テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
「今から10年前の2015年に、天縁教団が
管理運営していた『学校法人天縁学園高校』
そこの野球部の部員による度重なる
『暴力事件』が明るみになったんだよ」
忍の説明に、信愛が目を丸くする。
「暴力事件?」
「ああ、噂で聞いたことあるな」
焔垂が記憶を辿るように口を開いた。
「噂って?」
茜が焔垂な尋ねる。
「天縁学園の野球部って、今までに何人ものプロを
輩出してる野球の名門校だけど、先輩による
後輩への行き過ぎた指導が有名だったって」
「そう、過去にはそのしごきが原因で
死亡した部員まで居たんだよ」
「うわぁ・・やっばっ・・・」
茜が思わず顔をしかめる。
朝陽も表情を険しくした。
「死亡って・・・それ暴力事件
じゃなくて殺人事件じゃ無いですか」
「ゴミの集まりじゃん」
茜が吐き捨てるように言うと、さくらも信じられないといった様子で呟いた。
「そんなにやばかったんだ、天縁学園の野球部って」
「元々は布教活動の一環として
発足されたのが始まりなんだけどね
経済効果が数億円規模だったそうなんだ」
忍は淡々と説明を続ける。
「だから教団も、なんとか財源を確保するために
暴力事件を黙認して、隠し通していたんだ」
「あぁ、なるほど」
茜は納得したように頷いた。
「宗教団体が何で学校の運営なんかしてんの?
って思ったけど、そういう理由があったんだ」
しかし、忍の話はそこで終わらなかった。
「しかし、それが部員の保護者からの通報や内部告発で
2015年に世間の目に晒されてね。それが原因で
高野連から除籍処分を言い渡されてしまったんだよ」
「まあ、当然ですよね」
信愛が冷ややかに答える。
「お金の為に生徒を見殺しに
したんだから当たり前ですよね」
その言葉に誰も反論しなかった。
だが、茜はふと眉をひそめる。
「でもさ?そんな暴力事件が、なんで
2015年になるまでバレなかったんだろ?」
茜の疑問に、さくらも頷いた。
「そうだよね・・・死んだ
部員まで居たんなら尚更だよね」
普通なら、一人の生徒が命を落とした時点で大きな問題になっているはずだ。
それが何年もの間、表沙汰にならなかった。
忍は二人の疑問を予想していたかのように、静かに口を開いた。
「それは天縁教団が、天縁学園だけじゃなくて
医療施設・天縁総合病院の管理も行っていたからさ」
「どういう意味ですか?」
茜の表情から、先ほどまでの軽さが消える。
首を傾げる一同に忍は丁寧に説明する。
「暴力事件って、被害者と加害者が居るよね?」
忍が問いかけると、信愛は小さく頷いた。
「まあ、そうですね」
「じゃなかったら事件じゃないし」
茜が当然のことだと言わんばかりに続ける。
「被害者が居るって事は
病院で治療しなきゃいけないよね?」
「そりゃ、まぁ──」
そこまで聞いたところで、焔垂が何かに気づいたように声を上げた。
「あ!そうか!そういう事か!なるほど!」
「分かったかい?」
忍に促され、焔垂は自分の考えを口にする。
通常、野球部内で暴力事件が起き、被害者が治療が必要なほどに怪我をした場合、病院で治療しなければならない。
それが通常の流れだ。
しかし、普通の病院で治療すれば、そこから足がついて世間に野球部内の不祥事がバレてしまう。
しかし、その治療を身内が管理している病院で行うため、世間にバレる事なく、部員の怪我を内々に処理できた。
そのため2015年になるまで明るみにならなかったのだ。
「その通りだ」
朝陽の言葉に忍が頷く。
「うわぁ、ヤバ過ぎますね・・・」
あまりにも徹底した隠蔽体制に、朝陽は顔を引き攣らせた。
だが、茜は別の疑問を抱いたらしい。
「でもそんなヤバい団体なら、失踪事件に
関与してたとしても不思議じゃない
って思っちゃうけど・・どうなんだろ?」
「それに関しては、世間の声も君と同じだったよ」
忍は静かに答えた。
「実際に野球部の暴力事件が明るみになった時に
一時的ではあるけど御船愛子の名前も挙がっていたんだ
その時もネットの声は、今の菅生さんと同じような教団関与を疑う意見だったよ」
「ですよね」
茜が納得したように頷く。
すると、さくらが少し考え込むように口を開いた。
「御船愛子さんは霊視で100%事件を解決してたって実績があるんだし、天縁教団が関わってるって言った事件だけ間違いでした!なんておかしいですからね」
「て事は、やっぱり天縁教団は
事件に関与してたんでしょうか?」
朝陽の問いに、忍はすぐには答えなかった。
「それに関しては今だに謎に包まれてる」
御船愛子はメディアから姿を消し、天縁教団も事実上の解体に近い現在。
真相を知る手立ては、もはや無いに等しいという。
「そうですよね・・・」
信愛がどこか釈然としない表情で呟く。
「真相は闇の中ってヤツか・・・」
焔垂の言葉に、忍は静かに頷いた。
「そういう事になるね」
そして一通り話し終えた忍は、信愛たちを見回した。
「と、まぁ、俺が知ってるのは
これくらいだね。 どうかな?参考になったかな?」
「はい!ものすごく参考になりました
貴重なお話ありがとうございました」
信愛が丁寧に頭を下げる。
忍は穏やかな笑みを浮かべた。
「後は馬場に任せるよ」
「馬場さん?」
信愛は、忍のいきなりの龍河へのバトンタッチに首を傾げる。
コメント
1件
読了しました。第242話、天縁学園の闇が忍さんの口からしっかり語られていて、ゾッとしつつも引き込まれました。特に「治療を身内の病院で内々に処理していた」という隠蔽の仕組みが生々しくて、本当にあり得そうな怖さがありますね。茜の「でもこんなヤバい団体なら失踪事件に関与してたとしても不思議じゃない」という言葉、読者の代弁みたいでグッときました。この過去の事件と今の失踪事件がどう繋がるのか、続きが気になります!