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焦点の定まらぬ虚ろな眼差しのまま、圭吾がぼぉっとしている。ハンカチをお湯で濡らし、それで体が拭いてはあげたが、卑猥で俺を誘うような匂いはなかなか取れてはくれない。いっそ家まで連れ帰って、このご馳走を最後まできっちり頂き尽くしたい所なのだが、残念ながら今日は家に親が居るから連れ込む事を選び取れなかった。
「大丈夫か?」
「……全然大丈夫じゃない」
ぼそっと呟いた圭吾の声はひどく掠れている。目尻は泣き腫らした感が濃厚で、人目に晒すには色っぽ過ぎだ。
(あぁ……もっと喰べたかったなぁ)
制服のボタンをとめ、身支度を手伝いながらそんな事ばかり考える。熟れた果実みたいな圭吾を前にして、喰べるのを我慢するだなんて俺には出来なかった。涙も唾液も精液でさえも、全て飲み尽くしたい。圭吾の体を味わう事が予想以上の喜びに溢れていて、一回シタ程度では微塵も満足出来ていない。
(圭吾が好きって事なんだろうな、コレは)
性欲が自覚出来るレベルで人一倍強いせいか、自身から溢れ出る圭吾への愛情全てがそっちの方へ突っ走ってしまう。まだ足りない、もっともっともっと——……制服を着せながら、この制服だっていつかは俺にくれないかなと思ってしまった。
間食用のパンだけでは済まず、とうとう体にまで手出ししてしまったが後悔は無い。ただこの先一生手放せそうに無いが、どうやったら圭吾の心を喰べる事が出来るのかが思い付かない。体から俺の方に堕ちてくれる様なタイプではなさそうなので、今後の関係性がどうなってしまうのか少しだけ心配だ。
「家まで送れよな。鞄持てないから」
「——うん!いいよ、もちろん」
「……帰りだけじゃなく、この先一週間は鞄持ちな。腰痛いし」
無理しやがってと、呟きながら圭吾が便器の蓋の上から重い腰をあげる。こんな場所で喰べようとしてしまったのは流石に失敗だったなと思ったが、『気持ちよかったなぁ』『また沢山したいなぁ』という考えで速攻上書きされた。
「……もうすんなよ」
「それは無理だなー、圭吾が美味しいのが悪い」
「俺のせいか!」
胸に裏拳をくらったが、普通に接しようとしてくれる気遣いが嬉しかった。
あぁ、圭吾を好きになって良かった。
どう思っているのか、どうしていきたいのか。
俺の事は好き?それとも、嫌いになった?
わからない事、訊いた方がいい事。
色々山積みだけれども、今は美味しいモノを摘み喰い出来た満足感で心は一杯だ。体の方は明日からじわじわ頂くとして、今はこの何気ない帰宅時間を楽しもうと、俺はのそのそとゆっくり歩く圭吾の背中を追いかけたのだった。
【番外編③・終わり】