テラーノベル
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──なんだ、何が起きた!?執事長の姿を借りた魔人は、1人驚愕していた。真横に傾いた視界に見えるのは、大剣に包帯を巻き直しているあのメイド。そして直立したままの、着ていた樽⋯⋯肉体。その身体は、首から上がなかった。
クラリスが最後に使った──ヴァルディア流抜剣術『静・一閃』である。影のように音一つなく、『影走』による高速移動で真正面から斬ってみせたのだ。これぞ騎士道。
「終わりですね。その身体の元の持ち主に敬意を払って、正々堂々の一撃で済ませたのです⋯⋯悪あがきせずに、さっさと死んでください」
別に魔人が弱かったわけではない。しかしクラリスと比べても、その覚悟はないに等しかった。あくまで剣術は、肉体の持ち主の記憶をたどって再現しただけ。偽物はやはり偽物なのである。
──やはり借り物の肉体を使うゲスなど、取るに足りませんでしたね⋯⋯。
そう吐き捨てたクラリスは、ルカたちの援護をするため、さっさと背を向けて行こうとした。
「ッ⋯⋯!? クソッ、クソッ、クソがぁぁぁぁぁ!! 舐めるなよ、メイド風情がぁ!! 剣を使えずとも、俺様にはまだ魔力が⋯⋯あがっ」
魔人が発狂し、魔力で崩れかけた刃を生成した⋯⋯が、それが放たれることはついぞなかった。コンッと音がし、脳天に矢が突き立つ。
「⋯⋯のぞき見とは、いい趣味をしていますね、メス猫。ずっと見ていたのでしょう?」
そう話しかけたクラリスの目線をたどると、森の木々のなかには短弓を構えたエナの姿があった。
「う、うるさいのよさ! さすがにあんな化け物、弓使いのあたしじゃ相手にならないわけ!」
「拳法を使えばいいでしょう。剣の1本や2本、叩き折ってみせなさい」
「あんなとんでもない剣撃を、素手で受けろって!? 冗談じゃないのよさ!!」
「アナタもまだまだですねぇ」
プフッと笑ってみせると、スタスタと戦闘音の響く方へ歩き出す。
「残党狩りくらいは手伝ってください」
「そのつもりで来てるのよさ! あんたの戦いは見たし、次はやってやるわよ!」
「ま、そのときはすべて任せましょう。精進するように」
「ちょおっ、ちょっとくらい手伝ってくれてもよくない!?」
そう言い合っていると、兵士の何人かが騒ぎ出した。
「マグマが降りてきたぞぉ!!」
その声を聞いて、クラリスとエナは慌てて火山の頂上を見上げる。確かに煌々と輝く赤い液状のものが、ゆっくりと流れてきていた。噴火による揺れや爆発はなかったと思うが⋯⋯。
「っ、総員退避ー!!」
ルカが叫び、兵たちが走り出す。魔人たちもさすがにマグマに飲まれては復活できない。同じ方向に逃げ出していた。
──しまった。完全にミスったなぁ⋯⋯。
俺は上空で下がどうなっているか確認しながら、ポリポリと頭を掻く。
イルヴァの魔力刃を避け、『黒空』による攻撃を回避し続けていた。距離を取れば『魔力刃』と『呪言』が、高速移動を止めれば『黒空』でとんでくる。『黒空』による転移の猶予は、約1.5秒といったところか。魔力刃の方はいろいろと形状が変わるが、魔剣で受けるか、基本避けていれば問題はない、のだが⋯⋯。
それではいつまで経ってもヤツに近づけない。苦戦する俺に対して、アイツの方と来たら⋯⋯。
完全なるお遊び状態。攻撃の手は止めず、俺の集中力、魔力切れ狙い⋯⋯!
⋯⋯さすがにムカつくな。なのでお返しにと、『符号術式』による簡略化で素早く術式を構築し、一発撃ってみたんだが⋯⋯。
土属性上位魔術──『坤天』!
巨大な土塊を作り出し、イルヴァに向かって放つ。硬さは岩盤を超えるほど。当たれば首が確実に折れる重さなんだが⋯⋯。
(うーん、別にすぐ修復できるけど、ロスタイムになるのはイヤだなぁ⋯⋯)
イルヴァはアッサリと『黒空』で転移して避けてしまった。そのまま『坤天』は落下し、俺が開けたマグマの穴へと落ちていく。かさが増したマグマはそのまま溢れ出し、山を下っていく結果となってしまったのだった⋯⋯。
やべーやべー、早くせき止めねば。
水属性上位魔術──『海嘯界』!
俺は周囲一帯を巨大な水域へと変えて消火を試みる。マグマの表面が固まったのはよかったが、今度は水蒸気爆発が所々で起こってしまった。たちまち屋敷周辺は蒸気で覆われる。うはーっ、カオス!
「なぁにやってんすかぁぁぁ!! 下のみんなが死んじまいますってぇ!!」
「大丈夫だ、みんなすぐに逃げてる」
「そーいう問題じゃないでしょ! これ後始末どうするつもりで⋯⋯って、ハッ! アステル様、動いて!」
あー、もう面倒くさい。止まってたら『黒空』で魔力刃がとんでくる。結界無視して内側に入ってくるから、余計面倒なんだよなぁ⋯⋯。
『黒空』⋯⋯『こくう』なぁ⋯⋯。
俺は高速移動しながら、突破口がないかと思案する。えーっと、アイツは直感で『黒空』を使ってて⋯⋯ミユたちを見失ったら探すのは難しい⋯⋯つまり目視⋯⋯ん? 見失ったら見つけられない? てことは、アイツは俺たち人間みたいに、魔力を探知できないのか!?
流水武──『水鏡瞳』!
俺は『巡息術』でイルヴァの気配を探す。そういえば、さっきから攻撃がこないな。ヤツは何をして⋯⋯お、いた。
ふむ、俺がマグマを塞いだ岩盤の上にいるな。そして地上には視界を埋め尽くす真っ白な蒸気⋯⋯これはもしかしてチャンスか!?
俺は『瞬歩』と解除し、キキーッと止まる。背中にしがみつくカグアが、慌てたように叫んだ。
「ちょっ、アステル様! 動いてって⋯⋯」
「しーっ、カグア、悪いがもう一度アレを頼む。魔力はやるから」
これなら接近戦に持ち込めそうだぞ⋯⋯!
コメント
1件
クラリスっ…!「静・一閃」、めっちゃ綺麗に決まったね。魔人への「偽物はやはり偽物」のセリフがスッと入ってきて、彼女の誇りの高さが感じられた。エナとの掛け合いもテンポ良くて和んだし、執事長の肉体…首から上を失ってる描写はゾワッとした。 一方アステルはエライことになってるねぇ(苦笑)「やべーやべー」の口調と、大惨事を起こすカオスっぷりがもう笑えるよ。「水鏡瞳」で突破口見つけたみたいだけど、接近戦に持ち込めるのかな。次の展開が気になる……!🔥
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花月夜れん
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柴田
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#バイオハザード
そまもんた@ペア画募集
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