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森の奥へ奥へと歩いていくと、光の粒も少なくなって、道がだんだん見えなくなった。
木々の影は長くのびて、まるで大きな怪物がじっと見ているみたい。
「…こわくない、こわくない…」
わたしは小さく声に出した。
声を出すと、胸の中の震えがちょっとだけおさまるから。
でも、足もとが見えなくて、
どっちが前でどっちが戻る道なのかわからなくなった。
「ここ…さっき通ったかな?」
同じ木の根っこを何度もまたいでいる気がした。
そのとき、すぐそばで「カサッ」と音がした。
心臓がどきんと跳ねて、わたしは立ち止まった。
葉っぱが動いて、小さな影がぴょんっと跳ねた。
…リスだった。
しかも昨日のいたずらリスたち。
でも、今夜はちがった。
リスたちは何も取ろうとせず、光の粒のまわりをくるくる回って、
まるで「ついてきて」と言っているみたい。
「…道を知ってるの?」
わたしがそう言うと、リスたちは耳をぴくぴくさせて、
暗い森の奥へ走り出した。
わたしは胸に手を当てて、深呼吸をひとつ。
──信じてみよう。
だって、もう戻る道なんてわからないんだから。
小さなリスのしっぽを追いかけて、
わたしはまた暗闇の中を進んだ。