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蓮が何度か話しかけて来ようとしてるのは分かってた。それを敢えてスルーしたのは、『ごめん』なんて聞きたくなかったから。
その『ごめん』がどんな意味だったとしても、俺には相手を振る時の常套句にしか聞こえない。
蓮が俺のことなんて好きじゃないって、そんなのもう分かってるからさ。
わざわざ言葉にしなくていい。
俺だって、これ以上傷付きたくなんてない。
今だって帰り支度をしてる俺の背中を蓮が見てるのは知ってたけど、気付かない振りをしてる。
あいつの眼力、結構やべーな。そりゃみんなあいつに堕とされるはずだわ。
「おー、お疲れ佐久間。もう帰んのか? 何か用事?」
「別に何にもないんだけどさ。最近忙しかったから、たまには早く帰ってツナとシャチ構ってやろうかなって」
「へえ、そっか」
そう言いながら俺の顔をじっと見る深澤に、内心冷や汗が出る。
用事があるなんて嘘、こいつに言ったところで見破られるに決まってるからそう答えたけど。ものすごく何か言いたそうに俺を見てる。
何言われても受け止められる程、俺の傷はまだ浅くねーぞ。
長い長い片想いに、失恋っていう終止符が打たれたばっかなんだから。
「…めめがさ、何か言いたそうなのは気付いてるんだよな?」
「……そう、だな」
ほらやっぱり。お前の視野と観察眼はマジでどうなってるんだよ。
だからこそ照も頼りにしてて、更にべた惚れなんだろうけどさ。全然そう見せねーけど。
「分かっててスルーしてんなら、いいや。お前にも事情があるんだろうしさ」
「おお、助かる…」
「たださ、めめの顔見たか? すげー顔してたけど」
「すげー顔って、具体的にどんなだよ」
思わず笑ってそう答えるけど、深澤は笑わなかった。寧ろちょっと困ったような顔をしてる。
何だよ、その反応。
「こればっかりはさ、佐久間が自分で確認するべきだと思うわ。ちょっと言葉にしづらいというか」
「え、ますます分かんないんだけど」
「まあ、いいからさ。今日は無理でも、落ち着いたら話聞いてやれよ」
一体どんな顔なのかもう少し食い下がって聞いてやろうと思ったけど、深澤はそう言いながら俺の背中を押す。
言いっぱなしで放り出そうなんて、どういうつもりだよ。
そうは思ったけど、蓮がどんな顔をしてたとしても今は話すつもりないし。仕方ない、今度聞くか。
そう自分を納得させて控室を出ることにする。
扉が閉まる寸前に深澤が何か呟いてたけど、それもよく分からないままだった。
「……飢えた肉食獣みたいな顔、なんて言えるか」
駐車場に向かって廊下を歩いてく。遅い時間なせいか人もまばらで、昼に比べたらとても静かだ。今は賑やかな方がいいな。静かだとつい色々考えてしまうから。
ぼんやりとそんな事を思いながら歩いていたら、突然後ろから腕を掴まれる。咄嗟に大声を出そうとしたら口も塞がれて、パニックになりかけたところで不意に覚えのある香りがした。
固まった俺の耳元で、小さく低い声が囁く。
「…やっと捕まえた、佐久間くん」
何で、蓮が?
違う意味でパニックになっていると、俺の身体を半ば抱えるようにしながら蓮が歩き始める。
ちょっと、待て。何処に連れて行く気だよ。
睨むように蓮の方を見ると、怒ってるような泣いてるような複雑な顔で俺を見てた。
「佐久間くん、俺の話聞く気なんかないでしょう。だから、乱暴なのは分かってるけど、付いて来て」
そんな事を言って、ふいっと前を見て歩き出す。もちろん俺のことはしっかり捕まえたまま。
何だよこれ、どういう状況だよ。
確かに蓮の話を聞く気はなかったけど、こんな事する理由なんてお前にないだろ。
そうは思うけどさっきの蓮の表情が引っ掛かって、何となく抵抗出来ないまま付いていくことにした。
#阿部亮平
#BL
コメント
2件
あざとい警察が捕獲された🙀誰に言えば良い? やっぱり💚ちゃん?それとも💙?一応💜が警告してたしな… 🖤🩷のすれ違い早く収まらないとメンバーも大変だから🩷覚悟決めてずっと捕獲されてて
いやー、今回も刺さったわ…! 佐久間の「『ごめん』なんて聞きたくなかった」って心情、めっちゃ分かる。傷を広げたくない気持ちと、それでも蓮を無視できない自分との葛藤がリアルすぎる。そして深澤の「飢えた肉食獣」って比喩、草。でもそのあと蓮が捕まえに来るところ、心臓バクバクしたわ。蓮の怒ってるような泣いてるような顔、気になる…! 続きが待ちきれない🔥