第三章『偽物の犯行』
〈伊集院新太郎、花辺勉班〉
パトカーで佐藤 やよいさんの自宅に向かっている途中。この2人で組むのは初めての様子でギスギスしている。
「なんで俺がお前とコンビなんだよ。」
「仕方が無いでしょう。公安から命令なんですから。」
話をしていると現場に到着する。
花辺は新太郎との班を気に食わなかったようでパトカーからから降りると共に「チッ」と聞こえるくらいの舌打ちをした。2人は車があることを確認しやよいさんの玄関へ向かいインターホンを鳴らし、直ぐやよいさんが顔を出した。
「はい。」
やよいさんらしき女性が姿を現した。
「お昼時に申し訳ございません。こちら岩手県捜査一課の伊集院 新太郎と花辺 勉という者です。佐藤やよいさんですよね。」
「はい。」
「話したいことがあるので、もしよろしければ、家に入ってもよろしいでしょうか」
「はい。」
やよいさんはすんなり家に上げ、新一郎と勉をリビングのソファーに座らせた。
「実を言いますと近日、この町で連続殺人が起きていましてその殺害された人間はある事件の犯人の殺害予定欄に書いてあった人物なんです。それにやよいさんの名前が記載されておりやよいさんはとても危険な状態にあるんです。最近何か不審なことはありませんでしたか。」
「いえ、、、いや、一つだけ、先日、散歩をしている途中、全身黒ずくめの人がずっと私の事を追いかけてきたんです。」
花辺は少し興味を持ち前のめりになりながら質問をした。
「全身黒ずくめの男性ですか?もしよろしければ服装を教えていただくことは出来ますか??」
「はい。上はジャンバーで身を隠していて顔はサングラスとマスク、下はダメージジーンズを履いていました。」
「その人は何処まで追いかけてきましたか?」
「そこは覚えてません。私は黒ずくめの人が追いかけてきているということを知り、恐怖を感じたので死ぬ気で走って逃げました。家に着くとその人の姿は無かったんです。あの時のことは脳裏に焼き付いてしまってあまり頭から離れません。」
「そういうことが。御協力ありがとうございます。何かまたありましたらいつでも御報告ください。こちらが私の名刺になります。それでは私達はこれでお暇させていただきます。今日は本当にありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。あっ、玄関まで送ります。」
「あぁ、最後まですみません。」
新太郎と勉はやよいさんの家を後にした。
〈鈴木良太、吉田美咲班〉
この二人はまだ佐々木成人の自宅に到着しておらずパトカーの中で会話をしていた。
「なぁ、美咲。今回の事件どう思う?」
「どう思うってどういうことですか?」
「どう思うって、ほら、犯人とか推理とか上手く行きそうなのかってことだよ。」
「犯人はまだ目星が着いてないのでそう簡単には捕まえることが出来ないと思います。それに、爛が話していない共犯者だっているかもしれませんよ?それとこれは考えたくはありませんが我々、刑事の中に犯人が潜んでいる可能性だってあります。犯人は私たち刑事と全てをすり抜けます。まるで透明人間みたいに。」
「全てを信用出来るもんじゃないってことか。」
「つまりそういうことですね。」
「よし、着いたぞ。」
二人が会話している間に現地に着いた。二人はパトカーからすぐ降りてからすぐに自宅の玄関まで走っていった。美咲がインターフォンを鳴らすとすぐに佐々木成人さん本人が顔を出した。だがどこか弱々しいように、いや、怯えているように感じられる。
「お昼時に申し訳ございません。岩手県捜査一課の私、吉田美咲と、」
「鈴木良太と申します。」
「最近、巷で起きた事件で少し家の中で話を聞いてもよろしいでしょうか?」
「はっ、はい、、。」
承諾を得て良太と美咲は成人さんの自宅の中に入るとリビングの中には暗闇という言葉がさまよっていた。カーテンの色は黒く熱い素材でできており太陽の日を通す素材ではなかった。
「暗い場所がお好きなんですか?」美咲が先に突っ込んだ。
「い、いいえ、そういう訳ではありません。」
(そうだろうなぁ。これで何も無かったら話にならない。)
「まっ、まぁ、どうぞソファーにでも腰をかけてください。」
「ありがとうございます。」
二人は洗面台方面のソファーに座り成人さんは窓側に座った。先に質問するのは美咲からだった。
「最近何か変なことがありませんでしたか?」
「ありました。」
返事を返さなくても分かる。部屋の全ての窓が黒のカーテンがかかっているのだからストーカー被害か誰かに狙われているとしか考えられない。
「もしよろしければ詳しく教えて頂けますか?」
「はい。昨日の夕方、6時のことで昨日は6連勤明けで疲れきった日のことでした。私は疲れきっており、よろよろと歩きながら帰っている時でした。私が家に着いたと思った途端。後ろから金属バットを持って走ってくる黒ずくめの姿がそこにはあったのです。」そのことを聞くと二人は興味を示し、体を少し成人さんの方に傾ける。
「黒ずくめの人の事を聞かせていただくことは出来るでしょうか。」
「はい。あれは、黒のジャンバーに黒のズボンを履いていて、黒のサングラスをかけていました。身長は170cmくらいの丸顔でしたね。」
「一致してます。」
「あぁ。今回の事件の犯人と姿が一致してる。」
「この後は何か変なことはありましたか?」
「いいえ、特に何も。」
「御協力ありがとうございました。何かございましたら警察にご相談ください。」
「失礼しました。」
美咲と良太は成人さんの自宅を離れ警察署へ戻り証言をあげる。
〈前崎 爛、金山真一郎、伊集院新次郎班〉
この三組は山田ひとみさんの自宅近辺の駐車場に到着しパトカーを降り外へ出て外へ歩く。
「金山さんなんで俺がこっちなんですか?俺は普通兄と一緒のはず。」
新次郎は兄思いが強い子なのでこの時は心配という気持ちが大きいのだ。
「仕方が無いだろう。今回の捜査には爛がついているんだ。私一人で手が追える人間では無い。今回だけは我慢しろ。」
「いつまでガキなんだか。」
「んだと貴様ァ!!」
「お前らいい加減しろ。新次郎、簡単な挑発には乗るな。」
「はい。」進次郎は少し凹んでしまう。だがそれを見て爛はニヤつきが止まらない。
「着いたぞ。」
金山がインターフォンを鳴らす。がいつも通りに行くとは限らない。なんと出る様子がないのだ。もう一回鳴らすが一切出てくる様子はない。
金山は自宅のドアノブに手を伸ばすと鍵がかかっていないことに気づく。金山が異変に気づくと雰囲気がガラリと変わった。
「新次郎、お前は車を見てこい。俺らは家の中に入って調べてみる。」
新次郎は車を探しに走って向かい金山と爛は自宅の中に入っていった。
家の中は薄暗く不気味という言葉に満ちていた。まるでゲームか物語に出てくる『館』のようだった。金山は一定のリズムで名前を呼ぶけれども返事はなく爛はどうでもいいと感じている。
リビングの扉をゆっくりと開けるとそこには顎のない山田さんの死体が壁にのしかかっている。
この班は死体を発見、いや阻止するのに遅すぎた。
「金山さん車はありました!はっ、、、」
新次郎が戻ってくると唖然とした金山とぼーっとしている爛の姿が第一に目の中に入りその先には顎がない山田ひとみの姿があった。その姿を見ると進次郎は唖然とするしかほかはなかった。
爛は、山田の死体の前でヤンキー座りをして近場を見ていると山田のポケットの中を調べると紙の隅が血で汚れた手紙が一つ入っていた。それを見つけると爛はすぐにポケットの中に隠す。
「こいつが死ぬとこんな風になるんだな。」
「貴様」
「こいつを殺そうと思ったのはごみ捨ての時にいつも、いつも会って長い話に付き合わされたからだわ。」
「お前がやったのか?」
「俺はもう何もできるはずがない。いやできるはずがないだろう。お前は教えてくれれば別だが?何人だってやってやるよ!俺が迷惑だと感じる人間全てな!」
「貴様ァァ!!」新次郎の堪忍袋の緒が切れたと同時に進次郎は爛に殴り掛かるが爛は全て避ける。
「お前らよせ。今ここで人殺しが起こっていたぞ。」金山の言葉で新次郎は大人しくなったが威勢だけは消えてない。
「爛、俺はお前を絶対に許さない。」新次郎は爛のことを睨みつけた。
「こちら金山。応援を頼む」金山は無線で応援を要請した。
「はい。今すぐ向かいます。」
爛はポケットに隠した手紙を手に取り内容を見る。全ての文字は新聞の見出しを切り取ったものだった。
「復活した時、俺とお前の終わりは近い。」
裏には、「爛のことが好きなファンへ」
隅には血が滲んでいるが「ラブレター」と書かれていた。感情が欠けている爛でも気持ち悪いと感じる。
第三章『偽物の犯行』終わり
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