テラーノベル
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黒を基調とした彼の自宅リビングは、壁紙を始め、家具も全て黒で統一されていた。
ガラスのスライドドアが南向きに一面に広がり、その奥は広いバルコニー。
右手にはダイニングテーブルと、奥にキッチン。
左手にはテレビ、ソファーセット、パソコンとデスク。
リビング入り口の扉の右側には、もう一つのドアがあった。
無駄な物が一切ない、シンプルな住まい。
落ち着いているようで、どこか近寄りがたい雰囲気を、美花は感じてしまった。
黒は、何物にも交わらず、染まらない色。
彼の性格、といえばいいのだろうか、それが随所に滲み出ているような気がした。
(そういえば、けいトンの車も黒だったよねぇ……)
美花はリビングのドアの前で佇み、控えめに見回していた。
「美花。そんな所に突っ立っていないで、入るといい」
コンビニエンスストアで購入した物を、冷蔵庫にしまい終えた圭が、ゆっくりと近付いてきた。
「すごい部屋……だね……」
「そっ……そうか?」
「だって、立川駅のすぐ近くのマンションに住んでるんだもん。すごい、としか言いようがないよ。それに、お部屋も家具も…………真っ黒……」
妙な居心地を覚えた美花が、目尻を下げながら困惑気味に答える。
「…………単に、黒が好きなだけだ」
圭が美花の手を引くと、全面ガラス張りのスライドドアの前へ促していく。
目の前に広がる夜景は、多摩地区とは思えないほどの、華々しい夜景。
宝石が零されたような光の粒子に、美花は『わぁっ』と感嘆の声を零した。
「家でこんな夜景を…………けいトンは毎日…………見てるんだね……」
「なぁ美花……」
彼女の身体が、背後から圭の腕に絡められ、心臓が鷲掴みにされた。
壮麗な夜景に重なるように、ぼんやり映し出されているのは、後ろから美花を抱きしめている圭。
彼女の柔らかな頬が、彼の唇にそっと触れられる。
「俺の事…………『圭』って……呼んでくれ……」
掠れた声音で囁かれた美花が、細い身体を僅かに震わせた。
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