理系に進んだが為に意味の解らない
数字と文字の羅列を書く事20分
漸く数式で埋め尽くされたノートから
目を逸らした
窓側の1番後ろという特等席で外を眺める
駐輪場で倒れている自転車
遅刻の癖してのんびり歩く生徒
誰かが落とした塵を啄く鴉
視界に入るモノはどれも面白味の欠片も無い
強い風が吹く
グラウンドの木々も
机の上のプリントも
私の結ってない髪も
揺らされる
視界の隅で光る何かに
私の心もほんの少し揺れた気がした
‘ 羽多野 透 ’
もう聞き慣れた名前を胸の内でそっと呟く
気付くかな 、 なんて思いながら視線を送る
それと同時に此方を見上げた彼
ひとり体温が上昇する
またあの爽やかな笑みを魅せる
嗚呼 、 違う 。
本当に心が揺れた
小さく手を振られて此方も笑みを魅せる
嬉しそうな先輩は ‘ またね ’ と口パクをして
去ってゆく 。
‘‘ 他人に興味無いんだよ ? 笑 ’’
情報量が凄まじい ‘ 彼奴ら ’ の事
基本的に間違いは無い筈で
‘ イケメンの先輩 ’ となれば尚更
なら 、 どうして関わるのか 。
汐 依 「 羽多野先輩 」
放課後 、 人が疎らになる時間帯
階段に響く私の声
羽 多 野 「 汐依 、 って馴れ馴れしいか 」
汐 依 「 羽希 、 って呼んで良いですよ 」
迷惑じゃなければ 、 と付け足して 。
通り雨が去った後の太陽の様な笑顔が向けられる
感情豊かなのか
はたまた 、 表情筋が鍛えられているのか
先輩はずっと見ていても飽きない程に
表情がコロコロ変わる
そんな不思議な人だった 。
羽 多 野 「 じゃあ 、 羽希 」
胸が熱くなる
久しぶりに他人の口から発せられる自分の名前
汐 依 「 久しぶりに呼ばれました 、 笑 」
少し淋しそうな笑みを魅せながらこう言う
羽 多 野 「 呼ばれなかった分 、 俺が呼ぶ 」
小説の主人公が言う様な台詞
そんなモノも似合うのだから驚く
汐 依 「 有難う御座います 笑 」
素直に笑顔を魅せる
先輩の前の私は少し素直になれる
貴方に出逢ってから私は少し笑顔が増えた
コメント
3件
新連載ゆっくりとか言って結構早くね まぁ 、 いっか ( は