テラーノベル
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しばらくすると寝息が聞こえてきた。
どうやら寝てしまったようだ。
子供っぽいところは変わっていなかった。
うずくまって泣いてしまうところも、俺を見た時、親を見つけたかのような表情になったのも、全部子供っぽく、それでいて十二村らしい行動だった。
体制を変え、俺の膝に十二村を寝かせる。
いわゆる膝枕というものだ。
多分、十二村はやってもらったことがないんじゃないかな…なんて考える。
十二村の頭を撫でる。
サラサラでふわふわな髪は触っていて心地よかった。
感覚としては猫か犬を撫でているみたいだった。
静かに規則的な寝息をたてて十二村はまだ眠っている。
俺はタヒんでから、地上の様子……というか十二村の様子を見ていた。
そこに俺がいるかのように振る舞い始めた十二村を見ていて、この選択は間違いだったのだろうかと思う。
十二村が笑っていればそれで良かったのに…。
机の上に置いてあった精神安定剤。
あれは俺も知らないうちに置かれていた。
十二村も知らないという様子だった。
でも、多分俺が見ていない間に病院で貰ったものだろう。
薬を異常に飲みすぎてのタヒ亡……。
本来だったら生きていた命を俺が殺したも同然だ。
俺がタヒんだから、十二村が狂ってしまった。
まだ幼い子供のような十二村を俺が殺してしまった。
ただただ罪悪感にのまれる。
未だに、あの日どうすればよかったか分からないままだ。
現世では多分夕方あたりの頃、十二村がゆっくりと目を開けた。
しばらく見つめあったあと、十二村は今の状況を理解して、飛び起きた。
「え、ぁ…ぱ、パイセン!?」
焦ったように俺を呼ぶ十二村の様子に少し笑みがこぼれる。
そのせいか十二村はさらに驚いた表情になる。
「え、ちょ夢っすか?!これ」
「夢じゃないから安心しろ」
夢かと疑う十二村に、夢では無いと言う。
何回も疑う十二村を落ち着かせるために手をつねる。
「〜〜っ!!?痛いっすパイセン!!」
「これが夢だったらこの痛みはあるのか?」
「……ないっす…」
痛みを与えてしまったことに罪悪感をまた感じる。
何回も罪悪感と後悔を感じながら十二村と話す。
久しぶりに俺と話して十二村は生き生きとしていた。
それだけ寂しかったのだろう。
なんで俺は十二村を1人にしてしまったのだろうか。
考えても意味が無い。
もう起こってしまったことなのだから。
そんなことを考えていると、十二村が喋っていないことに気づく。
どうしたと聞く前に十二村は口を開く。
「パイセン……もう二度とおれの傍から離れないって約束してくれるっすか?」
十二村の目は不安と恐怖が混じったようなものだった。
どう答えるのが正解なのだろうか…。
脳内でそんな疑問を出しつつ、俺は十二村を撫でる。
「大丈夫…。ずっといるから」
自然と喉から出てきた言葉。
正解かどうか分からない言葉。
脳内で生まれた疑問について考える暇もなく出てきた言葉。
この言葉を聞いた十二村は嬉しそうに、そして年相応の笑顔になる。
守りたかったはずの笑顔を、今度は守るために。
今日も俺は………
こいつの隣にいる。
二人しかいないこの場所で、この世界で。
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