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明花永(あかな)
12
#普通
野々さくら
202
ドラゴン店長
30
一方その頃。信愛は今もなお、さくらに取り憑いている佳苗と静かに話を続けていた。
「そっか・・・」
信愛は寂しそうに微笑みながら、優しく問いかける。
「ずっとひとりぼっちだったんだね」
「うん・・・」
「寂しかったよね?」
佳苗は小さく頷く。
「うん・・・寂しかった」
その言葉に、信愛は胸を締めつけられる思いだった。
「佳苗・・・」
佳苗は俯いたまま、ぽつりと呟く。
「でも・・・」
「ん?」
少しだけ間を置き、佳苗は震える声で口を開いた。
「やっぱりお母さんには、もう会えないのかな?
私の事・・・嫌いになっちゃったのかな?」
信愛はすぐに首を横へ振る。
「そんな事ないよ!絶対に会えるって! ね?」
「う、うん・・・」
信愛はふと、気になっていたことを尋ねた。
「でもさ、一人だったんなら何を
食べてたの?食べ物とかあったの?」
佳苗は何でもないことのように答える。
「ティッシュ食べてた」
「え!?ティッシュ!?
ティッシュって、あのティッシュ?」
「うん・・・それしか
食べ物がなかったから」
その一言に、信愛の表情が凍りつく。
「それしかって・・・そんなのって」
その時、信愛の脳裏に小学生の頃ニュースで見た、ある事件が蘇る。
家で放置され、餓死した女の子のお腹の中から、大量のティッシュが見つかった事件。
(も、もしかして・・・)
信愛は慌ててスマホを取り出し、記憶を頼りに事件の記事を検索し、画面を何度もスクロールする
(あっ!あった! これだ!)
記事に書かれていた被害者の名前。
佐藤佳苗。
信愛がまだ小学生だった頃に報じられた事件だった。
(って事は・・・佳苗は少なくとも
10年くらい、一人ぼっちで・・)
胸が苦しくなる。
さらに記事を読み進めた信愛は、ある一文に目を止めた。
佳苗の母・佐藤美波は既に亡くなっておりこの世には居ない。
信愛はゆっくりと顔を上げ、佳苗を見つめる。
佳苗は今もなお、悲しげな表情で、玄関の方をぼんやりと見つめていた。
まるで、帰ってくるはずの誰かを待ち続けるように。
おそらく佳苗は、自分が既にこの世の人間では無い事、そしてそれは母も同じであると言う事に気づいていないのだろう。
だから今もこうやって、帰ってくるはずのない母を待ち続けているのだ。
そう確信した信愛は、大きく息を吸い込んだ。
「佳苗?」
「なに? 信愛?」
「落ち着いて聞いてね?」
不思議そうな顔で首を傾げる佳苗を見つめながら、信愛は拳を握りしめ、覚悟を決めた。
「佳苗はね?もう・・・死んじゃったの」
「え?」
佳苗は目を丸くし、不思議そうに首を傾げた。
「何変な事言ってるの?生きてるよ?
こうして信愛とお話ししてるじゃん」
信愛は静かに息を吸い込み、できるだけ優しい声で言う。
「それはね?私だからお話出来てるの」
「どういう事?」
「佳苗ね? もう死んじゃって幽霊になっちゃったの」
「ユーレイ?」
「幽霊は普通の人には見えないの
でも私は昔から幽霊が見える子供だったの
だからこうやって佳苗とお話出来てるの」
佳苗は黙り込んだ。
信愛はスマホを取り出し、画面を佳苗へ向ける。
「これ! 見える?」
そこには
『佐藤佳苗ちゃん育児放棄事件』
そう記されたネット記事が映し出されていた。
佳苗は画面を見つめ、小さく呟く。
「なに、これ?」
「佐藤佳苗ちゃんって、佳苗の事だよね?」
「うん・・・」
「ここにはね?佳苗のお母さんは
もう死んじゃったって、そう、書いてあるの」
「え・・・お母さんが?」
佳苗は絶句したように言葉を詰まらせる。
信愛は少しだけ微笑み、安心させるように言った。
「でも安心して?
私が必ず佳苗のお母さんを──」
「嘘つき・・・」
その一言に、信愛の言葉が止まる。
「え!?」
佳苗は首を振りながら叫んだ。
「信愛・・・言ったもん!
お母さんに絶対に会えるって!
そう・・言ったもん!」
「待って佳苗! 私の話を聞いて!」
しかし佳苗の耳には届かない。
「嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき」
その瞬間、さくらの体から禍々しい気が溢れ出した。
「ううっ・・何・・・これ」
信愛は胸を手で押さえ、苦痛に歪んだ表情でその場にうずくまる。
(ま、まずい・・・
佳苗が悪霊になりかけてる・・・
このままじゃ、さくらの身が危ない)
信愛は震える手で胸元を押さえながら、必死に念じた。
(茜・・・早く・・来て)
コメント
1件
もう第11話か〜!毎回ドキドキしながら読んでるよ😭💕 今回の信愛、佳苗に真実を伝えるシーンが本当に切なくて…「ティッシュ食べてた」って告白、胸がギュッてなったよ…。しかもお母さんももういないって知って、なお母を待ち続ける佳苗の姿がもう…😢💔 最後の「嘘つき」って叫び、佳苗の悲しみと信頼の裏切り感がすごく伝わってきて、次の展開が気になりすぎる!!茜、早く来てあげて〜😭🙏✨