2XXX年、世界的な食料不足が起こり飢餓の危機にさらされていた。食料があまりない地域や国はまず滅びていった。食料がある地域ももうそろそろ尽きてしまい、やがて消滅するだろう。そんな風に言われている。
実は私の住んでいる地域は生憎、食料が多くはなかった為に次々と人が倒れていった。少しでも外を出れば死体が道に転がっている程だ。
もう家には「食材」は無い。だが、食べられる物ならある。
食材が尽きたその日、私は絵を描いていた。お菓子を食べようとしたが、もうお菓子も無い。困り果てた私は脱力した。するととある物へと手が伸びていた。自分でもビックリしたが、好奇心が勝ってしまった。そう、私の手が伸びた先は、友達と今日やる予定だった新品のオセロ。100均で買ったやつだ。
友達は今日、天へと旅立ってしまった。もちろん飢餓のせいだ。ショックよりも焦りが勝っていた。この状況をどうにかしなくては、と。
無意識にオセロを口へと入れていた。プラスチックらしい硬さを感じる。正直言って当時は不味かった。なんだか苦い。でも噛み砕き、飲み込んだ。これで当分食料には困らないと思い、気が楽になった。
気晴らしに散歩に行くことにした。もちろんオセロを持って。緑豊かな公園に行き、ピクニックのつもりでオセロを食べた。冷たい風が吹いたのに心は温まった。自分でもこの状況が分からない。とりあえず寝転んでみた。空気が心なしか澄んでいるような気がする。人間が少なくなったおかげか、と思うと自分は地球の迷惑なんだなと気が滅入りそうになる。でもそれでもいいや、って思うようになった。これはオセロのおかげか。
空が青い。緑がある。雲が白い。太陽が眩しい。当たり前なはずなのに当たり前を人間が壊していた。でもこれからは大丈夫。だいぶ減ったから。
動物にも植物にもそう伝えた。伝わってはいないだろうけど。
とにかく今は今の状況を楽しんだり生き延びたりしなければ。私はそう思い、人間に壊されていないオセロをまた1つ、口へと運んだ。
コメント
4件
これ好き