「目黒」
「……はい?」
別れ際、岩本くんがふと俺の名前を呼んだ。
「お前さ、本当に何かあったなら、ちゃんと言えよ」
「……」
「お前が悩んでると、俺も気になるからさ」
——ズルいな、ほんとに。
そんな優しさを向けられたら、余計に苦しくなる。
「……大丈夫っすよ」
「そっか」
短く返した岩本くんの顔を、俺は見られなかった。
アイドルとして、この先もずっと一緒にいられる保証なんてない。
いつか離れ離れになってしまうかもしれない。
そんなこと、考えたくもなかった。
「ずっとそばにいられるわけじゃない」
言葉にした途端、現実が突きつけられるようで、胸が痛くなった。
アイドルとしての未来。
それを考えたとき、俺たちはどうなっているんだろう。
隣にいることが当たり前じゃなくなったら、俺はどうすればいいんだろう。
もしこの想いがバレたら、今の関係は壊れるんだろうか。
そうなったら、もう今までみたいに隣にいることはできなくなるんだろうか。
それが、何よりも怖かった。
「それでも……もう少しだけ」
たとえ未来がどうなろうと、今だけは、この気持ちを隠したまま隣にいたい。
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