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「…………え? おっ……おにーさん……」
Hanaも、ポカンとした表情を浮かべつつ、消え入りそうな声音で呟く。
DTM界で有名人のHanaは、『家庭料理 ゆき』の娘、美花だった。
圭と美花の表情が固まり、そんな様子を見た柏木が、それぞれに視線を向ける。
「え? お二人とも…………知り合い……です……か……?」
柏木も、呆気に取られながら、二人を交互に見やっている。
「あっ……ああ…………まぁ……な……」
「ええ……まぁ……顔見知り…………です……ね……」
圭と美花が、顔を引きつらせて、互いに乾いた笑いを浮かべている。
「そ……それではですね……さっそく案内させて頂きますね……」
微妙な雰囲気の中、柏木が場を取り直すように声を掛けると、三人はDTM事業部へ向かった。
圭が美花、もといHanaをDTM事業部内の会議室に案内すると、名刺を手渡す。
「改めまして、Hanaさん。今日はお忙しい中、ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツにお越し頂き、ありがとうございます。DTM事業部、部長の柏木と申します」
「同じく、DTM事業部、課長の葉山と申します」
今日の案件に対応する二人の社員も、Hanaに名刺を差し出した。
「すみません、私、名刺を持っていなくて……」
Hanaは、困ったように眉尻を下げながら、ペコリと頭を下げた。
「いえ、大丈夫ですよ。どうぞお掛け下さい」
圭が営業スマイルを見せつつ、Hanaに座るよう促した。
「では、さっそくですが、弊社が開発中のスマートフォン向け楽曲制作アプリ『スマートミュージック』について、説明させて頂きます」
柏木がHanaの前に、スマートフォンのデモ機と、簡素な取り扱い説明書を差し出した。
机の上に置かれているデモ機と説明書を、俯き加減で、Hanaは凝視している。
「どうぞ、手に取りながら、説明書をご覧下さい」
固まったような状態のHanaに、圭がフォローするように、営業向けの笑顔を見せながら声を掛ける。
「…………はい」
緊張しているのか、それとも、圭に身バレしたのが恥ずかしいのか、Hanaは、デモ機と説明書に視線を落としたままだった。
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