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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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翌朝美月は黒のサマーセーターにベージュの膝丈のスカートを合わせた。海斗の両親に挨拶に行くのでなるべく失礼がないようにと落ち着いた組み合わせにした。


約束の時間が近付くとアパートの前で海斗を待った。海斗の車は時間ぴったりに到着する。

車に乗り込んだ美月は心配そうに聞く。


「コンサートのリハーサルは大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。ほぼ順調に仕上がってきているからまあこの辺で息抜きって感じかな?」


そして海斗は続けた。


「うちの親が美月を早く連れて来いってうるさくってさ。早く美月に会いたいらしい。だから急で申し訳なかったけれど一緒に行ってくれて嬉しいよ」


海斗は嬉しそうに言った。


途中地元で美味しいと評判の洋菓子店へ寄ってもらう。急だったので手土産を用意出来なかったのでその店の菓子折を買う事にした。

そして二人は大磯に向けて出発した。


車は高速へ入り順調に進んで行った。

ドライブをしながら二人は新アルバムの話で盛り上がる。新曲が日本宇宙開発機構の公式テーマソングに選ばれた事の凄さを美月は興奮気味に海斗に伝える。

海斗は今まで自分の曲を聴かなかった人達がこの機会に聴いてくれるようになるかもしれないと嬉しそうに言った。

他の曲も大手自動車メーカーや大手通信会社、そして映画の主題歌の候補にも上がっていると美月に話すと美月は驚いていた。

映画になったら絶対観に行くと言って嬉しそうだった。


やがて車は高速を出ると海斗の実家へ向かった。そしていよいよ到着すると美月は少し緊張してきた。

それに気付いた海斗は、


「大丈夫だよ」


と言って美月を励ました。


二人が車から降りると海斗の母が迎えに出て来た。


「母さん、連れて来たよ」

「まぁまぁ、ようこそいらっしゃいました」


海斗の母は嬉しそうな笑顔で美月を迎える。


「初めまして、佐藤美月と申します」

「お会いするのを楽しみにしていました。さ、中へどうぞ」


海斗の母はとても優しそうな人だった。ホッとした美月は海斗と共に家の中へ入って行った。


家に入りリビングルームへ行くと、海斗の父、兄、兄嫁、そして甥の星也が揃って出迎えてくれた。

皆がニコニコと嬉しそうな表情で美月を見ていた。


「こちらがお付き合いしている佐藤美月さんです」

「初めまして、佐藤美月と申します」


すると海斗の父が優しい笑みを浮かべながら、


「ようこそ沢田家へ。お会いできるのを楽しみにしていました」


と嬉しそうに言った。そして隣にいる海斗の兄、兄嫁、甥の星也を紹介してくれる。


美月は歓迎されている事を知りホッとする。

元夫の健太の実家へ行くといつも冷たい対応をされていたので美月はトラウマになっていた。

だから今日も歓迎されなかったらとかなり不安だったがそんな心配は無用だったようだ。

海斗の家族は健太の家族とは正反対で皆あたたかい人達ばかりだった。


緊張が少しとけたので改めて海斗の家族の顔を見て行くとそこに見覚えのある顔があり美月は驚く。


「もしかして……ヒゲ兄さんですか?」


美月は海斗の兄・航に聞いた。


「えっ?」


航は驚いている。


「あの、SNSの天体写真グループのヒゲ兄さんですよね?」


そこで航は「あっ!」と叫んだ。


「もしかしたら、美月さんってあの美月ちゃん?」

「そうです。いつもご指導いただいている美月です」

「なんだ、二人は知り合いだったのか?」


海斗が驚いた様子で口を挟んだ。


「びっくりしたなぁ、美月ちゃんなら二年前からSNS友達だよ。海斗より前からの知り合いだ」

「へぇ、すごい! そんな偶然もあるのねー」


航の妻の洋子が驚いて声を上げる。


「なんだ、二人は顔見知りだったのか。そりゃあ凄い偶然だなあ」


海斗の父も驚いていた。


「まあまあ挨拶はそれくらいにして、お腹空いたでしょう? 少し早いけれど始めちゃいましょうか」


海斗の母は嬉しそうに料理を運んで来た。美月が慌てて手伝おうとすると、


「今日は美月ちゃんはお客様だからどうぞ座ってて」


美月は恐縮しつつそのまま残って海斗の父や兄との会話を続けた。


「じゃあ、美月ちゃんがこの間アップした初の天の川の写真は海斗のライブに行った時のものだったんだ!」

「そうです。ライブの後海斗さんが八ヶ岳に連れて行ってくれて」

「八ヶ岳って言ったら、佐伯さんのホテル?」


航が海斗に聞くと海斗が答える。


「そうだよ。久しぶりに行って来た」


そして海斗は美月に説明した。


「あのホテルは兄貴達にも紹介して、確か家族で二回位行ってたよね?」

「ああ、二回泊まりに行った」


美月は航があのホテルを知っている理由を聞いて納得する。


「じゃあ今度観望会をやる時はあのホテルでやるかな。そうしたら美月ちゃんも海斗に連れて来てもらえば参加できるしね」


航はそう言った後続ける。


「グループのメンバーはみんな美月ちゃんに会いたがってるんだよ」

「俺の都合がつけば美月を連れて行くよ」


海斗の言葉を聞いた航は「よし、じゃあその方向で行くぞ!」とかなり乗り気な様子だ。


それからの沢田家での宴会は美月にとってとても楽しい時間となった。海斗は運転があるのでノンアルコールビールだったが美月は皆に勧められてビールやワインを飲みリラックスした雰囲気の中で会話を楽しむ。


すると突然海斗の甥の星也が言った。


「海斗おじちゃんのそのネックレスは美月さんが作ったんだね」

「そうだよ、素敵だろう?」


そこで兄嫁の洋子も言った。


「美月ちゃんの指輪も素敵! 月のモチーフなのねぇ」

「はい。海斗さんが月の指輪があるお店を探してくれたので」

「おお! あの週刊誌の店か!」


海斗の父が興奮して言った。そこで皆からどっと笑いが起きる。

すると今度は海斗の母がしみじみと言った。


「また嘘のスクープかと思ったけれど本当だって聞いて嬉しかったわ」


海斗の母は美月の事がとても気に入っていた。控えめでありながら芯が強そうな美月を見て自分の息子にぴったりだと思ったようだ。そしてそんな美月を育てた美月の両親も素晴らしい人達に違いないと思っていた。

沢田家の宴は夜まで続き美月はすっかり家族の一員として溶け込んでいた。


そして午後8時前になると二人は帰り支度を始めた。明日からまた海斗は朝が早い。

海斗の家族はまた是非遊びに来て下さいと美月に声をかけた。美月もまた遊びに来ますと笑顔で言って二人は玄関へ向かう。

帰り際、海斗の兄・航が星景写真の画像加工の本を美月にくれた。もう使っていないので返さなくていいからと美月に言う。


「ありがとうございます。これを見ながらまた画像処理をしてみますね」


美月は笑顔で航に言った。航の妻の洋子とは好きな映画の話で盛り上がったので今度一緒に映画に行きましょうと約束をした。

甥の星也は海斗おじちゃんが結婚となると大スクープだねと言ってはしゃいでいた。


そして二人は皆に見送られながら実家を後にした。


「あ、今日満月だったのね。すっかり忘れていた」

「出逢って4回目の満月だね」

「うん」

「今日はおぼろ月だな、少し薄雲がある。それに周りに綺麗な輪っかが出来ているけどあれは何だろう?」

「あれはね『月暈』って言うの。別名ハローとも言うの。月からの光が氷晶の中を通り抜ける際に屈折して起きる大気光学現象なんですって」

「へー、虹色に光っていて綺麗だな」


そこで海斗は美月の手を握ってから言った。


「今日は来てくれてありがとう。おふくろ達すごく喜んでいたよ。美月のお陰で親孝行が出来た」

「ううん、私の方こそあたたかく迎えていただき本当に嬉しかった」

「美月は帰る頃にはすっかり家族の一員だったね」


海斗は嬉しそうに笑った。


その日海斗は美月のアパートに泊まった。

そして翌朝美月は遅刻しないように海斗を起こすと、二人で朝食を取ってから海斗を送り出した。


今海斗は大事な時期を迎えていたので自分に出来る事があれば何でもしてあげたい……美月は心からそう思っていた。


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