研修を終えて会社を後にした二人は車に乗っていた。
「どうして急に来たの?」
「本当は迎えに来ただけなんだ。でも廊下で待機していたらあの酷い質問が聞こえてきて気づいたら足が勝手に動いてた。急に乱入してごめん」
「ううん、気にしないで。逆にケンちゃんが来てくれたから皆が喜んでいたわ」
「あの酷い質問をした奴は坂本の女か?」
「そう」
「ったく坂本もあの女もああいう公開処刑みたいなのが好きなんだな。似た者同士で笑っちゃうよ」
「うん。でもまさか彼女も私の恋人が来るなんて思ってもいなかっただろうから彼女のびっくりした顔を見てスッキリしたわ! ケンちゃんありがとう」
「それなら良かったよ」
「でも結局弘人は来なかったわね。心配して損したわ」
「いや、あいつは君の所へ行こうとしてたんだよ」
「え?」
「それをなんとか阻止した」
「嘘っ!」
「本当だよ。実はさ俺が会社に入った時ロビーで偶然知っている営業マンに会ったんだ。去年その人から投資用マンションを買ったんだ。多田さんって知ってる?」
「営業部第二課の多田さん?」
「そう。で、多田さんに今日俺が来た理由を話したんだ。坂本が俺に嫌がらせをしてくる事や理紗子にストーカーまがいの事をしているってね。そうしたら坂本は多田さんの直属の部下だったらしくて血相を変えていたよ。それで坂本が理紗子に近づけないように多田さんが坂本を外へ連れ出してくれたって訳、それでアイツは理紗子の所へ行けなかったんだ。途中磯山さんに電話したらホッとしてたよ」
「磯山さんが電話していた相手はケンちゃんだったんだ」
「そういう事」
「そいう言えば磯山さんが言ってたぞ。理紗子が編集者としての自分を褒めてくれたって。相当嬉しかったみたいだぞ」
健吾はそう言って理紗子の頭をクシャクシャッと撫でた。
「だって本当の事だもの。みんなのお陰でこうして好きな事を続けられるんだから」
「そういう謙虚な気持ちは大事だな」
健吾は微笑みながら頷いていた。
「ちょっとドライブがてら外で飯食って行こうか?」
「それってご褒美?」
「だな。今日は頑張ったからな」
「やった! じゃあ私の食べたいものでもいい?」
「理紗子がリクエストなんて珍しいな」
「えっとね、たまにはケンちゃんに庶民の味を教えてあげようと思ってね」
「俺は至って庶民だぞ! 普段は証券会社から貰ったレトルトしか食ってないからなー」
「フフフッ、確かにそうだけれど、でもね、今ファミレスでカレーフェアをやってるの! それにどうしても行きたいんだー」
「まさに庶民の味だな。OK、どこのファミレス?」
「ロイヤルガーデン」
「了解」
健吾はすぐにカーナビでファミレスの位置を調べるとそこへ向かう。
「しっかし二人とも思いっきりおしゃれしてファミレスか!」
「そういうのも楽しくていいでしょ」
「うん、悪くはないな。俺は理紗子と付き合い始めてからいろんな楽しさを教えられたよ」
「フフッ、じゃあもっともっと教えてあげるわ」
理紗子は楽しそうに微笑んだ。
平日のオフィス街にあるファミレスは空いていた。
昼のランチタイムは混雑するようだが夜は閑散としている。
二人は違う種類のカレーを頼み少しずつシェアする事にした。
理紗子は今日のご褒美にデザートも食べたいとねだる。
そこでガトーショコラとベイクドチーズケーキを一つずつ頼みケーキもシェアして食べた。
食事中、理紗子は健吾の下積み時代の話を色々と聞く事が出来た。
大学時代は投資資金を貯める為に必死でアルバイトをした事、そしてそのアルバイトの種類もかなりの数に上るようだ。
健吾は若い頃に成功してそのまま今日まで来たのだと思っていた理紗子は、若い頃に苦労をしていた事を知り意外に思う。
「どんなアルバイトが一番稼げたの? まさかホストとかはやってないわよね?」
「さすがに水商売はやってないよ」
「じゃあどんなバイト?」
「一番金になったのはやっぱり建築関係だな。っていっても肉体労働じゃなくてシステムキッチンを組み立てるバイトなんだ。説明書を見ながらただひたすら組み立てるだけ。一人作業で黙々とやれるからストレスもないし時間の拘束もそれほどないからあの時の俺には最適だったな。出来高制でバイト代も日払いで貰えたしね」
「へぇーそんな仕事もあるんだ。ケンちゃんって凄いね、本当に色々な経験をしてきたんだね」
「俺の事をよく知らない人間はいきなり成功していきなり億トレになれたって勘違いしている奴が多いけれどいくら運が良くてもいきなりなんてなれないよ。俺の投資仲間は皆若い時にそうやって苦労して来た奴ばかりだからな」
「だから弘人には会社は辞めない方がいいってアドバイスをしたんだね。その苦労が身に染みてわかっていたから」
「そりゃそうさ。余裕がないまま追いつめられてトレードすると絶対に良い結果は出ない。そんなの投資界では常識だよ。それに彼女がいるならなおさらだ。守るべきものがあるならリスクは最小限にしないと」
理紗子は目の前で話す健吾を見ていてカッコいいなと思った。この人は人生の酸いも甘いも知り尽くしている。
そこには弘人にはない大人の余裕が漂っている。
「ん? どうした?」
「ううん、なんでもない」
理紗子ははにかんだように笑うと残りのスイーツを口に入れた。
ファミレスで楽しいひと時を過ごした二人は健吾のマンションへ向かった。
部屋に入ると二人でシャワーを浴びもつれ合うようにベッドへ倒れ込む。
そして理紗子はいつになく激しい健吾に愛されていく。
ベッドの軋む音、そして二人の間から漏れる淫らな音、それらがマックスになった頃二人は絶頂への階段を上り始めた。
「はぁっ…..んっ……」
「理紗子…くっ…….」
二人は昇りつめた後同時に果てた。
理紗子はぐったりと放心状態になる。
一方健吾は最後の余韻を楽しむように熱くなった理紗子の内部へ自身を押し付けながら理紗子にキスをする。
健吾は理紗子が可愛くて愛おしくて仕方がなかった。その思いをぶつけるように何度も理紗子にキスをした。
健吾に目一杯愛された理紗子は今女性として最も美しく光り輝いていた。
コメント
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健吾さん、磯山さん、多田さんに 弘人、留美から守られて、 最後は会場に健吾さんが乱入 ....😁 大盛り上がりのうちに 講演会を終えた理紗子ちゃん✨ 健吾さんと仲良くファミレスで打ち上げもイイね.~👍️💕 やっぱり二人は最高&最強👩❤️👨♥️♥️♥️🤭
健吾も苦労してたんだ。やっぱりはじめからひゅっとなんてないよね。だからこそ今の佐倉健吾という魅力的な人間がいるんだよね〜✨ それは理紗子ちゃんも一緒✨ その2人が惹かれ合うのは必然よね…🎀✨ いつも楽しい2人、飽きないし健吾のラブラブ度がどんどん倍増してる〜(💗ᵕ💗)どこまで上昇する???🤭
弘人の行動は健吾を初めたくさんの人の協力で阻止できたんだね‼️それも健吾と理沙ちゃんの人となりがあってだね✨👍 理沙ちゃんも健吾も自己満足せず過去の努力が身を結び余裕を持って投資や小説を書ける喜びを知ってる2人🥲💕 謙虚な姿勢と周りへの感謝が人間性を成長させることを知ってるから2人に言ったんだね。ただあの2人は無理だと思うけど…😱 たくさんの経験をして理沙&健吾が愛し合う幸せな時間⏳う〜ん満足満足🥰