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25話 ふっくら、夢を見る
静かな夜
ふっくらは
丸い体を丸めて
地面に沈むように横になる
短い脚はゆるく曲がり
腹がふよっとふくらむ
まぶたが
ゆっくり落ちる
目を閉じる
最初に見えたのは
やわらかい道だった
石でも土でもなく
ふっくらの足に
ちょうど合うかたさ
ふっくらは
夢の中で歩く
ぽす
ぽす
周りに
影が揺れる
形は決まらず
近づこうとすると
すっと離れる
ふっくらは
歩き続ける
急に
大きな影が落ちる
琶に似ている
長い首
大きな体
重なった鱗
でも
本物の琶より
少し大きく
少し遠い
ふっくらは
声を出そうとするが
音にならない
夢の琶は
ゆっくり頭を下げ
そのまま
霧のように薄れていく
ふっくらは
手を伸ばす
短い腕が
空を切るだけ
道が消える
足元が
ふわりと浮く
ふっくらは
落ちるでもなく
ただ
見るだけになる
光の帯が
横切る
音のない風が
耳を通る
ふっくらは
目を細める
夢の中でも
丸い顔が
さらに丸くなる
やがて
景色が
すっと折れるように変わり
ふっくらは
目を開ける
朝ではない
夜でもない
寝ている場所が
静かに戻ってくる
ふっくらは
しばらく動かず
夢のかけらを
ぼんやり思い出そうとする
思い出せるのは
「見た」
という感覚だけ
ふっくらは
ゆっくり起き上がる
夢は消え
世界だけが
いつもの顔をしている