玄関先で怜と奏が、どちらからともなく手を取り合い、侑と瑠衣に挨拶をする。
「侑、急で悪かったな。今度はゆっくりお邪魔させてもらうよ。九條さん、またね」
「瑠衣ちゃん、響野先生、お邪魔しました」
二人が手を振って侑の自宅を後にする所を見届けると、リビングへ戻り、ソファーに並んで腰を下ろした。
「それにしても、あのカップルは本当に仲がいいな。いつも思うが、仲が良過ぎて……見てるこっちが恥ずかしくなる」
彼が大分伸びた癖のある前髪を掻き上げ、フッと微かに笑うと、瑠衣が突然侑の首に腕を回してきた。
「せんせ……」
「瑠衣? どうしたんだ?」
瑠衣は彼の首筋に顔を埋め、耳朶に囁く。
「…………私を……抱いて」
瑠衣の一言に、侑は静かに目を見開いた。
思いもしなかった事を彼女に言われ、動揺している自分がいる。
拉致されていた時、瑠衣は不特定多数の見知らぬ男たちに穢されたばかりだというのに、トラウマになっていないのだろうか?
侑がその事を彼女に伝えると、どこか懇願するように言葉を繋いでいく。
「先生に抱かれたら…………全部忘れられる……」
「…………しかし……そんな簡単な問題ではないだろ?」
侑も彼女の身体に腕を回し、背中をそっと撫で続ける。
「先生…………抱いて。私を抱いてよっ……!」
瑠衣は感情が昂ってきたのか、表情を歪ませながら強めの口調で侑に訴えた。
「それとも、他の男たちに中出しされて汚れ切った私なんて抱けない?」
「瑠衣……そういう事では——」
「先生も避妊しないで私の中に出して抱いて!」
「瑠衣!」
彼女は侑の言葉が言い終わる前に、興奮したままとんでもない事を口にし、彼は堪らず語気を強めると、瑠衣は彼に顔を向けてクシャクシャにさせながら泣き喚いた。