「三人でいる事が自然で当たり前」という感覚、読んでるこっちまで温かい気持ちになりました。最後に母親の話を初めて打ち明けたのも、真紀さんが特別な存在だからですよね。次が気になります!
真紀に促されるまま、布団に寝かされ、解熱剤を口の中に放りこまれて飲まされた
ゴホッ・・・「妙な誤解はしないでくれ・・・俺は決してそんなつもりじゃ―」
精いっぱいの威厳を保ちすぐにお暇すると言いたいのに声が出ない、真紀はクスッと笑った
「今のあなたじゃ、私でもやっつけられますよ、余計な事は考えずに大人しく寝てください」
真紀が氷枕を一つ掴んで宗一郎の頭を持ち上げて滑り込ませた、ゴム製の今時珍しい、どこか懐かしい枕だった、真紀がシャツを緩め、薄れていく意識の中で顔を拭いてくれいるのが分かる
―ああ・・・気持ちがいい―
.。 .:・.。. .。.:・
宗一郎はそこから丸1日眠り続けた・・・起きなければいけないのに、あまりにも心地良過ぎて、脳みそが溶けたのではないかと思うぐらい体の力が入らない
時々、彼女の優しい声が聞こえる、熱は下がったとか、疲労がたまっているんだとか、言ってるが眠くて起きれない
ぺシッぺシッ「うぃ~~~~♪」
「これっ、レイたんダメよ、おじちゃんは、ねんねしてるんだから、起こさないでね」
―そこはお兄ちゃんでよくないか?―
.。 .:・.。. .。.:・
ひどい呼ばれように、後で真紀に説教しようと思ったが、なにせ体が眠くて起き上がれない、まぶたを閉じた宗一郎は、途端に体がほどけて水を含んだ粘土に変わり、再び睡眠の海へ漂った
「どれぐらい眠ってた?」
「1日半ですよ、もう夜です。熱が下がってよかったわ」
目が覚めた宗一郎は、とんでもない失態に呆然となっていた、そして白のTシャツにグレーのスウェット姿の自分をマジマジと見る
「もしかして・・・着替えさせてくれたのか?」
真紀が頬を染めてコクンと頷いた
「シャツとスラックスは洗濯しました、大変だったんですよ岩を動かすみたいで、ユニクロの店員さんにとても大きい人だと言ったらXXLサイズを出して来て―」
その時を思い出したのかクスクス笑った
「ぴったりだよ」
なんと彼女は自分を看病してくれた以外にも、着替えを買いに行って、自分のシャツまでも洗濯してくれたのだ
「いや・・・もう、すまない・・・本当に何て言って詫びればいいか・・・」
「私だっておしゃぶりを届けてくださったのだから助かりました。その後、倒れるなんてびっくりしましたけど」
その時、ぐぅと宗一郎の腹が鳴った
「度々、すまない・・・」
クスクス・・・「すぐ晩御飯にしますね」
そう言うと真紀はキッチンへ向かった
「あ~~~~~~い♪」
麗華がハイハイで宗一郎の膝によじ登って来た
「わぁ!」
そしてブッチュ〜〜〜(はぁと)と宗一郎のほっぺにキスした、というか食べられた
「すいません、その子、ジェニさん達のおかげでキス魔なんです」
真希が申し訳なさそうに言う
「う〜〜〜〜〜〜〜〜い♪」
キラキラした目で、「さぁ、キスしましょう」と目で訴えてくる、宗一郎は暫くためらったがあまりにもグイグイ来る積極的なこの子の愛情に、恥ずかしさが負けて、そっと大福みたいな可愛い頰にキスをした。柔らかくて暖かい、何故か心臓がドキドキした
そこから宗一郎は、麗華をあやし、真紀は3人分の食事を作ってくれた、なぜか今までもそうしていたかのように、二人は麗華を挟んで自然に振舞った
こんなことが自分に起こっているなんてとうてい想像できなかった、いや、もしかしたら心の底では気づいていたのかもしれない、あの時資料室でベビーベッドを組み立てている宗一郎に、そっと寄り添ってきた麗華を抱っこした彼女
あの時に三人を包んでいる空気は、なぜか三人でいる事が自然で当たり前のように思えた
病み上がりで体力が消耗していたのもあって、食欲が刺激され、複雑な感情が胸に渦巻いていたのが嘘のようだ、目の前に出された真紀お手製のうどんとチラシ寿司を綺麗に平らげ、なんとおかわりまでした
どれも美味すぎて宗一郎は食べ過ぎた、真紀はクスクス笑いながらも、宗一郎に沢山食べさせてくれた
以前から思っていた事が今改めて実感できた、彼女は強い・・・何ていうか最初はこんなに小さくて儚げなので、守ってやりたいと保護欲を駆り立てられたのだが、母親だという理由だけではない、彼女の性格の中には芯の強さがある
彼女が子供を理由に楽をしようとしたり、嘆いたりした所は、見たことがない
しばらくして真紀は麗華を寝かしつけて、二人でリビングで沢山話をした、話の内容は尽きなかった、彼女のパリでの生活の話や仕事の話、宗一郎の大学時代の話、そして会話は次第に宗一郎の母親の話に移って行った
はじめて自分が母親の事を他人に話している、自分に驚いていたが、真紀が素晴らしい聞き役になってくれていたので、自然と自分の気持ちを整理しているように、母との思い出話はどんどん出て来た
「お母様はどうやって生計を立てていたんですか?」
囁くように尋ねる真紀の声は温かだった
「親も相手からも強要された中絶を拒んで、俺を産んでからは、良い仕事が見つからなかった、やっと見つけてからは身を粉にして働いたよ」
「生活保護は?」
「受けなかったんだ、多い時は一日3つの仕事を掛け持ちしていた、そして母は見事俺が通う海外の大学の費用を貯めたんだ、でも学費を助けてもらっているんだから、生活費はなんとか自分で稼がないとと、その頃かな?竜馬と知り合ったのは」
宗一郎は彼女の入れてくれた食後のコーヒーを啜りながら、思い出話に花を咲かした
「カレッジ3回生の夏は、夏休み中、竜馬と一緒に牧場地に一日中フェンスを張るアルバイトをしたよ、アイツも俺と一緒で働かないと生活できなかったから、その時によく二人で絶対この生活から抜け出すと言ってたんもんだ」
ベビーベッドに眠っている麗華の寝息が聞こえる
「でも・・・やっと大学を卒業して、働きだして親孝行出来ると思った矢先、母が倒れたんだ、癌だった・・・しかもステージ4だ、母はずっと体調が悪い事を俺に黙っていた」