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#恋愛
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メオテール国の歴史は長い。
海に面した広大な土地を持ち、資源が豊かな国だ。また建国以来、一度も他国に領土を明け渡したことがない。
それは資源が豊富であることと歴代国王が勤勉実直に王政を行っているため、どこよりも国防に力を入れることができているからである。
そんな事情から、メオテール国各地には砦が数多くある。軍人が騎士と呼ばれていた時代に建てられたものから、つい最近建設されたものまで。
ひとたび戦となれば鉄壁の要塞と化すそこは、現在、地元軍人の活動拠点兼遠方から視察に来た軍人達の宿泊施設として使われている。
*
パチッ……パチリッ……と暖炉の薪が爆ぜる音に混ざって、書類をさばく音が簡素な部屋に響いている。
ここはケルス領からほど近いログディーダ砦。季節の変わり目は、天候が荒れるもの。
晩秋から冬に変わろうとしている今、外は暴風雨。王都へ向かう途中のレンブラント達は、この宿で足止めを食らっている。
レンブラントが受けた任務は、ベルを無傷でレイカールトン侯爵の元に送り届けること。けれど幸いなことに、期間はまだまだ十分にある。焦る必要は無い。
王都までの道のりはまだまだ長い。何をするにしても、限られた面々で過ごすことになるからせめて名前と顔ぐらいは覚えて欲しいと思っていたので、レンブラントはこの足止めを僥倖だと思っている。
──ただ、隣から楽しそうに聞こえてくるベルたちの話し声を聞いていると、個人的には面白くない。
(誰がロリコンだっ。あの小娘めっ。俺はまだ二十代だ!)
レンブラントは先日、ベルからロリコン軍人と命名されたことを思い出して苦々しい気持ちになる。
確かにベルとは7つ程離れている。四捨五入すれば、10個だ。そして10代から見たら、年上の年齢を正確に当てることは難しいのもわかっている。
だからといって、胸をざわつかせる相手からそんな命名をされたら、面白くはないを通り越して腹が立つし悲しい気持ちにすらなってしまう。
しかもあの時、レンブラントは求婚をしたのだ。冗談交じりで、軽い口調ではあったが、そこそこ真剣だった。
それなのに返ってきた言葉は、ロリコン。結局、求婚についてはうやむやのまま、闇に葬られてしまったのだ。
「……ったく、なんなんだアイツは」
(レイカールトン侯爵の時には、あっさり結婚を承諾したくせに。何で俺はロリコン軍人呼ばわりして終わりなんだ。……ちっとは悩むなり、はにかむなりしてくれたって良いじゃないか)
心の中でぶつぶつと文句を言いながらレンブラントはサインをし終えた書類を端に寄せた。
若干文字が乱れてしまったが、咎められることは無いだろう。そもそもレンブラントは、咎める方の立場にあるのだ。
レンブラント・エイケンは軍の情報局に所属し、局長だったりもする。隊長と呼ばれるのは、いわゆる渾名のようなもの。
本来なら、王都の軍本部でごっつい机に腰かけてアレコレ指示をする立場にあるのに、僅かな部下を引き連れて、こんな僻地までやって来たのには理由がある。
与えられた任務が極秘だというのもあるが、レンブラント自身がどうしても護衛対象であるベルと直接会ってみたかったのだ。おそらく長い付き合いになる相手であるから。
実は、レンブラントはこの極秘任務以外に、個人的にもう一つベルに関して依頼も受けている。
移動中も通常業務をこなさないといけない多忙な彼は、一度に二つの任務をこなすことは難しい。
個人的な依頼の為に部下を使うわけにもいかず、軍とはまったく関係ない時間の融通が利く協力者を必要としている。
その協力者がベルを連行した初日に顔を出したダミアン・フォンクなのだ。
──コン、コン、コン……ガチャ。
ノックの音がしたかと思えば、入室の許可も無く扉が開く。
書類に目を通していたレンブラントは手を止めて、そこに目を向けた。
「やっほぉー。待った?遅くなってごめんねぇー」
謝っている割には悪びれる様子もなく、ひょこっと顔を出したのは今しがた説明をしたダミアンだった。