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「ちょっと質問してくる」
そう言って静かに席をたったのは善逸だった。
さっきまであんなにうるさかったのに。
最近、善逸の様子がおかしい。
悲鳴嶼さんの稽古の時からだ。
さっきみたいにいつも通りにしている時もあれば、今みたいに急におとなしくなったりする。
一体善逸に何があったのだろう。
ー本堂にてー
いつのまにか手を止めていたことにハッと気づく。
自分は今何を考えていたんだろう。
「うっ」
急に視界が歪む。
胸が痛む。
膝に力が入らなくなって床へたり込む。
少し落ち着いてきた時、
「キョウ!鬼殺隊の人が裏で待ってるぞ」
兄に呼ばれた。
「中に…入れてあげ…て」
「分かった。呼んでくる」
何となく察してくれたのだろうか、兄は快諾してくれた。
「連れてきたぞ」
兄の隣には、目立つ金髪の隊士がいた。
さっき来た自分とあまり歳の変わらなそうな人。
「ありがとう」
「それじゃ俺は行くから」
そう言って兄は去っていった。
「あの。えっと、どうかされましたか?」
「心臓が悪いんですか?」
「えっ」
何で分かるんだろう。
耳がいいのか。
確かあの竈門禰󠄀豆子の兄は鼻がすごくきくって聞いたからその部類?
「心音が不規則になったりしてるので」
この金髪頭の人ってこんな雰囲気だったけ?
「とりあえずこちらに」
そう言って、舞台の中心へと誘導する。
「唐突ですが、最近何かありましたか?」
「まあ……色々と」
「鬼舞辻無惨に会った事は?」
「俺は無いけど…炭治郎は」
「そうですか」
「柱って良いな。選ばれた存在で」
不意に彼はそう漏らす。
「俺なんか結局爺ちゃんが居なきゃ何も出来なかった」
「人は見かけによらぬものです」
「私なんか、れっきとした実力なんてありません」
「そんなわけないでしょ。柱なんんだから」
「いいえ、私は元から体が弱いので、このままだと一刻も動き続けることは不可能です。それに、出せる技の見返りが大きい」
「それでもうあなたは私より実力があると証明できるでしょう。この前の遊郭での上弦の陸の戦いでも手柄を立てたそうですし」
「それを言ったら、霹靂一閃だって見返りは大きい」
「まだ言うんですか。そんなに自分を卑下してはいけません」
「でも俺は一つの型しか使えない」
「そんなのは関係ありません。結果爪痕を残せているなら、何かを成し遂げようとほんの少しでも思ているのならいいんです」
「実力がどうだこうだじゃない、想いが全てを創るんです」
なんだかんだ、最後まで聞いてくれた。
自分は何もできてないくせに偉そうだったかもな。
何だか急に気まずくなって、話を逸らした。
「課題について質問がないのなら戻ってください。稽古の時間が長引きますよ!」
「じゃあ」
そう言って去っていった彼の雰囲気が、少しはっきりとしたものになった気がする。