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【手紙を書けなくなった僕】 作 夢宮 楓
僕の薬指を切り、瓶に詰め込んだ。
あぁ愛しき君よ、これが僕の気持ちさ。
あぁ運命の悪戯よ、僕らはなぜ引き裂かれる。
『君からの手紙を読んだよ』
素晴らしく綺麗な字で、僕を愛してるなんて、全く、愛しくてたまらない。
『拝啓、啓介様 私は毎日毎日、あなたの素敵な指を眺めて、私はあいたい気持ちを、我慢しております。早くあいたい、そんな気持ちでいっぱいです。次はなに指を下さるのか、楽しみに待ってます』
あぁもう少しで僕の指は無くなってしまう、けれど愛しきこの気持ちは消えぬ消えぬと泣いている。
あぁ、僕も早く君にあいたい。
『拝啓、啓介様 この度も、薬指を私に下さり、ありがとうございます。私は嬉しく嬉しく思います。あぁ啓介様、あなたの指が八つ揃い、あともう少しで貴方様の全ての指が私の手に……、あぁ早く待ちきれない』
あぁ愛しき君よ、僕の手はもうなにも書けない、けれど最後の二つの指を君に送ろう。
『拝啓、啓介様 もうなにも書けなくなってしまわれたのね、けれど無事に貴方様の指は全て揃いました。あぁとても美しい……。私の全て、ありがとう……啓介様……』
あぁ、君の手紙をみるだけで僕は幸せだ。この気持ちを書いて送ることができないのは悲しいけれど、君に僕の気持ちが伝わったのなら僕はそれでいい。それでいいのだ。
『拝啓、啓介様 貴方の手紙が来なくなってから私は心が寂しくなります。ですが、貴方様は私のことを愛しておりますの?……私は心配ですわ』
あぁ、君への気持ちは、ずっと変わらないよと伝えたい……だが伝えられないのが、心が痛む、あぁ、どうにかしてでも君に伝えたい。
僕はもう……君に手紙を送れないのか……。
『拝啓、啓介様 貴方の手紙はもう一生こないのですね……私は理解いたしましたわ。けれど私は信じます。貴方様がどれだけ離れていても、手紙が送れなくても、私は永遠に愛して下さっていると信じてます』
あぁ、愛しき君よ、どんなに離れていても、僕を愛してくれるのか、あぁ僕も君に手紙を書けずとも愛しいと感じるこの気持ち、忘れはしない……。
忘れはしない。
終