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短編集「夢」

4 - 第4話 とある発明家のドリームフォンとホログラム少女②

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2025年06月05日

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~次の日~ 


俺がドリームフォンを起動すると、すぐにホログラムによって倉本燈の姿が映し出された。ちゃんと準備して待っていてくれていたようだ。そして会話は彼女から始まった。


「こんにちは。その…まだ信じれてないんですけど、聡さんは今から3年後にいるんですよね。この3年間で何か大きな出来事とかありました?」

俺は彼女の問いにこう返した。

「やっぱりそういうこと気になるよな。すまないが外の状況はほとんどわからないんだよ。なんせ大学を卒業してからずっとこもって研究ばかりしてたからね。」


俺のこの言葉に嘘はない。弟が大企業に勤めており親から送られて来る金を研究費に回しているため働いてなく、研究材料は宅配便、友達や研究仲間もいない。

そのため俺はここ数年、周りの環境を遮断し一人で生活してきた。俺の答えに対し彼女はこう言った。

「そうだったんですね。聡さんも大変そう。実は私も最近はずっと部屋にこもって勉強ばかりしてるんです。志望校の〇〇医療大学のハードルがなかなか高いので。」

そうか。彼女は受験生だったな。俺もそこそこ頭の良い大学を出ているが、大学受験は苦労したものだ。

俺は彼女にこう提案した。

「実は俺は〇〇大学を出ている。君の志望校と同じぐらいの難易度だろう。研究を手伝ってくれているお礼に、俺が勉強の手伝いをしてあげようか。」

俺の提案に対し彼女は笑顔で答えた。

「アリですね。それなら長く通話できるし、お互いwin winですよね。私も友達いなくて、一人で勉強するのも寂しかったから。」


それから俺は彼女ともに受験勉強をした。彼女と話しているうちになんとなく、俺と彼女は性格が似ている気がしてきた。周りとあまり馴染むことができず、一人で四苦八苦してしまうタイプ。


2時間くらい経っただろうか。ドリームフォンの通信が悪くなり始めてきた。長時間の通話は負担がかかってしまうようである。今日はこれぐらいで終わるかと彼女に提案すると彼女はこう言った。


「今日はありがとうございました。誰かと一緒に勉強するのも楽しくていいですね。それと、私のこと、「君」じゃなくて「アカリ」って呼んでください。なんか距離感じるので。」 

確かに「君」って呼び方は距離を感じるか。俺はこう返した。

「分かったよ。次からはアカリって呼ぶことにする。また明日ドリームフォンを繋げるからよろしくな。あまり追い込みすぎず頑張りなよ。」

アカリは「分かりました」と返し、通話を終えた。今日は長い通話をすることができたから満足だ。

だが俺には気になることがあった。通話中、彼女以外の気配は無かった。彼女は一人暮らしをしているのだろうか。たまたま一人しか家に居なかっただけか?彼女についてもっと知りたいし、聞いてみよう。

 

 

~5日後~

 

 あれから俺たちは毎日2時間ぐらい一緒に受験勉強をしている。アカリの俺に対する態度は柔らかくなり、アカリの境遇も分かってきた。


彼女の家は父子家庭で一人っ子。小さい頃に母は病死し、父と二人でこれまで暮らしてきた。父は経営職だが夜遅くまで仕事をしているらしい。そして実家から高校が近いアパートにアカリは一人暮らしをしている。

彼女の夢は医者であり、そのために良い大学に入ろうと頑張っているようだ。今日も彼女と勉強を頑張っていると、鍵の開く音がして誰かが入ってきた。彼女はこう言った。

「多分、5つ上の従兄弟の京太くんがきたんだと思います。彼、うちの鍵を持っているので。」

従兄弟がいたのか。しばらくするとホログラムに青年の姿が浮かび上がった。パーマがかかった金髪の頭、耳にはハート型のピアス。そして奇抜な服装。俺がいうのもなんだが真面目に働いてなさそうな見た目である。

青年はドリームフォンの存在に気付いたようで、こう言った。

「これがアカリが言ってたやつ?マジでやばそうな装置じゃん。このおじさんと話してるんだ。」

アカリは彼にドリームフォンの存在を伝えていたようだ。アカリはこう返す。

「あっ…そうだよ京太くん。えっと、これがドリームフォンで、この人が聡さん。頭が良くって受験勉強手伝ってもらってるんだ。」

なんか会話がぎこちない気がするが、あまり仲良くないのか?俺はこう言った。

「初めまして京太くん。アカリから俺の話は聞いてたみたいだね。驚いただろう?」

京太はこう返した。

「まぁ、正直アカリから聞いた時は勉強のしすぎで頭おかしくなってんじゃねって思ったけど、見た感じガチっぽいっすね。ネットにあげたらバズりそうだな。」

俺はこう返した。

「いやネットにあげるのはやめてくれ。混乱を招きそうだし、別に有名になりたくてドリームフォンを作ったわけじゃない。そもそも誰も信じんだろう。」

俺の言葉に対しアカリがこう言った。

「そ、そうだよ京太くん。私も今は勉強に集中したいし。」

アカリの発言に対し京太は「つまんな」と言い捨て、部屋を出ていった。アカリはこう言った。

「私、京太くんのことちょっと怖いんですよね。たまに暇つぶしだって家に来るんですけど、お金をせびられたりして。彼、ここら辺じゃ有名なヤンキーだったんですよ。」

まぁ、見た目通りのやつってことか。彼に勉強を教えてもらうのは無理そうだな。その後勉強をしていると、やはりノイズが出始めてきたので今日の通話は終わることにした。通話の終わり際、アカリは俺にこう言った。


「大学受験まで後二ヶ月ぐらいですけど、ずっと受かるか不安でした。聡さんと勉強し始めてからは気分も落ちついてきて、その、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」


俺は「こちらこそ」と返し、通話を終えた。アカリを取り巻く環境は恵まれてはいない。それでも医者になるという夢を叶えるために頑張っているのだ。俺が彼女の支えにならなければ。もちろん研究第一だがな。


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