テラーノベル
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多摩センターのイルミネーションは、予想以上の規模だった。
写真映えしそうな光のオブジェを見つけては二人で寄り添い、シャッターを切る。
ツーショット写真以外にも、綺麗だと思った夜景を見つけたら、スマホにおさめる。
「ヤバい! こんなにたくさん写真撮ったら、スマホの充電が切れちゃいそう」
言いながら奏の表情は綻び、彼女を見つめる怜の眼差しが優しく包む。
「奏。センターツリーの前に行ってみるか」
「うん」
指を絡ませながら手を繋ぎ、センターツリーへ向かうと、撮影の順番待ちをしているのか、多くのカップルや家族連れが並んでいる。
二人も列に並び、順番が来るのを待っていると、どうやら撮影してもらう人が次に撮影する人に写真を撮ってもらっているようだ。
怜と奏の前には、家族連れが、後ろには若そうなカップルが並んでいる。
この家族の写真を怜たちが撮影し、二人の後ろのカップルが、怜たちの写真を撮る、という事らしい。
怜たちの前に並んでいる家族がセンターツリーの前に並び、ご主人と思われる男性から怜はスマホを受け取る。
「では撮りますよ。はい、チーズ」
両端にご主人と赤ちゃんを抱っこしている奥さんらしき女性が立ち、間に入るように三歳くらいの女の子が両親に手を繋がれてニコニコと笑っている。
「もう一枚撮りますね。はい、チーズ」
怜が家族連れに声をかけると、今度はご主人も奥さんも笑みを浮かべて、スマホの画面におさまった。
「念のため、確認してもらってもいいですか?」
怜がご主人に声をかけて、撮影した画像を確認してもらっていると、男性は目を細めながら顔を綻ばせた。
「実は初めての家族写真なので、とても嬉しいです。ありがとうございました」
夫妻が怜たちに一礼すると、小さな女の子も両親にならい、辿々しくペコリとお辞儀をする。
「こちらこそ、素敵なご家族の写真を撮る事ができて良かったです。ありがとうございます」
怜と奏も会釈をすると、男性と奥さんは、女の子の手を繋いだまま、センターツリーを後にした。
怜と奏の番になり、後ろのカップルに声をかけた。
「すみません、撮ってもらってもいいですか?」
大学生くらいと思われるカップルに奏がスマホを渡してお願いすると、彼氏らしき人が目を見開きながら答える。
「うわぁ! チョ〜イケメンと美女のカップル!」
彼氏に同調するように、彼女と思われる女性もテンション高めな声音で続く。
「ヤバい〜! 彼氏さんチョ〜カッコいいし、彼女さん綺麗でヤバ過ぎ!」
カップルにこう言われ、怜と奏は苦笑しながらツリーの前に並んだ。
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