テラーノベル
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二人は屋上へ上り切ると、再び駅周辺のライトアップを眺めていた。
周りには誰もいない。怜と奏の二人だけだ。
屋上の奥には大きめの池があり、その周辺もイルミネーションで輝き、光のオブジェも点在している。
「奥の方に行ってみようか」
怜が奏の手を引いて促し、池の近くにあったベンチに腰掛けた。
***
池の水面は波一つ立たず、光に纏われた景色が鏡のように映し出されている。
どこか幻想的な光景を見ながら、奏が口を開いた。
「怜さん。今日はサプライズで外に連れ出してくれて、本当にありがとう」
穏やかな笑みを怜に向けながら、指名買いで購入した怜へのクリスマスプレゼントを手渡した。
「ありがとう。俺、恋人からクリスマスプレゼントを貰ったの、奏が初めてだよ」
「え? そうなの!?」
思いの外大きな声が出ていたようで、奏は慌てて口元を右手で隠し、大きな黒い瞳が更に丸くなる。
「奏は、クリスマスプレゼントは、二人の写真がいいって言ってたが……」
怜はバッグの中から小さな箱を取り出し、奏の前に差し出した。
「……え? これって……」
「俺からも、クリスマスに奏へ何かを贈りたいって思ってたんだ」
数センチ四方で綺麗にギフト包装された小さな箱を、おずおずと受け取る奏。
「開けてもいい?」
「ああ、もちろん」
奏が丁寧に包装紙を剥がし、ブランドロゴ入りの小箱を開けると、ブラックのジュエリーボックスが入っている。
取り出して開いてみると、そこにはタンザナイト、ブルートパーズ、ダイヤモンドが縦に並んでいる綺麗なホワイトゴールドのネックレスが姿を現した。
「こんなに……綺麗な……ネックレス…………」
奏は言葉を詰まらせ、眩い輝きを放つネックレスを見つめながら、瞳が濡れていくのを感じた。
「もう……怜さん…………」
気付くと奏は涙を零し、色白の頬に雫の伝う跡がいくつも残っている。
「……あり……が……とう……」
「俺が付けてもいいか?」
「もちろん……」
怜はジュエリーボックスからネックレスを取り出し、丁寧に金具を外すと、白磁の首に腕を回して装着させる。
「うん。奏に似合ってる。このネックレスにして正解だったな……」
「本当に……ほん……とう……に…………ありが……と……う……」
柔らかな笑みを湛えながら、怜は奏の頭をそっと撫でた。
「それともう一つ。奏に伝えたい事がある」
「伝えたい……事……?」
何を言われるのだろうか、と警戒した奏は、一瞬表情を曇らせた。
しかし、怜は表情を引き締めて大きくため息を吐くと、奏の瞳を射抜いた。
華奢な両肩に手を添えて、彼は彼女を向かい合わせる。
緊張しているのか、怜が一旦顔を伏せ、眉間に皺を寄せながら大きくため息を吐くと、奏は小首を傾げつつ彼の言葉をじっと待っている。
俯き加減で逡巡した後、ようやく決心がついたのか、怜は奏の澄んだ瞳に眼差しを向けた。
コメント
1件
お互いにドキドキしてる?結婚してくださいって言うのかしらわ😊