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___『こんな傷、舐めれば治る。』
忠義のために何度となく敵を倒し、味方を庇って傷を作った主人公がそう言葉を放ったシーンで、俺はその漫画の表紙を見つめた。
「あーあ….もうひと世代早く生まれときゃ、こーいう言葉で女の子を撃ち抜けたんだろうなぁ…」
….なんてな。
____西暦3254年。つまり俺らが生まれた年。
日本の”ソレ”を初めとし、世界が変異に包まれた。
いつの時代も歩くこと、走ることを覚えた幼児には怪我が多い。しかし問題はそこではない。
「も〜まーた転んだの?かすり傷ね、舐めれば治るわ」
親が、つまずき転んだ子供を愛しそうに見つめながら冗談まじりにそう言った時だった。
言葉を真に受けて傷口を舐めた子供が、突然英語で話し始めたのだ。顔付きも身体付きも、10代半ば程度に激変したという。約5分経つとその子は元の姿に戻ったらしいが、当然両親は不気味と衝撃に包まれ、子供を病院に連れて行った。
医者は子供を診て、こう語った。
『まさしく突然変異』
だと。
そして、その幼児と同じ年代に生まれた世界中の子供に様々な変異が現れた。
・1度体外へ出た血液を再度体内へ取り入れること(自分の血を舐める、飲む等)が引き金となる
・変異時間には制限がある
・実年齢+5~10歳程成長した姿へと変異する
・変異している間、大小問わず何かしらの”能力”をもつ
通ずる部分はこの4つ。西暦3254年以降に生まれた子供は、1人として例外なくこの条件が当てはまっている。
__ソレから16年後、西暦3270年4月10日。
「っっだぁあ母さん!!!何ッで起こしてくんなかったのよ!!」
「やだっ何回も起こしたわよ!あんたがもう少し寝かせてくれーっていうから!」
「それでホントに寝かせる奴初めてだよ!!」
「無駄口叩く暇あるなら準備しなさいっ!」
「ごもっともだよ!!!」
俺は赤峙 真(セキジ マコト)。16歳。変異については…時間ねェからおいおいな!!
「行ってきまーす!!!!」
と両親に投げかけ、扉を開ける。っと忘れてた。それから、
「行ってくるな、実。」
立ててある弟の遺影に向かって挨拶をする。
(入学式は8:15〜だよな….学校までガンダして10分….クラス表も貰わなきゃだから….)
恐る恐る時計を見ると、針は8:00を刺そうとしていた。
「っっっべぇ!!!ダッシュ!!!!」
俺は風の子だと自分に言い聞かせながら走ったおかげで、何とか入学式には間に合った。
与えられたクラス表を見ながら指定の席に着く。クラスごとに座る場所が決まっているらしい。
「はァッ…はぁっ….」
体育館に着いてもなお肩で息をし続ける俺を見て、前に座っている女子が話しかけてきた。
「ふふっ…ねぇあなた、大丈夫?」
「えっあぁ、ごめんなうるさくて…!今朝寝坊しちゃってダッシュで来たから….」
「ふふ、そのくらいわかるよ。まだ飲んでない水あるからあげるね」
「え?!いいよそんな!!!そのうち落ち着くし!!」
「もー。いいから受け取って」
微塵も怒っていなさそうな瞳のまま女の子は頬を膨らませる。
(かっ…..かッわいいぃ〜…..)
「さんきゅ!」
ともらった水を飲む。…と、次第に脈拍が正常に戻っていき、それどころか1週間前から悩まされていた腫瘍レベルの口内炎がなくなっていた。
「え”….これ….市販の水じゃないよね…?」
「ごっごめんね….!!!これ実は…私の変異なの….!!!!」
「え??」
「気持ち悪いよね、、ほんとにごめんね、、。私目が良くって、さっき君が笑ったとき口内に傷がいっぱいあるの見つけて痛そうだったから….」
確かに、口内炎だけでなくギザギザの歯で傷つきまくった至る所が治っていた。
「まっっじかすげェな?!」
「へ…?」
「変異ってコトは君が作った??水なんだろ!治癒的ななんかかな?!どっちみちすげェ助かったよ、ありがとう!」
「う、うん…えっと安心してもらうために説明するね…!!私の血液変異は一言でいうなら”聖水”。血を取り込んでから30分の間、その日摂取した水量分指先から水を生成して出せるんだけどね、さっき君が言ったみたいに治癒効果があるの。」
1度生成した聖水は変異の制限時間が過ぎた後でも効力を失うことはないの!たくさん特訓してそうなったのよ と自慢げに笑う。
可愛い、、可愛いけどその前に、、
強すぎじゃねェ??
「すっげェまじで!!えっそれってさ、どのくらいの傷治すことできンの?!」
「えっと、、試したことがあるのは擦り傷、骨折とか食中毒、アレルギー症状、癌…とかかな。ある程度は治せるのおもう。」
….もし。もしこの子ともう少しはやく出会えていたら….。
「….そっか!まじですげェのな!あぁそういえば、君名前は?」
「水上 聖(みかみ ひじり)。よろしくね!」
「赤峙 真。よろしく!」
「ねぇ、そういえば赤峙くんの変異ってなあに?」
「____…俺の変異は___」