TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

二人は食事を終えると店を出た。

車に乗ると海斗が言った。


「この先の海沿いの公園から飛行機の離着陸が見えるんだ。行ってみる?」

「飛行機が見られるの? 行きたい!」


美月が嬉しそうに言ったので、


「よしっ!」


海斗はすぐに車のエンジンをかけた。


公園まではすぐだった。

駐車場に車を停めると、二人は手を繋いで公園奥の海側まで歩いて行った。


公園内では何組かのカップルが既に夜景を楽しんでいた。

するとちょうど空港に飛行機が着陸しようとしていた。

飛行機の轟音と共に飛行機の航跡が夜空に伸びていく。

それを見た美月は、


「うわぁ、夜景と飛行機が重なってすごく綺麗!」


と感動していた。


海斗はここ最近ずっとスタジオにこもる日々だったので、外の空気をゆっくり吸うのは久しぶりだった。

夜景を見に来るなんていつ以来だろう? そんな事を考えながら、美月の喜ぶ顔に目を細める。


「今夜は月が見えないね」

「今は新月を過ぎたあたりかな? 夕方頃に沈んじゃったかも」


美月はそう言った後続けた。


「あのね、私の父と母が知り会った時も満月の夜だったんですって」

「へぇ。俺たちと同じだね」

「それだけじゃないのよ。望遠鏡を覗いている父に母が声をかけたらしいんだけれど、なんて言ったと思う?」

「うーん、なんだろう……もしかして?」

「そう。母は父に『満月ですか?』って言ったの」

「かけた言葉まで一緒か。すごい偶然だな」


海斗はかなり驚いている様子だった。そして、こう言った。


「美月のお父さんが、俺達を引き合わせてくれたのかな?」

「そうかも」


美月はとても優しい表情で言った。

美月の穏やかな笑みを見た海斗はとても満たされた気持ちになる。


(彼女が笑っているだけで幸せな気持ちになれる。こんな事って今までなかったな)


海斗はそう思った。


二人は夜景を眺めながらしばらくとりとめもない話をした。

一時間ほどが過ぎた頃、周りのカップル達が帰り始めたので海斗が美月に言った。


「そろそろ帰ろうか?」


美月が頷くと、二人は手を繋いで駐車場へ戻った。



こうして暗い夜道を歩いていると、葉山や城ヶ島へ二人で行った時の事を思い出す。

つい最近の出来事なのに遠い昔の事のように思えるから不思議だ。

会う度に絆が深まっていくのを互いに感じていた。

この夜の散歩が永遠に続けばいいのに…二人はそんな風に思った。


車がアパートの前に着くと美月は海斗の方を見て言った。


「今日はありがとう。綺麗な夜景も見られて楽しかった」


すると海斗は美月を引き寄せて少し激しいキスをした。

美月は海斗に身を任せながらキスを受け入れた。

その後二人は名残惜しそうに離れると、海斗が美月に言った。


「おやすみ。またね」


美月は車を降りると手を振って海斗の車を見送った。

月が見えない夜空には、夏の匂いが混じった風が吹いていた。



それから海斗のレコーディングはいよいよ終盤を迎え、スタジオに入り浸りの日々が続いていた。

今回のアルバムはかなり自信があった。

すべてがイメージ通りに仕上がったと思っている。

いつもは歌詞で苦労する海斗だが、今回あまり悩む事なくスムーズにいった。

美月と出逢って以降仕事へのやる気が満ちている。それがレコーディングにも良い影響を与えていた。


一方、美月も仕事の合間に少しずつ作っていた海斗へのネックレスがようやく完成した。

地球照をモチーフにしたネックレスは、地球照の部分に深い陰影をつけてロックバンドのボーカルが身に着けても違和感がないような重厚感を持たせる。ネックレス本体の鎖は少し太めのシンプルなロールチェーンにした。そうする事でトップが引き立つ。

初めて作った男性用のネックレスにしてはなかなか満足の行く出来栄えだった。



そしてその週末、レコーディングは全て終了した。

今回は海斗の熱意に応じて、メンバー全員が納得のいく演奏が出来るまで何度もやり直しをしてくれた。

そして海斗の歌も何度も録り直しをし、完璧な歌声をCDに焼き付けることが出来た。

アルバムの完成度は想像以上の出来で、スタッフの誰もが納得するものに仕上がった。



新しいアルバムは『earthshine(地球照)』と名付けられた。



この日は、メンバーとレコーディングスタッフ総出で近くの居酒屋で軽く打ち上げが行われた。

もちろん海斗も参加しスタッフ全員に感謝の気持ちを伝えた。

スタッフの中にはデビュー当時から世話になっている人も多い。海斗のバンドの成長をずっと見守って来てくれた人達だ。

海斗はそんな気心知れた仲間達と久しぶりに美味い酒で乾杯した。

この作品はいかがでしたか?

222

コメント

2

ユーザー

海斗さぁん🩷アルバム完成おめでとう👏 美月チャンへの気持ちもいっぱいこもったアルバム✨私も聴きたい🥹🍀

ユーザー

会えない中でもそれぞれが充実した日々を送り、共に成長していける。できる様で中々できないこと。 2人はそれだけ結ばれるべき2人なんだなぁって思いました✨ 次会える時はもっともっと愛しく感じるんだろうな💗

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚