ついに、ついに完成した!俺の研究によって生み出された、俺の夢が詰まった装置、[ドリームフォン](試作品第一号機)がついに完成した!
俺の名前は新妻聡(ニイズマサトル)。今のところ自称発明家のアパート住まいの28歳だ。
今は西暦2030年。俺には小さい頃から変わらない夢がある。過去に干渉をすることができる装置を発明するという夢だ。
きっかけは小学生の頃見たアニメだった。そのアニメの主人公は発明家であり、過去に事故で恋人を亡くしていた。その恋人が死ぬという運命を改変するために過去に行くことができる装置を発明して、恋人を助けに行くという物語だった。
俺はこれまでこの装置の発明に人生を注いできた。そのせいで周りから変人扱いされ、仲間はいないため一人で研究をすることにはなったのだが。
まぁ、そんなことはどうでもいい。早くこの装置、[ドリームフォン]の試作品を試してみよう!
このドリームフォンは円柱型の2本の装置で、2本のうちの1本を過去に送ることができる。そして過去に送った装置を受け取った人物と通話をすることができるのだ。
また、装置が通話を行う人物の姿のスキャンを行い、装置に搭載されているホログラムによって互いに相手の姿を見ながら通話をすることが可能だ。ただし、現時点ではこのドリームフォンは試作品、つまり未完成なので二つの制限がある。
一つ目は過去に装置を送る場所は自由に指定できず、現在俺がいる位置の過去にしか送れないという制限。
俺は一年前にこのアパートに引っ越してきて、詳しい話は知らないがその前にも誰かがここで暮らしていたらしい。なのでその人物に装置が渡ることになる。相当驚かれるだろうが、研究のためだ。堪えてもらおう。
そしてもう一つは送ることができる年数の限度が3年前、というよりは今から3年前にでしか装置を送ることができないという制限だ。
この3年という年数が、現時点の俺の研究成果の限界なのだ。もちろんこれからこれらの制限を無くせるようにしていきたいのだが、まずはこの試作品が正しく動くか試さなければならない。
俺はドリームフォンを起動させ、2本のうちの1本を過去に送る準備を始めた。準備が終わりしばらくすると、過去に送るドリームフォンが音も立てずに消えてしまった。もっと派手な演出を期待していたのだが仕方がない。
さぁ、上手くいったのだろうか。俺は過去の人物に繋がるはずの足元に置かれたドリームフォンを見つめていた。
“ビビィッッッー!”
装置の転送が完了したことを知らせるアラームが鳴った。とりあえず何処かにドリームフォンを送ることには成功したようだ。
ちゃんと3年前に送れたのか気になっていると、こちら側のドリームフォンのスピーカーから声が聞こえてきた。
「え?なにこれ?こんなのさっきまで無かったのに。」
人がいるようだ。俺はその人物にこう問いかける。
「驚かしてすまない。突然になり申し訳ないが、君がいる場所の住所と現在の西暦を教えてもらえないかな?」
「えっと、〇〇県〇〇市〇〇町〇〇-〇〇、ムーンハイツです。現在の西暦は…あっ!2027年です。」
相手の返事を聞き俺は歓喜した。ちゃんと成功している。喜びを噛み締めていると、ホログラムが起動し、制服を着た少女が映し出された。
ロングヘアで目が大きい、可愛らしい少女。女子高生だろうか。私は彼女にこう伝えた。
「信じられないかもだが、俺は君からすると3年後にその部屋で暮らしている。その装置は時間を超えて通話ができる装置なのさ。君にも俺の姿が見えているかい?」
しばらくすると返事が返ってきた。
「はい、このホログラム?みたいなので見えてます。ちょっと…信じられないんですけど、本当に未来から来たんですか?この装置。」
まぁ、そうだわな。いきなりこんなこと言われても信じられるわけがない。
俺は彼女に自分は発明家だということ、この装置はドリームフォンという名前で試作品第一号だということを伝えた。そして俺は彼女に提案した。
「まぁ、とりあえず互いに自己紹介しようよ。君がよければこれから俺の実験に付き合ってもらいたいんだ。」
俺はこう続ける。
「俺は新妻聡。職業は発明家。28歳独身だ。君の名前も聞かせてくれないかい?」
彼女はこう答えた。
「倉本燈(アカリ)、17歳、高校生です。今は受験勉強で忙しいのですが、実験の手伝いってどんなことを?」
彼女の問いに俺はこう答える。
「ただ俺とその装置を通して通話をしてくれるだけでいいよ。通話を記録して資料として残したいと考えているんだ。ドリームフォンをより完璧なものに仕上げるためにね。」
すると彼女は考えているような素振りを見せながら答えてくれた。
「受験勉強で忙しいんですけど、毎日30分ぐらいなら。勉強の休み時間にもなるしいいですよ。」
俺は「ありがとう」と返すとあまり勉強の邪魔をするのは申し訳ないと思い、明日16時にまた通話をしようと約束をしドリームフォンの電源を切った。
こうして俺と倉本燈との時空を超えたコミュニケーションが始まったのであった。
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