テラーノベル
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「救いようの無ェマヌケどもめ! 失せろ!」
デーダンは、そう叫びながら、近場に居た亡霊をぶん殴った。
殴られた亡霊は、向かいの壁に叩きつけられ、数秒としないうちに消え去った。
「このゾーン1は俺のゾーンだ! テメエらが居ていい道理は無ェんだよ!」
そう言いながら、今度は両腕で二体の亡霊に拳を打ち付けた。
その拳は、亡霊たちの頭部を完全に貫いている。
いつも通り、亡霊は宙に消えた。
「俺の前から失せやがれ! クソッタレたユーレイども!」
デーダンは絶叫しながら振り返り、背後にいた二体の亡霊をまとめて薙ぎ払う。
亡霊は弾き飛ばされ、その残骸がバッターの方へ飛んできた。
バッターがそれを回避すると、着地音のせいか、デーダンがこちらに気づいた。
「…フーッ…フーッ……」
デーダンは、荒れた息を整えながら、ゆっくりとバッターの方に振り返った。
そして、バッターの姿を確認したらしいデーダンが、自分のデスクを猛烈な勢いで叩きながら、バッターに向かって叫んだ。
「テメエ!!」
その剣幕に、バッターはバットの柄に触れた。
しかし、今のデーダンにとって、そんなことはどうでもいいらしい。
デーダンはデスクを踏み越えるようにして、すさまじい勢いでこちらへやってくると、バッターの胸倉を掴んで持ち上げた。
デーダンとバッターでは、身長差が大きい。バッターの体は宙に浮いた。
「テメエだ。テメエがこの厄介事どもの元凶なんだ! そうだろ!!」
デーダンはバッターを掴んだまま移動し、壁にその体を叩きつけた。
「このユーレイの親玉野郎が! 俺の愛するゾーンに、ずっと目ェ付けてやがったんだろ!」
バッターは、デーダンを引きはがそうともがくが、デーダンの膂力には適わない。
バッターに極限まで顔を近づけながら、デーダンは静かに、けれども、憎しみを込めた声で言った。
「何が望みだってんだ? なんだって俺をイラつかせるんだ?」
デーダンはそこで一呼吸置き、怒鳴った。
「俺ァここに生涯の全てを捧げてる! テメエにも、テメエのクソッタレたユーレイどもにも! 俺のゾーンを台無しにする道理なんざ無ェんだよ! 失せやがれ!!」
そのデーダンの叫びを切り裂くように、バッターはただただ純粋に言った。
「お前は誤解している。俺は、亡霊じゃない。浄化する者だ。実体の無い物どもを粛清し、世界を浄化するために来た」
「…ンだよ」
バッターの一歩も退かない物言いに、デーダンは興が削がれたような顔で、小さく呟いた。
「…テメエ、よくもまあ俺の前で、ンなクソみてェな思いつきを言えたもんだ…。よく聞きやがれ。事を簡単にしてやるよ」
デーダンはそう言いながら、放る様にしてバッターを地面に叩きつけた。
「テメエは、その忌々しい亡霊どもと一緒に、このゾーンから出ていく。そうしねェってんなら、俺はテメエをブッ殺す。これでスッキリ解決といこうじゃねえか」
地面に下ろしたバッターを見下ろしながら、ふん、と鼻で笑った。
「もしもう一度、俺の目の前に現れやがったら……命は無ェと思え」
そう言うとデーダンは、空中に溶けるように消えていった。
見た感じ、バッターが虚無へと行くときに見るワープの様なものらしい。
バッターはエレベーターまで引き返した。
エレベーターは地上階で止まり、バッターはそこで下りた。
それからバッターは、地上階の玄関口から外に出た。
実は、かなり前にこの出入口自体見つけていたのだが、その先にあったのが駅一つだったため、早々に引き返していたのだ。
駅の名前は、シャチハタ。そして、その横には一人のエルセンが一人だけ立っていた。
「デーダンさん、どうしたんだろう? まだ定時でもないのにアルマに帰るなんて…」
そんなエルセンの呟きを流しながら、バッターは電車に乗り込んだ。
確かに、電車の行き先にアルマが追加されている。
バッターはアルマへのボタンを押した。すると、電車はいつも通り動き出した。
電車はその後、特に何のアクシデントもなく、アルマまでたどり着いた。
バッターは電車から降りると、その空間にたった一つだけあった入り口から部屋の中に入った。
そこには、3つのポスターと、テーブルが1つ。そしてエルセンがいた。
エルセンに話しかけると、彼はぼーっとしながらバッターに言った。
「あー…その…こ、この先にはデーダンさんの本宅があるので…だ、誰も通しちゃいけないって言われてるんです…。ええと…いくつか質問に答えられたら別ですけど…」
なんと。またパスワードだというのだ。
再三言うが、ここに至るまでにパスワードらしきものは見当たっていない。
しかし、質問の内容が分からなければ探す当てもない。
バッターは一度、エルセンの質問を聞いてみることにした。
「1、二人目は、エルサレム(Jerusalem)からやって来ました。では、三人目はどこから?」
「2、聖なる三位一体(La sainte trinite)を飾っているのは?」
「3、ノートルダム(Not re-Dame)が最初に出てくるのは?」
「4、6月(Juin)に書いてある3はいくつ?」
「5、シリル(Cyrille)、ケヴィン(Kevin)、そして…」
彼の質問は、この五つ。
バッターはエルセンから視線を外し、ポスターを見てみた。
ポスターは全部で三枚。バッターは、その一枚一枚に目を凝らした。
一枚目のポスターの下部には、こんな表記があった。
S. CYRILLE de Jerusalem
一行飛ばして、
S. Alexandre de Jerusalem
そして、一番下には、
S. Salvator d’Orta
とある。
恐らく、これは一つ目の問いの答えだろう。
二人目がJerusalemから来たというのなら、三人目はOrtaから来た。
バッターは、そう判断した。
次にバッターは、二つ目の問いの答えを探すことにした。
しかし、どのポスターを見ても、それらしい答えは見つからない。
バッターが諦めかけたところで、ふと二枚目のポスターに目が留まった。
上部に書かれたroseという単語。
その単語だけに、執拗なまでの強調線が引かれている。
――これが重要なのか?
バッターは目を凝らした。
すると、強調線の下に何か別の文字が書かれていることに気付いた。
ところどころ隠れていて読みにくいが、周囲のポスターにある同じ箇所と見比べる限り、どうやらMois desと書かれているらしい。
「……Mois des?」
バッターは、しばらくその文字を見つめた。
そして、ふと気付く。
三位一体。
この状況における三とは、恐らく三枚のポスターそのものを指しているのではないか。
ならば――
Mois desの後に並んでいる数字。
その中で、ひときわ強調されているものを探せばいい。
バッターは、二枚目のポスターをもう一度見直した。
rose。それが、二つ目の問の答えだろう。
それから、バッターは3つ目の問を探す。
3枚目のポスターを見ていると、バッターはすぐにノートルダムの単語に気づいた。
しかしその傍に、答えに該当する単語は見当たらない。
バッターはふと、ノートルダムの単語の上を見てみた。そこにあったのは、sixlem。その意味は、6番目。
バッターは、もう一度sixlemを見た。
「……六番目」
それから、質問をもう一度思い返す。
―ノートルダムが最初に出てくるのは?
ならば、これでいい。
「決まりだな」
そして4つ目。これは、驚くほど簡単だった。
Juinのポスターに書かれている、3の合計を数えればいいだけなのだから。
「22だな」
そして最後。シリル、ケヴィン。そしてあと一つ。
恐らく、合計で3人の名前があるはずだ。
そして、3と言えば思い当たる節があった。
二つ目の問いもそうだった。
三位一体という言葉から、バッターは三枚のポスターそのものを答えとして利用した。
ならば、最後の問いも同じなのではないか。
「シリル、ケヴィン、そして……」
バッターは三枚のポスターを順番に見た。
一枚目には、シリル。
二枚目には、ケヴィン。
ならば――三枚目には?
バッターは、三枚目のポスターへ目を向けた。
そこに書かれていた名前を見つけ、バッターは小さく呟いた。
「……ヨナか」
これで三人が揃った。
シリル。
ケヴィン。
ヨナ。
バッターは改めてエルセンに話しかけた。
それぞれの質問に対応する答えを言っていく。
一つ目にオルタ。
二つ目にローズ。
三つ目は6番目。
四つ目が22。
最後に、ヨナ。
全て言い終えると、エルセンは口を開いた。
「…全問正解です……」
エルセンはうつむいた。だがそれから、何かを思い出したようにバッターに向き直った。
「でも…あー…あと一つだけ質問に答えてください」
…6つ目の質問があったらしい。
バッターはエルセンを不審そうに見つめながら、質問を聞いた。
「6、三月(Mars)の張り紙を上下逆さにすると読み取れる二桁の数字は?」
バッターはもう一度ポスターを見た。
三月の張り紙の中央には、18と書かれており、その1の中に、小さくさかさまの7が書かれている。
バッターはポスターをはがし、逆さにして見た。
数字は恐らく、87。
バッターはエルセンにその数字を言った。
「せ…正解です」
エルセンの首がごぽりと動いた。
」・・・正解です・・・・・・「
エルセンの顔面が宙を舞う。
バッターは持っていたポスターをバーントに向かって投げつつ、自分もバットを振りかぶった。
バットを振り抜くと同時に、アドオンがバーントへ突撃する。
その体を吹き飛ばされ、バーントは壁際へ追い詰められた。
バッターはそこへ踏み込み、バットを振り下ろす。
バーントの動きは、それで止まった。
」ぼ…僕、の爪……汚れてる…「
エルセンの顔面はそう話し、そして消えた。
バッターは、エルセンの背後の入り口から、先へ進んだ。
コメント
1件
デーダンの狂気じみた迫力がすごくて、最初から圧倒された…! ポスターの謎解きは細部まで作り込まれてて、一緒に解いてる気分だった。最後のエルセンの豹変は完全に予想外で、顔が宙を舞った時は声出たわ。バットの一撃も爽快。次がマジで気になる🔥
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眠狂四郎
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