テラーノベル
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小さな背中に投げ掛けられた、美花の名を呼ぶ、おにーさんの焦燥感のある声音。
彼女は、ゆっくりと振り返ると、圭が歩み寄ってくる。
どこか真剣な顔立ちに、美花の心が疼き、鼓動が忙しなく弾み始めた。
「この後、時間はあるか?」
「…………家に帰るだけだよ」
「だったら…………お茶しないか?」
圭から誘われた美花は、甘美で落ち着いた声色に、ソワソワしてしまう。
(けど、おにーさん、彼女いそうだし……)
美花は、圭に恋人がいる前提で話を振った。
「いいけど…………おにーさん、彼女とこの後、デートじゃないの?」
「…………俺、恋人と呼べる存在の女はいないが」
「そっ……そうなんだ。おにーさん、イケメンだし彼女がいるって思っちゃったよ」
「で、どうするんだ? 俺とお茶しに行くか? 嫌だったら断ってくれて構わない」
嫌なんて事はないし、むしろ、お誘いを受けて美花は素直に嬉しい。
どことなく彼女に決断を迫る圭を、珍しく感じてしまう。
「…………嫌じゃないよ。うっ…………嬉し……い……」
頬を紅潮させながら、しどろもどろに答える美花に、圭の表情がフッと緩んだように見えたのは、気のせいなのか。
「じゃあ…………ひとまず立川の駅前に出よう。デパートのすぐ近くにあるホテルのラウンジ、雰囲気がいいんだよ」
「了解です。おにーさんに、お供させて頂きますっ」
「なぁ。前も思ったが、お供って何だよ……」
若干呆れたような表情を浮かべるおにーさんだったけど、口元に笑みを含ませた表情がカッコいい、と美花は一瞬見惚れてしまいそうになった。
(また、おにーさんと二人で過ごせると思うと、緊張しちゃうよぉ……)
「よし。そうと決まったら行くぞ」
「………うんっ」
圭と美花は、エントランスに向かい、外に出ようとした時だった。
「圭!」
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