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三月最初の金曜日。
圭は早めに出社すると、スマートミュージックがインストールされているスマートフォンのデモ機と、簡易的な取り扱い説明書、インタビュー用の書類を準備した。
この日は、圭と柏木、女性社員一名と、アプリを制作した技術スタッフのリーダーが立ち会う。
圭以外のメンツは、ある程度DTMの事が詳しいせいか、どこかソワソワしているように見えた。
Hanaが来社するのは十三時。
午前中は、部内会議を開き、今日の最終確認と、デモ機の動作確認を行なった。
昼休みは、少し早めに入り、圭は久しぶりに柏木と一緒に社員食堂でお昼を食べた。
「懐かしいな。葉山が副社長になって以降、ほとんど顔を合わせる事って、なかったし」
「…………ああ。そうだな」
「まぁ…………葉山も色々あったんだろうが。まずは、今日のHanaさんの案件だ。気合い入れていくぞ」
「了解」
二人は、急いで食事を摂り、一階のロビーへ向かった。
十二時五十分に、受付の横に到着したものの、まだHanaらしき人物は来社していない。
「ヤバい。緊張してきた……」
「部長、しっかりして下さいよ……」
柏木がボソリと呟くと、圭が呆れつつも、軽くツッコミを入れた。
圭と柏木は、正面玄関をじっと見据えながら、Hanaの到着を待つ。
すると、ダークネイビーのパンツスーツに身を包んだ、明るい茶色のストレートロングヘアの女性が、社屋に入ってきた。
(…………ん? この女……見覚えが……)
圭が、クールな奥二重の瞳を、微かに丸くさせる。
女性は、受付を済ませると、来社許可証を首に掛け、こちらに向かってきた。
「初めまして。Hanaと申します。よろしくお願いします」
Hanaは、深々と一礼すると、柏木と圭に視線を配らせる。
圭は、Hanaと視線が交わった瞬間、瞳が驚きの色に染まった。
Hanaもまた、彼を見て、薄茶の瞳を見開かせている。
「…………き……君……」