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「今、奈美は彼と別れた状態なんだろうけど、もし、本当に縁があるなら、きっとまたどこかで彼に逢えるよ」
母はグイっと缶ビールを流し込み、テーブルの上に勢い良くロング缶を置いた。
「いつ逢えるか。それは明日かもしれないし、一ヶ月後かもしれない。もっと時間が掛かって一年後かもしれないし、十年後かもしれない。下手したら、あんたが死ぬ間際かもしれない」
大分酔った母が、真面目な顔をしながら力説している様子に、奈美は吹き出しそうになってしまう。
「奈美にとって彼が運命の人だったら……どこかで逢えるよ」
「うん…………そう……だね……」
彼女は曖昧に笑い、目尻を下げた。
「ああぁ〜……久々に奈美の恋バナ聞いて、ヨッパになっちゃったよぉ〜」
母が、両腕を上げながら大あくびをした後、寝室に引っ込んでいく。
奈美も、睡魔が襲ってきたので、自室に戻っていった。
自室のベッドに寝転びながら、母の言葉を思い返す。
——本当に縁がある人って、切っても切っても切れないのよ。
(豪さんと私は……どうなんだろう……?)
あんな出会い方をした豪と奈美には、切っても切れない縁なんてあるのだろうか?
可能性は、ほぼゼロのような気がした。
何せ彼はモテるだろうし、女性も選び放題じゃないか、と思う。
またも彼女の脳裏を掠めていく、母の言葉。
——もし、本当に縁があるなら、きっとまたどこかで、彼に逢えるよ。
逢えたらいいな、とは思う。
けれど、豪のIDは自分から削除したし、出会ったきっかけになったエロ系SNSも退会した。
連絡を取る手段がない。
(考えても仕方がない……。もう終わったのだから……)
奈美は、天井を見つめながらため息をつくと、そのまま眠りに堕ちていった。